外国人観光客の訪日が増えるなか、注目度が高まっている民泊。留守宅を貸して収入を得るという意味では、非常に優れたビジネスモデルです。しかし、これを転勤中に利用しようと考えた場合には、いくつかの懸念が生まれます。そこで今回は、民泊と賃貸の違いや、事業として運営する上での注意点・リスクについて解説します。
民泊とは、個人宅や別荘、マンションの空室などに旅行者等を宿泊させるサービスを指します。たとえば所有する空きマンションに海外観光客などを有料で泊める場合などが民泊に当たります。
2008年頃に登場した「Airbnb」などによって、民泊は注目を集めました。外国人観光客向けに個人宅や投資マンションを貸し出すビジネスモデルが世間的に認知されるようになったのです。
なお、賃貸との違いは「泊める」のか「貸す」のかということ。民泊はあくまでも宿泊サービスであり、物件を貸すことにはなりません。なお、実務面で言えば行政への許可が必要かどうかという点にも違いがあります。より具体的に見ていくと、1カ月以上の賃貸は行政からの許可が不要です。一方、1カ月未満の場合は民泊と見なされ、行政への届け出が必要になります。
それでは、転勤中に自宅を民泊として活用することはできるのでしょうか? 結論から申し上げますと、民泊は可能です。ただし、以下のような条件が民泊新法によって定められているため注意が必要です。
民泊事業を運営する上では、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。
なお、転勤中の自宅は「随時居宅用」に該当します。これは、「転勤によって一時的に生活の拠点を移しているものの、将来的に再度居住するために所有している空き家」と見なされるからです。
一方、すでに転勤先で別の住居を購入し、元の家を空き家として放置しているような場合は民泊事業に使用できません。また、民泊を利用するために分譲・賃貸の募集をかけるという方法もないわけではありませんが、これでは本末転倒。さらに、明らかに入居者募集の意図がないことが分かると、やはり民泊としては認められません。
民泊事業を運営する上でもっとも注意すべきが営業日数です。民泊新法では、営業日数を180日以内と限定しています。これを超えた場合には、旅館業に該当してしまいます。また、民泊に関しては地方自治体ごとに営業日数の上限や曜日の制限があります。たとえば東京都の荒川区や江東区では、月曜正午から土曜正午まで(祝日正午から翌日正午までを除く)は民泊を行うことができません。
このように、民泊では1年中人に自宅を貸すということは想定されていません。転勤期間が短ければよいかもしれませんが、半年以上にわたる転勤となると、そこまでの収益は見込めないでしょう。
これは法令と関係がない部分ですが、マンションのなかには民泊を管理規約で禁止しているところもあります。この場合、マンション側と交渉を行うことになりますが、基本的に許諾を得られることはないでしょう。
民泊を運営する際には、いくつかのリスクを想定する必要があります。以下は、その代表例です。
民泊利用者は海外観光客などが多い傾向にあります。そのため、文化的・感覚的な違いによってトラブルが発生する可能性があります。たとえば部屋を散らかされたり、設備や置物が壊されたり、ときには部屋の備品を持ち帰られてしまったりすることもあるようです。
民泊として自宅を貸した場合には、近隣住民との問題にも注意しなくてはなりません。たとえばマンションの場合、共有スペースに知らない人が立ち入ることを快く思わない住民もいるかもしれません。そのほかにも、ゲストが深夜まで騒いだりすると、騒音の苦情が寄せられる可能性もあります。
民泊自体は需要も多くありますが、運営にあたっては適正な管理が必要です。そのため、転勤中であまり自宅の手入れなどを行えない場合は現実的とは言えません。加えて、上述のとおり収益の部分にも懸念が残ります。
転勤中の自宅の活用法としては民泊のほかに、一時的に自宅を貸し出す「リロケーション」があります。リロケーションの場合は賃貸となりますから、入居者を見つけることができれば、毎月の安定的な家賃収入が得られます。入居中の賃貸管理もリロケーション会社に一任できるため、余計な手間はかかりません。なお、一般的な賃貸で用いられる普通借家契約と異なり、リロケーションでは帰任時にスムーズに家に戻れるという点も大きなメリットです。
自宅をフレキシブルに宿泊サービスとして活用できる民泊は、今後もさらに注目されていくことでしょう。しかし、こと転勤中の収益確保という意味では、賃貸のほうが収益面でも手軽さの面でも優れています。なかでもリロケーションは転勤時の留守宅を貸すのに最適なサービスです。これから遠方への転勤を控え、自宅をどうしようかお悩みの方は、ぜひご活用ください。
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