リロケーションであっても、入居者には原状回復の義務が発生します。もちろん、貸主様はその費用を請求できますのでご安心ください。しかし、「そもそも原状回復がどのようなものなのか?」「借主と貸主の負担はどう決まる?」といった疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、原状回復の基礎知識と、リロケーションにおける原状回復の考え方について解説します。
これまで賃貸物件に住んだ経験のある方なら、一度は「原状回復」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。漢字だけを見ると、「入居した当時の状況(原状)に部屋を戻すこと」と思われているかもしれません。
簡単に言うと、賃借人は退去の際、自分の使い方が悪かったせいでできてしまった傷や汚れを修繕しなくてはならず、これを行うことです。
1998年に国土交通省が発行した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下、原状回復ガイドライン)では、原状回復を以下のように定義しています。
賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること
原状回復ガイドラインの定義をもう少し詳しく見ていきましょう。ポイントになるのが「通常の使用を超えるような使用」という部分。これを逆に捉えて読むと、「通常の使用によってできた傷や汚れ」については、賃借人が修繕する必要はないと捉えられます。
かみ砕いて説明をするのであれば「普通に使っていたらできないような傷や汚れがあった場合は、借主が修繕をする。一方、普通に使っていてできるであろう傷や汚れについては、修繕しなくてよい」となります。
なお、原状回復ガイドライン自体には法的効力がありません。しかし、民法第400条には、「賃借人は、賃借物を善良な管理者としての注意を払って使用する義務を負う」といった内容が記載されています。また、ガイドラインは裁判所の判例を基に作成されているため、実質的な法的拘束力があると認識されています。
「普通に使っていてできた傷や汚れ」と、「普通じゃない使い方をしてできた傷や汚れ」の違いは、言葉だけではなかなかイメージがつきにくいものです。以下で、具体例をいくつかピックアップしました。
借主負担 | 貸主負担 |
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※表中の例は一般的なケースを挙げており、実際には同じ結果でも程度や原因によって負担区分が分かれます。ガイドラインには各ケースについて考え方が詳述されていますので、ぜひ参考にしてください
なお、退去時には不動産管理会社などが現地へ赴き、どこまでが借主負担で、どこからが貸主負担なのかを判断します。その判断は公平を期すために、原状回復ガイドラインの基準が用いられています。
なお、原状回復にかかる費用は通常、賃借人が入居時に預けた敷金から支払われます。また、敷金の金額を超えた分については、賃借人がその差分を追加で支払うというケースも少なくありません。
それでは、転貸サービスとなるリロケーションの場合の原状回復はどのように捉えるべきでしょうか?
原則として、賃貸である以上原状回復は必要です。オーナー様が転勤から帰ってきた際に、家がボロボロの状態では気持ち良く前の生活に戻れません。そのため、入居者との契約の際には、原状回復の規定が盛り込まれていることが通常です。
また、退去時のトラブルを防止するために、リロケーションの場合にも原状回復ガイドラインの基準に基づいて判断を行うことが望ましいとされています。
当社の場合には、入居前に物件をVTRで撮影し、退去時までそのデータを厳重に保管しております。これは、退去時の状況と照らし合わせて、どのような変化があったのかを確認するためです。
そして最終的に、第三者的視点で傷や汚れを判断しながら、適切な負担割合を双方に提示しております。リロケーションだから普通の賃貸に比べて原状回復がきちんとなされないといった心配はありません。
原状回復ガイドラインが公表される以前は、原状回復をめぐるトラブルが多発していました。これは、原状回復費用の範囲や金額に関する賃借人と賃貸人の考え方に違いがあったためです。しかし、ガイドラインの発表や改訂によって、現在は公平性が保たれてきています。
リロケーションの場合にも、原状回復に関わるトラブルが発生しないとは言い切れません。そのため、リロケーション会社選びの際には、しっかりと退去時の対応を行ってくれるところを探すようにしましょう。
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