マイホームや相続した家を貸そうとすると、様々な悩みが出てきます。
例えば、住宅ローンが残っている家は貸せるのか、貸すとどのような税金が発生するのかといった悩みがあります。
家を貸すのであれば、典型的な悩みと解決方法を知っておくことが望ましいです。
また、家を貸すときは基礎知識として賃貸借契約や管理方式の種類も知る必要があります.
家を貸すときの悩みには、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事は、「家を貸すときの悩み」をテーマについて解説します。
最初に、家を貸すときによくある悩みについて解説します。
住宅ローンが残っている家は、原則として貸すことはできません。
理由としては、銀行との間で締結している金銭消費貸借契約(住宅ローンの契約のこと)の資金使途違反になるからです。
資金使途とは、お金の使い道のことを指します。
住宅ローンの資金使途は、マイホームの購入です。
住宅ローンが返済中の物件を他人に貸してしまうと、賃貸物件の購入と同じ状態になります。
賃貸物件を購入する際は、不動産投資ローン(もしくはアパートローン)と呼ばれる別のローンを組む必要があり、住宅ローンでは賃貸物件は買えません。
ただし、住宅ローンを返済中の物件でも、例外的に転勤等の必要やむを得ない事情がある場合には貸すことができる場合があります。
また、銀行にもよりますが、住宅ローンから不動産投資ローンに借り換えれば賃貸を認めてくれる場合もあります。
住宅ローンが残っている家を貸すときは、融資先の金融機関に確認しましょう。
まず、家を貸すと、以下のような費用が発生します。
また、家を貸すと以下の税金が発生します。
固定資産税および都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して課されます。
家を貸しても所有者は変わりませんので、固定資産税と都市計画税は引き続き貸主が納税する必要がある税金です。
所得税および住民税・復興特別所得税(以下、所得税等)は、家を貸して不動産所得が生じた場合に生じます。
不動産所得とは、賃貸経営で得られる利益のことです。
不動産所得 = 収入金額 - 必要経費
収入金額とは、家賃収入のことです。
必要経費とは、以下のような費目が該当します。
【必要経費】
所得税等は、原則として給与所得等の他の所得と合算した所得に対して税率が決定されます。
所得税の税率は、所得が上がるほど税率が上がる累進課税方式が採用されています。
所得税の税率は、以下の通りです。
【所得税の累進課税率】
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円以上330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円以上695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円以上900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円以上1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
参考:所得税の税率[国税庁]
住民税の税率は、所得に対して10%程度が一般的です。
復興特別所得税は、所得税に2.1%を乗じて計算されます。
賃貸中に借主の故意(わざと)または過失(うっかり)によって壊したものや発生させたキズは、借主の費用負担で直してもらうことができます。
また、借主が善良な管理者としての注意を怠ったことで生じた損傷も、借主負担で修繕を要求できる内容です。
例えば、クーラーからの水漏れを放置したことで広がったカビ等が対象となります。
さらに、禁止事項の違反によって生じた汚れや傷等も借主が修繕すべき内容です。
例えば、禁煙物件であるにも関わらず喫煙したことで付着したクロスのヤニや、ペット不可であるにも関わらずペットを飼ったことで生じた壁のキズ等が対象となります。
一方で、経年劣化や通常損耗の修繕は、原則として借主に請求することはできません。
経年劣化とは、時間が経ったことにより建物や設備等に自然に発生した劣化や損耗のことで、クロスや畳、フローリングの変色等が該当します。
通常損耗とは、借主の通常の使用による損耗等のことで、画鋲の跡や家具の設置によるカーペットのへこみ等のことです。
なお、賃貸で家の破壊を予防するには、管理会社に適切な入居審査を実施してもらい、悪質な借主に貸さないことが対策となります。
古い家でも貸すことはできます。
一般的には古い物件はリフォームした方が貸しやすくはなりますが、物件によってはリフォームせずにそのまま貸せる場合もあります。
リフォームや修繕をすべきかどうかは、一度、管理会社に見てもらい、意見を聞いた上で判断することが適切です。
自分で判断してリフォーム等を行うとリフォーム費用が無駄になってしまう可能性がありますので、まずは現状のままで賃料査定を依頼することをおすすめします。
入居者を決めやすくする方法としては、「3月の引っ越しシーズンに募集する」、「照明やエアコン等は備え付けの状態で募集する」等が挙げられます。
また、2人目以降の借主を見つける場合には、賃貸中の借主から退去の申出があった時点から入居者を募集することが望ましいです。
多くの賃貸借契約書では、借主からの解約予告は1ヶ月前となっており、解約予告が出た段階から募集を開始すれば、空室期間を短くすることができます。
入居者が決まるまでの期間は、適切な家賃設定であれば早くて1ヶ月、長くても6ヶ月程度です。
家を貸すメリットとデメリットについて解説します。
家を貸すメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
1つ目は、家賃収入が入ってくるという点です。
家は保有しているだけでも固定資産税等の費用が発生します。
家賃収入があれば費用の負担を軽減できますし、家賃が支出を上回ればプラスの収入を得ることができます。
2つ目は、家の管理が自然に行われるという点です。
家は、定期的な換気や通水をしないとカビや悪臭が発生し、痛んでいきます。
借主が生活していれば日常的に換気や通水が行われ、自然と建物価値を維持することができます。
3つ目は、再び住むことができるという点です。
転勤等で一時的に離れる場合には、売ってしまうと戻ってきたときに再び家探しを行う必要があります。
貸していれば戻ってきたときに再度住めますし、新たに購入するよりも経済的な負担は軽いです。
家を貸すデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
1つ目は、入居者が決まらないことがあるという点です。
空室期間が長引くと、その間に発生する固定資産税等の費用の負担感が重くなります。
また、換気や通水が長期間行われないことで家が傷む可能性もあります。
2つ目は、修繕費用が発生するという点です。
貸主には修繕義務があり、設備や建具等が寿命で自然に壊れた場合には貸主の費用負担で修繕する必要があります。
3つ目は、借主に家をずさんに扱われることがあるという点です。
悪質な借主に貸してしまうと、汚部屋にされる等のずさんな扱いをされてしまうことがあります。
綺麗な築浅物件の場合には、他人に貸すことに抵抗を覚える人も多いです。
家を貸すときの賃貸借契約の種類としては、普通借家契約、定期借家契約、一時使用賃貸借契約の3種類が存在します。
普通借家契約とは、更新ができる契約のことです。
定期借家契約とは、更新の概念がなく、契約期間が終了すると確実に賃貸借が終了する契約になります。
一時使用賃貸借契約とは、借地借家法が適用されない契約のことです。
それぞれの特徴は下表のようになります。
管理の種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
普通借家契約 | 相場賃料で最も高く貸せる | 借主を簡単に退去させることができない |
定期借家契約 | 契約を解約しやすく管理会社を切り替えやすい | 家賃が低く借主が見つかりにくい |
一時使用賃貸借契約 | 原則として更新はない | 借主が一時使用目的の人であることが必要であり、借主をみつけにくい |
3種類の契約の中で、普通借家契約は貸した家を簡単に返してもらえない可能性があります。
普通借家契約は、借主の借りる権利が強く守られており、貸主から契約を解除するのに正当事由(立ち退かせるのに正当な理由のこと)と立ち退き料が必要です。
普通借家契約は、実質的に借主が更新したいと申し出れば更新できてしまう契約となっています。
なお、定期借家契約は契約が満了すれば家を確実に返してもらえますが、契約期間中は返してもらえない点が特徴です。
家を貸すときの管理の種類としては、自主管理と管理委託、サブリースの3種類があります。
自主管理とは管理会社に物件の管理を頼まず、自分で全て管理を行うことです。
管理委託とは、管理会社に物件の管理を委託する管理方式を指します。
サブリースとは、転貸による管理方式のことです。
それぞれの特徴は下表のようになります。
管理の種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自主管理 | 管理費用を節約できる | 管理の手間がかかる(遠方に物件がある場合は非現実的) |
管理委託 | 契約を解約しやすく管理会社を切り替えやすい | 借主とは別途賃貸借契約が必要となる |
サブリース | 契約が管理会社との賃貸借契約の1本で済む | 家賃保証型は管理委託よりも収益性が低くなる |
家を貸すときの一般的な流れについて解説します。
家を貸すには、まず管理会社(不動産会社)に対して賃料査定を依頼します。
賃料査定とは、いくらで貸すことができるかを見積もることです。
リフォームすべきかどうか悩んでいる方や相場を知りたい方は、賃料査定で管理会社の意見を聞いてみることをおすすめします。
賃料査定の結果、管理を依頼したい管理会社が決まったら管理会社を決定します。
管理会社を選ぶポイントは、管理の実績が豊富で、かつ、賃貸仲介に強い会社を重視することです。
管理実績が豊富で賃貸仲介に強い会社は、入居者をすぐに決めてくれるため、空室が発生しにくくなります。
管理の実績が豊富な会社は、賃貸物件の管理を主力事業としている会社であることが多いです。
賃貸物件の管理を主力事業としている不動産会社は、同時に賃貸仲介にも強いことが一般的となっています。
ホームページを見ると会社の主力事業がわかりますので、管理会社を選ぶ際に参考にして頂ければと思います。
入居者の募集は、管理会社が行ってくれます。
基本的にはインターネットで広告を掲載し、問い合わせがあったら管理会社が案内をしていきます。
部屋を借りたいという人が現れたら、管理会社が入居審査を行い、入居者を決定します。
入居審査では、家賃の支払い能力はあるか、素行は悪くないか等の要素が判断されます。
悪質な借主を避けるためには、入居審査が適切に行われることが重要です。
入居審査は人物判断も行うことから、管理会社の経験値が必要であり、実績豊富な管理会社の方が適切に実施できる傾向があります。
適切な入居審査を経て借主が決まったら、賃貸借契約を締結します。
管理方式が管理委託の場合は、貸主が借主と直接賃貸借契約を締結することが必要です。
一方で、管理方式がサブリースの場合には、管理会社が借主と賃貸借契約(貸主から見ると転貸借契約)を締結します。
以上、家を貸すときの悩みをテーマについて解説してきました。
家を貸すときに生じる悩みとしては、住宅ローンが残っているときの貸し出しや、税金および費用等がありました。
家を貸すときの賃貸借契約の種類としては、普通借家契約や定期借家契約、一時使用賃貸借契約があります。
家を貸すときの流れとしては、まずは賃料査定を依頼することがスタートラインです。
家を貸す際の参考にして頂ければと思います。
カテゴリ:家を貸す 関連記事
人気記事TOP5