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更新日2024年7月19日

住宅ローン返済中の家を賃貸に出すには?方法と注意点を解説

住宅ローン返済中の家を賃貸に出すには?方法と注意点を解説

家を貸し出すケースとして、住宅ローンを返済中の家を賃貸に出したいと考えている人もいらっしゃると思います。
マイホームは自分の所有物ですので、本来であれば貸すことは自由です。

しかしながら、住宅ローンは銀行との契約や住宅ローン控除も関連するため、賃貸に出すには一定の知識を得ておく必要があります。
住宅ローン返済中の家は原則として賃貸に出せませんが、状況によっては賃貸に出せます。どのような状況であれば賃貸に出せるのか、また、賃貸に出す方法や注意点には、どのようなものがあるのでしょうか。

この記事では「住宅ローン返済中の家を賃貸に出す」ことについて解説します。

住宅ローン返済中は原則として賃貸に出せない

住宅ローン返済中は原則として賃貸に出せない

住宅ローン返済中の家は、銀行との金銭消費貸借契約(住宅ローンの契約のこと)があるため、原則として賃貸に出すことはできません
貸すことは法律違反ではありませんが、銀行との間で契約違反になるということです。

金銭消費貸借契約では、資金使途(借入金使途)が定められています。
資金使途とは、貸したお金の使い道のことです。

住宅ローンの契約では、資金使途は「本人居住用住宅購入資金」等と定められています。
本人居住用とはマイホームのことであり、他人に貸すためではないということです。

仮に住宅ローン返済中の物件を賃貸に出せば、投資用物件の購入と同じ状態になります。
投資用物件を購入する際は不動産投資ローンと呼ばれる別のローンを組む必要があり、住宅ローンで投資用物件を購入することは契約違反となるのです。

住宅ローンは不動産投資ローンよりも金利が低いため、実際に住宅ローンを使って投資物件を購入するという詐欺事例が存在します。
住宅ローンの不正利用と呼ばれるものであり、一時期マッチングアプリで独身女性を騙して住宅ローンを使って投資物件を買わせるという悪質な手口が話題になりました。

住宅ローンは金利が低いことから悪用されてしまう危険性があり、銀行とっては借主の資金使途の遵守は重要な項目となっています。

例外として賃貸に出せるケース

例外として賃貸に出せるケース

この章では、例外として住宅ローンの支払い中でも賃貸に出せるケースについて解説します。

転勤等のやむを得ない事情がある場合

転勤等のやむを得ない事情がある場合には、銀行も一時的な賃貸を認めてくれることが一般的です。

フラット35の場合も、転勤等のやむを得ない事情がある場合の賃貸は認めています。

Q. 返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。

A. フラット35は、お申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる住宅の取得資金としてご利用いただいております。転勤等のやむを得ないご事情で、一時的に居住できない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することは可能です。

出典:住宅金融支援機構「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」回答一部抜粋

金融機関によって規約が異なります。そのため転勤の際に賃貸に出す場合は契約書の確認、確認をするようにしてください。

不動産投資ローンに借り換える場合

理論上は、不動産投資ローンに借り換えを行えば賃貸に出すことはできます。
不動産投資ローンへの借り換えを認めてくれるか否かは、銀行のスタンスによります。

ただし、不動産投資ローンは住宅ローンよりも金利が高いローンです。
融資期間も住宅ローンよりも短くなることもあり、元本部分に関しても毎月の返済額が上がることもよくあります。

そのため、住宅ローンの返済額であれば家賃を下回っていたとしても、不動産投資ローンの返済額になると家賃を上回ってしまうこともあるのです。
仮に不動産投資ローンへの借り換えが認められたとしても、借り換えの収支が見合うかどうかは慎重にシミュレーションすることが必要となります。その際は、どれくらいの家賃で賃貸に出せそうか、賃貸管理会社に査定をしてもらい、それらの結果と合わせて金融機関や賃貸管理会社にも相談してシミュレーションをすると良いでしょう。

どうやってばれる?理由を解説

どうやってばれる?理由を解説

この章では、無断賃貸がなぜ発覚するかについて解説します。

ばれたらどうなる?

住宅ローン返済中の無断賃貸が金融機関に発覚すると、最悪のケースとして一括返済を求められる場合があります

例えば、フラット35を支援している住宅金融支援機構では、無断賃貸が発覚した場合の対応について以下のような注意書きがあります。

第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金に利用するなどの目的外利用が判明した場合には、お借入れの全額を一括で返済いただく場合がありますのでご注意ください。

出典:住宅金融支援機構「返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。」回答一部抜粋

ばれるきっかけ

銀行は住宅ローンで融資した先をウロウロ巡回しているわけではありませんので、仮に賃貸に出したとしてもすぐに発覚することはありません。

では、どうやって賃貸に供しているかが発覚するかというと銀行から発送する郵便物が届かないことがきっかけになることが多いようです

実際に、住民票を移さずに引っ越して生活することはできます。
郵便物も、郵便局に転送を依頼しておけば1年間の間は転送を行うことが可能です。
逆にいえば、引っ越しをしてから1年を過ぎると、銀行からの郵便物が届かなくなります。

また、転送したとしても銀行からの郵便物が「転送不要」で送付されれば、引っ越しから1年目でも郵便物が届かなくなります。
例えば、銀行からの郵便物の中で、キャッシュカードは転送不要で送られてくることが多いです。

住宅ローンの借主へ郵便物が届かなくなり、悪質と判断されれば銀行が実際に家まで居住の確認をしに来て無断賃貸が発覚することになります。

転勤等で一時的に家を貸す流れ

転勤等で一時的に家を貸す流れ

住宅ローンを組んだまま家を賃貸に出すケースは、転勤等で一時的に家を貸す場合が多いです。
この章では、転勤等で一時的に家を賃貸するケースに絞って流れを解説します。

金融機関の了承を得る

後日、契約違反を問われないようにするためにも、やむを得ない事情がある場合には事前に金融機関の了承を得ることが必要です。

手続きとしては、金融機関の窓口で住所変更を申請し、やむを得ない事情による賃貸の届出を行うことが一般的となっています

賃貸借契約の種類を知る

転勤等で一時的に家を賃貸にする際は、賃貸借契約の種類を知ることが必要です。
賃貸借借契約には、下表の3種類が存在します。

 
契約の種類 メリット デメリット
普通借家契約 相場賃料で最も高く貸せる 借主を簡単に退去させることができない
定期借家契約 契約が満了すると確実に賃貸借契約を終了させることができる 家賃が低く借主が見つかりにくい
一時使用賃貸借契約 原則として更新はない 借主が一時使用目的の人であることが必要であり、借主を見つけにくい

普通借家契約は基本的に借主の意思で更新できてしまうため、転勤等から戻ってきたときに借主から確実に家を返してもらうことができない契約です。
そのため、一時的に家を賃貸に出す際は、定期借家契約もしくは一時使用賃貸借契約のいずれかを選ぶ必要があります

賃料査定を依頼し管理会社を決定する

家を賃貸に出す際は、管理会社に賃料査定を依頼します。
賃料査定を依頼する際は、一時的な賃貸であることを伝えることが必要です。
一時的な賃貸はリロケーションと呼ばれ、定期借家契約や一時使用賃貸借契約を前提とした賃料査定が行われます

賃料査定の結果、管理を依頼したい会社が決まったら、管理会社と管理契約を締結します。
管理会社が決まった後の入居者募集等は、全て管理会社が行います。

賃貸に出すときの5つの注意点

賃貸に出すときの5つの注意点

賃貸に出すときの注意点について解説します。

住宅ローン控除は賃貸終了の翌年から再開される

住宅ローン控除とは、返済期間が10年以上の住宅ローンを組んでいる人が一定の期間にわたり、居住の用に供した年に応じて、所得税が控除される減税制度になります。
居住の用に供した年に応じて」という点がポイントであり、本人が住んでいないと受けられない制度です。

住宅ローン控除は控除期間中に家族で転居するとその間は控除を受けることはできませんが、転居先から戻ってきたら住宅ローン控除を再開することができます

住宅ローン控除の再開には細かいルールがあります。

転居期間中に賃貸に出さなかった場合は、再入居の年から住宅ローン控除を再開することができます。
一方で、転居期間中に賃貸に出していた場合は、賃貸していた年の翌年から住宅ローン控除を再開できるというルールです。

転勤期間中に受けることができなかった住宅ローン控除の期間は、単純に失効することになります。
住宅ローン控除が不適用となった期間の分だけ延長されることはなく、終了までの期間は転勤してもしなくても同じです。

なお、住宅ローン控除は、本人が単身赴任して家族が残っている場合は、単身期間中も住宅ローン控除はそのまま継続されます。

定期借家契約は中途解約できない

定期借家契約は、契約期間満了時は確実に解約できますが、契約期間中は解約できない点に注意点です。

例えば、海外転勤の期間が5年の予定であり、5年間の定期借家で借主と契約したとします。
海外転勤の場合、想定外に赴任期間が早く終了し、4年で戻ってくるようなケースもあります。
4年目に戻ってきたとしても、借主と5年間の定期借家契約を契約している場合は4年で中途解約することができません。

転勤期間が早く終了する可能性がある場合には、定期借家契約の契約期間を短めに設定しておくことが対策です

なお定期借家契約は、更新はありませんが再契約することはできます。
再契約とは新たな契約であり、貸主と借主が合意をすれば再契約をすることが可能です。
例えば、契約期間を4年で設定しておき契約期間が終了したら、1年間の定期借家契約を締結することで合計5年間貸し出すことができます。

賃貸管理業務が発生する

賃貸に出すと、入居者からのクレーム対応等の一定の管理業務が発生する点が注意点です。

管理業務に適切に対応するには、実績豊富な管理会社に管理を委託することが重要です
実績豊富な管理会社に管理を委託すべき理由としては、主に以下の2点があります。

  • 賃貸仲介に強い
  • 適切な入居審査ができる

賃貸仲介に強い会社はオーナーから支持されるため、結果的に管理実績を増やすことができます。
そのため、管理実績の豊富さは賃貸仲介の強さを表しており、管理実績の豊富な会社に依頼すると賃貸仲介が強いことから空室が決まりやすくなります。

また、実績豊富な管理会社は、入居審査も適切です。
入居審査は家賃の支払い能力だけでなく、人物審査も含まれます。
人物審査は客観的な指標がないため、管理会社の経験値が問われる領域です。
実績豊富な管理会社は人物審査の経験値も高いため、自然と悪質な入居者を排除することができます。

なお、家賃保証会社への加入を借主へ義務付ける場合には、主に家賃保証会社が入居審査を行います。

家賃保証会社とは、借主が家賃を払わなかったときに、代わりに家賃を払ってくれる会社のことです。

貸す前の原状を記録に残しておく

家を賃貸に出す前は、原状を写真等で記録に残しておくことが重要です。
借主は退去時に原状回復義務があります。
例えば、借主が意図的に破壊したものであれば、借主の費用負担で修繕をすることになります。

原状回復で問題となる点は、原状がしっかり把握されていないと、誰が壊したのかがわからないという点です。
借主に「ここは借りる前から壊れていた部分だ」と主張されてしまえば、原状回復の請求が困難となってしまいます。
破損部分は誰が壊したかを明確にするために、貸す前の状態を記録に残しておく必要があります

確定申告が必要となる

家を賃貸に出して不動産所得が20万円を超えると、年末調整を行っているサラリーマンであっても確定申告が必要です
不動産所得とは、家賃収入から必要経費を差し引いた利益のことを指します。

不動産所得 = 収入金額 - 必要経費

確定申告の期間は、通常、翌年の2月16日から3月15日です。
不動産所得が発生すれば、所得税と復興特別所得税、住民税が増えることになります。

まとめ

以上、住宅ローン返済中の家を賃貸に出すことについて解説してきました。

住宅ローン返済中の家は、銀行との金銭消費貸借契約の中で資金使途違反になるという観点から原則として賃貸に出すことはできません。
例外として、「転勤等のやむを得ない事情がある場合」や「不動産投資ローンに借り換える場合」であれば賃貸に出すことはできます。
銀行にばれる理由としては、郵送物が届かないことがきっかけとなるケースが多いです。
転勤等で一時的に家を貸すには、銀行へ事前に了解を取り、賃料査定を依頼して管理会社を決定することが主な流れとなります。

賃貸に出すときの注意点としては、「住宅ローン控除は賃貸終了の翌年から再開される」や「定期借家契約は中途解約できない」、「賃貸管理業務が発生する」等がありました。
住宅ローン返済中の家を賃貸に出す際の参考にしていただけると幸いです。

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