マンションの賃貸経営では、マンションを貸し出すことによる家賃収入が主な収益源となります。しかし、そのすべてがそのまま手元に残るわけではありません。管理費や修繕積立金、税金、管理委託料などの経費が差し引かれるため、実際の手取り額を正確に把握することが重要です。
本記事では、マンションを賃貸に出した場合の手取り額を具体的にシミュレーションし、発生する税金や経費、さらに手取りを増やしマンションの賃貸経営を成功させるための方法を解説します。
マンションを賃貸に出す際、最も気になるのが毎月の手取り額です。家賃収入からローン返済や管理費、修繕積立金、税金、保険料などの経費が差し引かれるため、予想よりも少なくなることがあります。ここでは、賃料が15万円、20万円、25万円の場合の手取り額を簡単にシミュレーションします。
【計算の前提】
賃貸管理委託料:賃料の5%
管理費:賃料の5%
修繕積立金:10,000円
固定資産税・都市計画税:年額12万円(月換算で1万円)
火災保険料・地震保険料:年額2万円(月換算で1,667円)
手取り額:
賃料 – ( 賃貸管理委託料 + 管理費 + 修繕積立金 + 固定資産税・都市計画税 + 火災保険料・地震保険料 )
【月額賃料15万円の場合】
賃貸管理委託料:15万円 × 5% = 7,500円
管理費:15万円 × 5% = 7,500円
修繕積立金:10,000円
固定資産税・都市計画税:10,000円
火災保険料・地震保険料:1,667円
手取り額:
150,000円 – ( 7,500円 + 7,500円 + 10,000円 + 10,000円 + 1,667円 )
= 113,333円/月
【月額賃料20万円の場合】
賃貸管理委託料:20万円 × 5% = 10,000円
管理費:20万円 × 5% = 10,000円
修繕積立金:10,000円
固定資産税・都市計画税:10,000円
火災保険料・地震保険料:1,667円
手取り額:
200,000円 – ( 10,000円 + 10,000円 + 10,000円 + 10,000円 + 1,667円 )
= 158,333円/月
【月額賃料25万円の場合】
賃貸管理委託料:25万円 × 5% = 12,500円
管理費:25万円 × 5% = 12,500円
修繕積立金:10,000円
固定資産税・都市計画税:10,000円
火災保険料・地震保険料:1,667円
手取り額:
250,000円 – ( 12,500円 + 12,500円 + 10,000円 + 10,000円 + 1,667円 )
= 203,333円/月
賃貸経営において、家賃収入だけではなく、発生する税金や経費についても考慮する必要があります。
ここでは、マンションを賃貸に出す際に発生する主な経費について説明します。
賃貸物件にローンを組んでいる場合、ローン返済前とローン返済後では手取り額が大きく異なることが一般的です。ローン返済中は、家賃収入から毎月の返済額を差し引く必要があるため、手元に残る金額はその分少なくなります。
例えば、毎月の返済額が10万円だとすれば、その金額が家賃収入から差し引かれるため、収益に大きな影響を及ぼします。しかし、ローンの返済が完了すれば、その分家賃収入がダイレクトに手取り額に反映されるため、手元に残る金額が大幅に増加します。
そのため、ローンの残債と返済期間、そして利息負担の変動を常に把握しておくことが重要です。また、繰り上げ返済や金利条件の見直しを行うことで、ローン返済を早めたり、月々の返済額を減らしたりできれば、手取り額を増やすための手段として有効です。ローン返済後のキャッシュフローを正確にシミュレーションし、将来の経済的な安定を計画することが賃貸経営の成功に繋がります。
賃貸物件の管理をプロの賃貸管理会社に委託する場合、家賃収入の5~10%前後を管理委託料として支払うのが一般的です。管理会社は入居者募集や契約手続き、家賃の徴収、トラブル対応、退去時の原状回復工事の手配など、日常の管理業務を一手に引き受けてくれます。このため、オーナーが直接管理業務に時間や手間をかける必要がないメリットがあります。
例えば、家賃が15万円の場合、5%の管理委託料であれば月々7,500円程度の管理委託料が発生します。管理会社が提供するサービスの範囲や質によって料金は異なるため、委託する前に契約内容を確認し、自分のニーズに合った会社を選ぶことが重要です。管理委託料を節約するために自主管理を選ぶオーナーもいますが、その場合は自身で管理業務を行う負担が増えることを考慮する必要があります。
管理費は、マンションの共用部分を維持管理するために毎月必要となる費用です。例えば、エレベーターのメンテナンスや清掃、庭や駐車場の管理など、共用部分の機能を保つために支払う金額です。この管理費は、マンションの規模や設備内容、管理組合の意思決定によって異なりますが、一般的には家賃の5%前後が一応の目安となります。
例えば、家賃が15万円であれば、月々7,500円程度の管理費が発生することになります。
また、管理費は固定の支出となるため、賃貸経営を行う際にはしっかりと考慮に入れておく必要があります。マンションの管理状態が悪化すると、入居者の満足度が低下し、空室リスクが増える可能性があるため、管理費が安すぎることは賃貸経営にとって逆効果になる場合もあります。適切な管理費によって、共用部分の維持管理を行うことも、長期的な収益を確保するための鍵となります。
修繕積立金は、マンションの長期的な維持管理や大規模修繕に備えるための重要な費用です。マンションは築年数が経過するにつれて、さまざまな部分で修繕やメンテナンスが必要になります。例えば、外壁の塗り替えやエレベーターの交換、給排水設備の修繕など、長期的な視点で見たときに、計画的なメンテナンスが不可欠です。
修繕積立金の金額は物件の規模や築年数によって異なりますが、一般的に月額1万円程度を目安にすることが多いです。しかし、物件が築浅であれば修繕積立金が比較的低めに設定されることがあり、築年数が経過するとその額が増加する傾向にあります。修繕積立金が十分に積み立てられていない場合、大規模修繕が必要になった際に一時金として高額な費用を請求されるリスクもあるため、事前に確認しておくことが大切です。
賃貸経営では、さまざまな税金の支払いが必要です。まず、物件を所有しているだけで毎年支払わなければならないのが「固定資産税」です。固定資産税は物件の評価額に基づいて課税され、評価額が高いほど税額も増えます。一般的に年額で数万円から数十万円の固定資産税がかかることが多いです。地域によっては、さらに「都市計画税」がかかる場合もあります。
加えて、賃貸経営で得た家賃収入に対しても「所得税」と「住民税」が課税されます。所得税は収入から必要経費を差し引いた金額に応じて課税されるため、経費管理が重要となります。また、賃貸経営で得た収入をもとに、翌年の住民税も計算されるため、税金の負担は賃貸経営における重要な経費としてしっかりと計算に入れておく必要があります。
火災や地震など、自然災害に備えるために火災保険や地震保険に加入することは、賃貸経営において非常に重要です。火災保険は、火災や台風などによる建物の損害を補償するもので、一般的に年間2万円程度の保険料がかかります。地震保険は火災保険に付随して契約します。これも同程度の費用が発生します。
これらの保険に加入することで、万が一の被害に対するリスクを軽減できるため、物件の安全性を確保しながら賃貸経営を行うことができます。
賃貸物件は長期間にわたって使用されるため、定期的に修繕が必要になります。入居者が退去するたびに発生する修繕費は、壁紙の張り替えやエアコンの交換、トイレやキッチンの修理など、さまざまな箇所で必要となることが多いです。また、入居者による損耗だけでなく、経年劣化による設備の不具合も修繕対象になります。
修繕費は予期せぬ支出となることが多いため、事前に予算を組んでおくことが大切です。特に古い物件では、修繕費がかさむことがあるため、物件の状況に応じて計画的な修繕を行い、入居者にとって魅力的な住環境を提供することが求められます。
賃貸経営で手取り額を増やすためには、経費を減らし、家賃収入を上げる工夫が必要です。以下では、手取り額を増やすための具体的なテクニックを紹介します。
ローン返済中の場合、繰り上げ返済を行うことで、毎月の返済額を減らし、その分手取り額を増やすことができます。繰り上げ返済により元本が減少し、その結果利息負担も軽減されます。経済的な負担を早く軽くできることが、この方法の大きな利点です。繰り上げ返済を上手に活用することが手取り額の増加に繋がるでしょう。ただし、繰り上げ返済の際に手数料がかかる場合もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
物件のリフォームやリノベーションを行うことで、家賃を上げることが可能です。特にキッチン、バスルームなどの水回りのリフォームは、入居者にとって大きな魅力となります。また、内装のリノベーションや設備のアップグレードも、家賃増加に直結することが多いです。例えば、築年数が古い物件でも、モダンな内装や設備にバージョンアップすることで、入居者の興味を引くことができ、より高い家賃で貸し出せるようになります。
ただし、リフォームにかかる費用と、それによって増加する家賃のバランスをしっかり見極めることが重要です。費用対効果を十分に考慮し、過度な投資を避けることが成功のポイントとなります。
賃貸物件に付加価値を与えることでも家賃を引き上げることができます。例えば、無料でWi-Fiを提供したり、防音対策を施したり、ペットを飼える環境を整えるといったサービスの充実が、入居者にとっての付加価値となり、家賃アップの要因となります。
また、セキュリティの強化や、収納スペースを増やすなど、入居者にとっての利便性を高める設備投資を行うことで、家賃の増加が見込めます。特に、現代では高速インターネットや防犯設備が必須となっており、これらを導入することで、物件の競争力を高め、安定した収益を得ることができるでしょう。
管理会社に賃貸管理を委託せず、自主管理を行うことで、管理委託料を節約することが可能です。しかし、自主管理には時間や手間がかかるため、入居者とのコミュニケーションやトラブル対応、さらには家賃の滞納リスクに対して自ら対応しなければならないという負担も伴います。そのため、節約できる金額と自身の労力を天秤にかけて慎重に判断する必要があります。
マンション経営を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを抑えて、長期的に安定した賃貸経営を実現しましょう。
物件が立地する地域の賃貸ニーズをしっかりと把握することが大切です。例えば、ファミリー層が多い地域であれば、広めの間取りや子育てに配慮した設備が求められます。一方、単身者が多い地域では、コンパクトで利便性の高い物件が好まれることが多くなります。
賃貸経営には、さまざまな経費が発生します。管理費、修繕積立金、税金、保険料、修繕費など、経費を正確に理解し、計画的に支出を管理することが重要です。費用対効果を考え、無駄な経費を抑えながら賃貸経営を行いましょう。
賃貸管理を任せる不動産会社の選定は、賃貸経営の成否に大きな影響を与えます。信頼できる不動産会社を選ぶことで、空室対策や家賃の回収、トラブル対応など、賃貸経営をスムーズに進めることが可能です。
定期的に物件の賃料査定を行い、現在の市場相場に合った賃料を確認しましょう。賃料を見直すことで、空室リスクを減らし、物件の稼働率を高めることができます。
マンションを貸し続けることで、安定した家賃収入を得られる場合、賃貸に出す選択肢が適しています。
また、ローンが残っている場合や、将来的に物件を売却したくない場合も、貸し出しを選ぶメリットがあるでしょう。
将来的に自分や家族がそのマンションに戻りたいと考えている場合、貸し出すことが適しています。再び住むためには、物件を手放さない選択が重要です。
マンションのローンが残っている場合は、家賃収入でローン返済を続ける選択が合理的です。ローン返済中に売却する場合は、売却益だけではローンの残債を返済できないこともあります。
賃貸需要の高いエリアにある場合、空室リスクが少なく、安定した家賃収入が期待できるため、貸し出すことが有利です。例えば、駅に近い物件や大学周辺の物件は、入居者が途絶える可能性が低いです。
地価が安定しているエリアであれば、資産価値の維持が見込めるため、長期的な賃貸運用を行うことで安定した利益を得ることができます。
物件に対して強い愛着がある場合や、家族の将来のために資産として残したい場合は、売却せずに貸し出すことを検討するべきです。
将来的にそのマンションに住む予定が全くない場合、維持コストや管理の手間を考慮して売却する方が、メリットがあります。
急にまとまった資金が必要になった場合、マンションを売却することで資金を得ることができます。賃貸では長期的な収益が見込めるものの、一度に大きな資金を手にすることは難しいです。
管理費、修繕費、固定資産税など、マンションの維持には毎年一定のコストがかかります。こうしたランニングコストを支払い続けるのが負担になる場合は、売却を検討するのが賢明です。
入居者の募集やトラブル対応など、賃貸経営には時間と労力がかかります。こうした管理業務を避けたい場合、売却して物件から手を離す方が楽になるでしょう。
周辺環境の悪化や地価の下落が予想される場合は、マンションの価値が下がる前に売却することが得策です。特に築年数が経過している場合、修繕コストが高くなるため、早めに売却することを検討しましょう。
マンションを賃貸に出す際には、家賃収入だけでなく、発生する経費や税金についても十分に考慮する必要があります。適切な手取り額を把握し、賃貸経営を成功させるための工夫を取り入れることで、安定した収益を得ることが可能です。
また、信頼できる管理会社との連携や、物件に付加価値をつけることもマンションを貸したときに手取り額を増やす重要な要素です。また、「貸す」か「売る」かは、状況に応じて見極め、最適な選択を行いましょう。
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