転勤などで自宅マンションに誰も住まなくなってしまう場合や、空き家になっている実家のマンションを相続した場合などには、空いているマンションを貸すことを検討する場合もあるでしょう。そのとき、最も気になるのはマンションを貸すと、どのくらいの家賃収入を得られるのだろうということではないでしょうか。
マンションの家賃を相場よりも高く設定すると入居を希望する人を見つけにくく、低く設定するとあまり利益を得られません。そのため、マンションを貸す前には近隣の家賃相場を調べ、オーナーも入居者も納得できる家賃に設定することが大切です。
この記事では、マンションを貸すときに知っておきたい家賃相場の調べ方を解説し、貸すときにかかる費用や手順、注意点について解説します。
マンションを貸すにあたって家賃相場を調べる方法には、
があります。
自分で相場を調べるには大きく2つの方法があります。
賃貸情報のポータルサイトでは、市区町村や駅ごとにまとめられた家賃相場が掲載されています。間取りや建物種別などの絞り込み条件はサイトによって異なり、相場算出の元となる掲載物件も異なるため、確認できる家賃相場はサイトによって異なります。
より具体的な相場を知るためには、ポータルサイトに掲載中の入居者募集中の物件情報を、貸し出しを考えているマンションの立地するエリアに絞り、広さや駅からの距離、築年数などが近い物件の家賃を調べてみましょう。
同じエリアに似た条件の物件があまりない場合は、少しエリアを広げたり、ターミナル駅までの距離など似たような立地条件のエリアに変更したりして検索してみると、ある程度の家賃相場を知ることができます。
公益財団法人不動産流通推進センターが東京圏の賃貸マンションの家賃相場の推移を部屋数別に公表しています。平均値になるためエリアによる差異が生じると考えられます。そのためエリア別の相場を知りたい場合はマンション2LDK~3LDKの家賃相場も掲載されています。大阪、名古屋の賃貸マンションの家賃相場も掲載されています。
参考までに令和5年9月の東京圏の賃貸マンションの家賃相場は次の通りになっています。
1LDK~2LDK | 2LDK~3LDK | |
---|---|---|
上限 | 102,194円 | 165,446円 |
平均 | 88,171円 | 144,611円 |
下限 | 76,069円 | 124,023円 |
参考:査定マニュアル統計データ研究報告、不動産統計集、「不動産賃貸」[公益財団法人不動産流通推進センター]
ポータルサイトに掲載されている情報は、現在入居者を募集している物件です。中にはなかなか入居者が決まらず、長期に渡って募集し続けている物件もあるかもしれません。そのため、ポータルサイトで知ることができる家賃相場は、貸す側が希望している家賃相場と言えます。
より正確に賃貸契約が成立した物件の家賃相場を知りたいときは、不動産会社に相談をしてみるのがおすすめです。不動産会社では業界のネットワークを活用して成約物件の情報を把握しているため、賃料査定を依頼すると、成約物件の家賃相場から妥当な家賃の額を提示してもらえます。ただし、一社が提示する家賃の額が正しいとは限りません。賃料査定を依頼するときは複数の会社に査定を依頼し、それぞれが提示した家賃の金額を比較し、家賃の算出根拠について確認することも大切です。
実際にマンションを貸す際は、入居者の募集や入居者からの問合せ対応、家賃の回収などの管理業務の手間が発生しますが、これらの管理業務は不動産会社に委託することができます。転勤中の自宅の賃貸など物件から離れている場合は、賃料査定を依頼することと合わせて、入居者募集や入居中の管理についても相談してみるとよいでしょう。
マンションの家賃相場の調べ方は複数ありますが、この中でより正確な家賃相場を調べる方法は、不動産会社に賃料査定を依頼する方法です。
賃貸情報サイトは入居者募集価格のため、実際入居した際に支払う賃料とは異なる場合があります。また、不動産流通累進センターの数値は直近の家賃相場ではないため、異なる場合もあるでしょう。
不動産会社であれば、実際の物件情報を加味した家賃相場が分かる上に契約時の賃料も提示されます。契約時の賃料と募集時の家賃相場では、どれくらいの差があるのかも教えてもらうことができ、不動産会社の中でも賃貸管理会社へ賃料査定を依頼するのが最も正確で信頼性の高い方法といえるでしょう。加えて、貸し出しに際しての費用なども算出してくれるため、収入と費用のバランスも明確になります。
マンションの一室を貸し出す場合、「賃貸管理」という業務が発生します。
賃貸管理の内容は一般的に以下の通りです。前章でお伝えした不動産会社の中でも「賃貸管理会社」はこれらの管理業務全般に関わることから、相場を知る以外にも多岐に渡って貸主をサポートします。
時間や賃貸経験がない貸主でも賃貸管理会社へ委託することで、物件の価値を維持しながら、大幅に手間を軽減することができます。
賃貸運営という面でも相場を考慮した適正価格を知れることから、しっかりとした戦略を立てられ、安定した家賃収入が確保できる可能性が高まります。
相場より家賃が高くなる要素として、下記が挙げられます。
このようにマンションの家賃相場は、交通の利便性の良い環境、生活に便利な設備の充実、築浅物件というように、住むにあたって条件が良いほど高くなる傾向にあります。
一方、家賃相場が安くなりがちな物件は上記の逆のパターンになります。
単身者が入居することの多いワンルームマンションでは、駅が近いという条件が他の条件よりも重視されることが多くあります。しかし、子どものいるファミリー世帯の場合は駅が近いことよりも、幼稚園や学校などが近く、治安のよい環境が好まれるケースが多く、どのようなタイプのマンションかによっても、家賃に大きく影響を与える要素は変わります。
マンションを貸す場合の契約方法にはいくつかの種類があります。契約方法によって家賃の相場も変わってくるため、マンションを貸すときには契約方法の違いを理解し、ご自身に最適な契約方法を選ぶことも大切です。
期間を定めることなくマンションを貸す普通借家契約の場合、一般的な家賃相場で貸し出すことができます。しかし、賃貸期間を限定してしまう定期借家契約と一時使用賃貸借契約の場合は、契約期間満了時には入居者は必ず退去しなければならず、家賃を下げないと入居者を獲得しにくくなってしまいます。そのため、定期借家契約や一時使用賃貸借契約でマンションを貸すときの家賃相場は、普通借家契約の家賃の8割程度に設定されることが多くなります。
マンションを貸すときには、できるだけ高い家賃で貸し出したいというのが本音でしょう。しかし、将来的にまたそのマンションに住む予定があれば、家賃は下がってしまうものの、期間を限定して貸し出せる「定期借家契約」や「一時使用賃貸借契約」でマンションを貸す方が安心です。
リロの留守宅管理は、転勤者向けの「一時使用賃貸借契約」はもちろん、投資など一般賃貸で利用したい「普通借家契約」、転勤者でなくても賃貸期間を限定して貸し出せる「定期借家契約」の3つの契約プランを用意して、様々なニーズに幅広く対応しております。
マンションを貸すと収入を得られますが、貸している間にかかる費用もあります。これらは確定申告の際に重要になりますので、明細や領収書は必ず保管しておきましょう。
マンションを貸している間に限らず、所有している間はかかり続けます。ただし、マンションを貸している間の納税額は費用として計上でき、収入から差し引くことができます。
自分がマンションに住んでいる場合、火災保険や地震保険に加入しているでしょう。マンションを貸し出す際も、これらの保険は引き続き加入が必要です。入居者も保険に加入しますが、入居者に過失がある場合のみ保険金の支払い対象となり、隣家からのもらい火などは対象外となります。
また上記に加えて、施設賠償責任保険への加入も必要です。これは建物の破損によって通行人にケガをさせてしまう事故などの賠償責任について、補償されます。どんなにしっかり管理を行っていても、事故が起こる可能性を0にすることはできません。高額な賠償金額を負担するリスクを低減するために、加入しておきましょう。
マンションの管理組合には、原則所有者が加入します。そのため管理組合に支払う管理費や修繕積立金も所有者の支払いとなります。ただし、管理費の部分については、家賃とともに入居者に請求することが可能です。
国土交通省による調査では、「管理・共益費」「修繕積立金」の平均額は次の通りです。
管理・共益費(毎月発生):17,103円(駐車場使用料等からの充当額を含む)(平均)
修繕積立金(毎月発生):13,378円(駐車場使用料等からの充当額を含む)(平均)
参考:令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕[国土交通省]
マンションを貸し出す際は、入居者が問題なく生活できる状態にしておかなければなりません。貸し出す前にはハウスクリーニングを行って室内を整え、水回りなど必要に応じてリフォームを実施します。入居中も設備の故障などがあれば、都度対応が必要です。
ハウスクリーニングはファミリータイプの物件では10万円~、リフォームはクロスの貼り替えで1,000円/㎡~(クロスのグレードによって異なる)が相場となっています。
不動産会社を通して入居者との契約を行った場合の仲介手数料や契約事務手数料、賃貸管理会社に入居管理を依頼する場合は賃貸管理手数料の支払いが発生します。
賃貸管理手数料は、賃貸管理会社との契約方法によって異なり、管理委託方式であれば家賃の5%程度が相場となっています。賃貸管理会社の手間が増えるサブリース(転貸)や空室時の家賃保証などサービスが充実するほど手数料率は高くなります。
家賃などマンションを貸して得た収入から、かかった費用を差し引いた金額を不動産所得といい、所得税が課されます。給与などの他の所得と合算して計算し、確定申告を行う必要があります・
マンションを貸し出すまでの流れを紹介します。マンションを貸し出すにあたっては、準備や決めるべきことがありますので、事前に確認しておきましょう。
マンションを貸し出すためには、マンションを借りてくれる入居者を見つけなければなりません。入居者募集を依頼する不動産会社を選ぶことから始めましょう。
不動産会社は、入居者募集から契約までを行う賃貸仲介会社と、入居者募集から契約、入居中の管理から解約までをおこなう賃貸管理会社があります。入居中の管理業務を自分で行うことが難しい場合は、賃貸管理会社に依頼するとよいでしょう。
各不動産会社は、無料賃料査定を実施しています。いくつかの会社の賃料査定を利用して自分のマンションの賃料を把握しつつ、各社のサービス内容や強みを比較するとよいでしょう。なお、査定額は必ずその金額で貸し出せることを保証するものではありません。高すぎる査定額については、根拠を確認することが必要です。
依頼する不動産会社を決めたら、入居条件を決めていきます。
賃料や契約期間、契約の種類といった基本的な内容から、ペット飼育や喫煙の可否など、禁止事項についても定めておきます。マンション全体としてペット飼育の禁止などが定められている場合もありますので、管理規約も必ず確認し、入居条件に盛り込んでおきましょう。
入居条件を定めたら、入居者の募集を開始します。
不動産ポータルサイトでの募集がメインとなりますが、各社独自ルートを持っている場合もあります。例えば、当社の場合は社宅管理事業と連携し、法人の社宅向けの賃貸物件として募集を行うことが可能です。不動産会社選びの際は、入居者募集のルートについても確認しておくとよいでしょう。
入居者募集を行っていると、興味をもった入居者希望者から、内見の申込が入ります。内見に向けて室内を綺麗にしておき、入居申込の獲得に繋げましょう。
入居希望者から入居申込が入ったら、支払い能力を中心に入居審査を行います。審査結果に問題がなければ、賃貸借契約を締結し、マンションの貸し出しを開始します。
マンションの貸し出しについては、いくつか注意すべきポイントがありますので、確認していきましょう。
住宅ローンは自分が住むための家を購入する目的で借りることができるローンです。そのため、原則として住宅ローン利用中のマンションを貸し出すことはできません。契約違反として、ローンの一括返済を求められる場合もあります。
ただし、転勤などやむを得ない事情の場合は、この限りではないこともあります。
貸し出しを検討している場合は、必ず借入先の金融機関に確認しましょう。
転勤で空いてしまうマンションを一時的に貸す場合や、相続したマンションを子どもが住むまでの間貸し出す場合など、将来的に自己使用の予定がある場合は、「定期借家契約」を締結しましょう。
一般的な普通借家契約では、入居者が希望すれば原則契約更新となり、なかなか契約が終了しないというリスクがあります。定期借家契約はあらかじめ期限を定めて契約するので、契約期間満了時に必ず契約が終了します。
マンションの賃貸中に入居者の故意過失によりついた傷や破損箇所は原状回復を求めることができ、その費用を入居者に請求できます。入居者がつけたものかどうかを判別するために、マンションを貸し出す前に写真や動画などで室内の状態を記録しておきましょう。
「6-2. 入居条件を決める」でもお伝えしたように、マンションの管理規約は入居者にも適用されます。ペット飼育や喫煙の可否、共有部の使い方など、マンションの管理規約に定められている内容は、必ず入居条件に設定しましょう。
マンションを貸して家賃収入を得たら、たとえ本業から給与をもらっていて年末調整を行っている場合でも、確定申告が必要です。給与などほかの収入がある場合は合算して申告します。
確定申告の際は、貸すためにかかった費用を計上して収入から差し引き、実際の収益の部分に所得税が課税されます。費用計上できるものは「5. マンションを貸すときにかかる費用と相場」で挙げた所得税を除く費用のほか、マンションの減価償却費も対象となります。詳しくは、下記記事を参照ください。
賃貸管理手数料は、サービスや補償内容が充実しているほど高くなる傾向にあります。
手数料の安さだけで賃貸管理会社を選ぶと、必要なサービスがオプションとなっていたり、保証サービスが少なかったりすることがあります。「5-5. 賃貸管理手数料等の不動産会社への報酬」でご案内したように管理方式の違いでも手数料相場は異なります。
例えば、入居者の募集しかしない管理会社に委託してしまうと退去時の立会い、原状回復にあたっての査定や交渉、破損個所の修繕手配など、自分でこれらをこなすことになります。
管理手数料が安くてもその他の費用がかかれば、最終的にオーナーが支払う費用は高くなり、トータルコストは高くなる可能性があります。管理手数料の差はどのような業務に反映されているか金額だけでなく、サービスの内容をしっかり確認し、総合的に判断しましょう。
使用していないマンションがある場合、そのマンションを貸すことで毎月の家賃収入を得られる可能性があります。
貸す際に「出来れば高い家賃でマンションを貸し出したい」と思うのは当然です。しかし、相場よりも高い家賃に設定してしまうと、なかなか入居者が見つかりにくくなります。一方で、相場よりも低い家賃に設定してしまうと、入居者は見つかっても収入が少なくなります。
家賃設定を誤って、マンションの貸し出しで損をしないためには、賃貸情報サイトで所有しているマンションの近隣エリアの家賃を調べた上で、複数の不動産会社に賃料査定を依頼し、過去に成約した物件をもとにした、より正確な家賃相場を把握することが大切です。
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