賃貸経営では、入居者を募集してもなかなか決まらないことがあります。
入居者が決まらないときは理由をしっかりと把握し、改善できる部分があれば対策していくことが必要です。
空室対策は1つだけを試すのではなく、複数の対策を合わせて盛り込んでいくと効果を発揮できるようになります。
賃貸募集しても決まらないときの対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事では「賃貸募集しても決まらない」をテーマに解説します。
最初に賃貸で募集しても決まらない理由について解説します。
入居者が決まらないときの根本的な原因として、そもそも周辺の賃貸需要が弱いことが挙げられます。
不動産の賃貸需要は全国に満遍なく生じているものではなく、立地の良い場所に偏って生じていることが基本です。
賃貸需要が強く発生している場所とは、例えば都市部にある通勤に便利な駅から徒歩5分圏内にある立地等が挙げられます。
逆にいうと、不便を感じる地域では賃貸需要は生じにくいです。
都内の物件であっても最寄駅から15分以上離れた立地は、新築物件であっても入居者を決めるのに苦戦します。
賃貸需要が弱いエリアの物件は、相当に家賃を下げるか、もしくは売却するか等の抜本的な対策をすることが必要となります。
賃貸管理会社に物件を見てもらい、概算の家賃を査定し直してもらい、周辺の募集状況なども含め相談することをおすすめします。
賃貸需要が存在するエリアであっても、周辺に物件が供給過剰となっていることで入居者が決まらない場合も存在します。
例えば、地方都市の中心市街地でオフィスビルが次々とワンルームマンションに建て替えられているケースです。
地方都市ではオフィスビルの賃貸需要が弱くなってきたため、中心部でも事業系の土地活用が難しく、住宅系の土地活用が選択されることがよくあります。
地方都市の中心部は便利ですが、それでも供給過剰になってしまうと入居者を決めるのに苦戦していまいます。
インターネット上で大量に募集物件の広告が出てくるエリアは、他の物件と差別化することが必要です。
これらの対策をするには経験がないと難しいので、賃貸管理会社に相談してアドバイスを受けると良いでしょう。
物件の条件が悪いことも、入居者が決まらない大きな理由の一つです。
決まりにくい条件としては、例えば築年数が古い、1階である、部屋の形状が悪い、北向きである、3点ユニット※である、室内に洗濯機置場がない、和室がある、プロパンガスである等が挙げられます。
※3点ユニット:バス・トイレ・洗面所が1つになっているタイプ
また、物件そのものではなく、周辺環境が悪いことで決まらないことも多いです。
例えば、歓楽街の近くにある、墓地や火葬場の隣にある、線路や交通量の多い道路に面している、周辺にコンビニ等の生活利便施設はない、駅から川や高速道路を超えた先にある等が挙げられます。
物件そのものに原因があり、それらが改善可能なものであればリフォームすることで対策することができます。
周辺環境に原因がある場合には、管理会社に賃料査定を依頼し適切な家賃に設定し直して再度募集することが対策です。
家賃が高過ぎることも、入居者が決まらない大きな原因の一つです。
前節までで紹介した「そもそも賃貸需要が弱い」や「周辺に物件が供給過剰になっている」、「物件の条件が悪い」が理由となっている場合には、まずはその条件に見合った家賃に設定することが必要です。
例えば築年数が古くて入居者が決まらないのであれば、築年数が古いなりの家賃にしないと入居者は決まりません。
また、供給過剰な地域で入居者が決まらないのであれば、周辺の物件よりも一歩踏み込んだ値下げをすることも検討する必要があります。
家賃を設定し直すには、再度、複数の不動産会社に賃料査定を依頼して、今の家賃を客観的に見直すことが望ましいです。
査定の結果、家賃は高かったということが判明したら、賃貸管理会社に賃料相場を確認し適正家賃に設定をし直して再度募集していきます。
敷金や礼金が高過ぎることも、入居者がなかなか決まらない原因の一つです。
近年は敷金も礼金もゼロ円にするゼロゼロ物件と呼ばれるものも増えてきましたので、敷金や礼金の存在は入居者を決めにくくする要因となっています。
周辺の物件は、どのような敷金や礼金を設定しているのか再度調査し、周辺物件に条件を合わせていくことが対策となります。
十分な広告がなされていない点も、入居者が決まらない原因の一つです。
貸主の中には、自分の物件がインターネット広告でどのように募集されているのかを確認したことのない人もいます。
入居者がなかなか決まらないと感じたら、まずは自分の物件のインターネット広告を確認すべきです。
物件のインターネット広告は、ポータルサイトと呼ばれるサイトに掲示されていることが一般的です。
ポータルサイトには、主に「S社」と「A社」、「L社」の3社があり、これらの3社の広告が検索したときに上位に表示されています。
物件広告はこれらの3つのポータルサイトにすべて掲載されていることが理想ですが、管理会社の中には1社のポータルサイトにしか物件を広告していないケースもあります。
特に1番上位に検索されるポータルサイトに広告が載っていない場合には、入居希望者の目に留まらないことが多いです。
物件広告の露出量が少なければ、募集しても入居者が決まらないことは当然といえます。
入居者が決まらないと感じたら、まずは3つのポータルサイトに物件が広告されているかを確認することが必要です。
管理会社のIT化が進んでいないことも、入居者が決まらない原因の一つです。
近年は、新型コロナウイルスが流行した2020年以降、不動産会社の賃貸仲介のIT化が一気に進みました。
具体的には、オンライン内見やスマートロックによる無人内覧、VR内覧、バーチャルホームステージング、IT重説、電子契約等のIT技術の導入が挙げられます。
特にオンライン内見やスマートロックによる無人内覧等は、入居希望者の内見数を増やす効果があり、借主を決めやすくなっています。
実際にIT化に遅れた不動産会社は、借主を決められなくなったことから仲介手数料の収入が減り倒産に至ってしまった企業もあります。
不動産会社が倒産に至るくらいですから、不動産会社のIT化は入居者の決まりやすさを左右する大きな要因です。
この章では、家賃が適正であることを前提に、家賃を下げずに空室を埋めるための対策について解説します。
空室状況を改善するには、管理会社を変えることが最も効果的な対策です。
賃貸仲介の実力は管理会社によって異なるため、力のある会社に管理を依頼すれば入居者は決まりやすくなります。
管理会社の実力は長年に渡り培ってきたものであるため、そう簡単になくなるものではありません。
そのため、管理会社を切り替えた以降、効果はかなり長続きします。
流行りに任せて、すぐに効果が終わる小手先の空室対策をするのとは大きな違いです。
また、管理会社の切り替えは、無料で行うことができます。
タダで息の長い空室対策を実現できるわけですから、管理会社の切り替えは費用対効果が極めて高い対策といえるのです。
管理会社を選ぶ際は、以下の3つを確認することがポイントとなります。
【管理会社を選ぶポイント】
1つ目は、管理の実績です。
賃貸仲介に強い会社は賃貸オーナーから支持されやすいため、結果的に管理の実績が豊富になっています。
管理戸数の多さは賃貸仲介の強さの証であるため、管理戸数が多い会社を選ぶことが適切です。
2つ目は、会社の規模です。
規模の大きな会社はスタッフが多いため、各営業担当者が業務過多で仕事が回らないといった状態が少なくなります。
多くのスタッフが在籍している会社であれば、自分の物件も丁寧に扱ってくれることが期待できます。
3つ目は、付随サービスの内容です。
管理会社の中には、例えば、貸主が負担すべき修繕費用を一定額まで負担する、または借主に家賃の不払いがあっても賃料を保証する等の付随サービスを提供している会社もあります。
何もサービス提供のない会社を選ぶよりも、付随サービスもしっかり提供している会社を選ぶ方が、安心ですし、メリットも多いです。
インターネット広告を見直すことも対策の一つです。
まず、検索時に上位に表示されるポータルサイトに広告が載っていない場合には、管理会社の変更も考える必要があります。
3つのポータルサイトに広告が載っている場合でも、見直すべきポイントがあります。
例えば、写真が魅力的でない場合には写真を撮り直し、枚数が少ないときには枚数を増やすことが必要です。
360°パノラマ写真も載せておくと、入居希望者が疑似的に内見できる効果があります。
他の物件の広告を参考にし、気に入ったものがあれば管理会社に相談して導入してもらうのが良いといえます。
クレジットカードはポイントが付くため、毎月の家賃をクレジットカード払いにできると借主は喜びます。
そのため、家賃をクレジットカードで支払いを可とすることは、よく行われる空室対策の一つです。
ただし、クレジットカード払いにすれば貸主はカード手数料が取られるため、その分、貸主の収入は減るので注意が必要です。
近年の賃貸物件では、インターネット無料サービスを導入している物件が多いです。
まだインターネット無料サービスを導入していない場合には、導入することで一定の空室対策効果があります。
インターネット無料サービスを導入する場合、光回線を導入して高速インターネットと謳えるようにしておくことが望ましいといえます。
インターネット無料サービスは、借主から管理料としてプロバイダ料金を徴収できる点が特徴です。
費用対効果の高い設備を備え付けで設置しておくことも対策の一つです。
導入費用が安く、空室対策効果の高い設備には以下のようなものがあります。
【費用対効果の高い設備】
上記の設備は、導入コストが低いわりに入居者からの高いニーズがあります。
どれか1つでも付いていない設備があれば、備え付けることをおすすめします。
防犯の観点から、ドアモニターや浴室乾燥機なども人気があります。
敷金や礼金の条件を見直すことも対策の一つです。
敷金と礼金であれば、まずは礼金から減らしていきます。
敷金は、借主の債務不履行を担保する役割があるため、預かっておくことが望ましいです。
もし敷金もゼロ円にする場合には、借主に家賃保証会社へ加入することを義務付けし、賃貸借契約書では退去時に破損等があれば修繕費用を別途請求できるようにしておく必要があります。
ADとは、不動産会社へ仲介手数料とは別に支払う広告宣伝費のことです。
ADは別名、業者インセンティブとも呼ばれ、不動産会社へ借主を誘導してもらうための動機付けの役割を果たします。
例えば、ADを家賃の2~3ヶ月分にすることで、入居希望者を自分の物件に優先的に紹介してもらえるようになります。
ADは成果報酬ですので、借主が決まったら費用を支払います。
入居条件を緩和することも空室対策になります。
例えば、ペット可や喫煙可、単身高齢者可、外国人可とすることが入居条件の緩和です。
入居条件を緩和すれば、入居希望者が増えますので、借主が決まる確率が上がります。
特に単身高齢者に関しては、賃借ニーズが高いにも関わらず貸さないオーナーが多いことから需給のミスマッチが生じています。
近年は、セキュリティ会社が孤独死を早期発見できる見守りサービスも提供していますので、これらのサービスを利用すれば単身高齢者向け賃貸の課題を解決できます。
リフォームをすることも、効果的な空室対策です。
3点ユニットや和室等の入居のネックになっている仕様があれば、リフォームして改善します。
リフォームはコストが多くかかるため、実施個所を管理会社と相談しながらリフォーム費用と家賃のバランスもあるので先ずは最低限のリフォームを実施することをおすすめします。
以上、決まらない賃貸募集の理由と対策について解説してきました。
賃貸で募集しても決まらない理由としては、「そもそも賃貸需要が弱い」や「家賃が高過ぎる」等が挙げられます。
家賃を下げずに空室を埋める対策としては「管理会社を変える」や、「インターネット広告を見直す」、「室内に費用対効果の高い設備を設置する」等がありました。
賃貸管理会社に物件を見てもらい、周辺の募集状況や相場を聞き適切なアドバイスを仰ぐと良いでしょう。
空室対策を行う上で、参考にして頂ければと思います。
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