マンションの売却には3~6ヶ月程度の時間がかかるため、最初に全体の流を把握しておくことが望ましいです。
マンションを含め不動産の売買では、売買契約日と引渡日が異なる点が最大の特徴となります。
一般的な買い物とはお金の流れが異なりますので、お金の流れも知っておく必要があります。
マンション売却は、どのように進めて行けば良いのでしょうか。
この記事では、マンション売却の全体の流れについて解説します。
お金の流れに関しては、「買主と売買契約書を締結する」と「引渡を行う・ローンを一括返済する」で重点的に紹介します。
マンション売却では、買主へ引き渡す書類や所有権移転のために必要な書類が存在します。
書類は引渡時に必要となりますので、あらかじめ書類の有無を確認しておくことが望ましいといえます。
マンション売却に必要な書類を示すと、下表の通りです。
必要とする場面 | 書類名 |
---|---|
買主へ引き渡す書類 (無くても売買は可能) |
|
登記に必要な書類 |
|
上表の登記に必要な書類のうち、印鑑証明書だけ引渡時の3ヶ月以内に発行のものという制限があります。
印鑑証明書は、早く取り過ぎてしまうと有効期限切れとなってしまいますので、引渡日が近づいたら取得することをおすすめします。
中古マンションは、いくらで売りに出すかを決める必要があります。
売り出し価格を決めるために、まずは査定依頼をすることが通常です。
査定価格は、売却を確約する価格ではなく、あくまでも不動産会社が考える売却予想価格となります。
査定は、工事を依頼するときの見積もりと似ています。
施工会社に見積もりを依頼することが無料のように、不動産会社に査定を依頼することも無料です。
工事の見積もりが高ければ断れるのと同様に、査定価格に納得がいかなければ依頼を断っても構いません。
査定を依頼したからといって、必ず売却活動まで依頼しなければならないわけではないため、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果を比較した上で不動産会社を決める人が多いです。
不動産会社への査定は、賃料査定を依頼することもできます。
賃料査定とは、いくらで貸せるかという賃料を査定することです。
売却だけでなく、賃貸も興味がある方は、賃料査定も同時に依頼することをおすすめします。
賃貸に出すことに強い興味をお持ちの方は、管理実績が豊富な不動産会社にも査定を依頼することが望ましいです。
管理実績が豊富な不動産会社は賃貸仲介にも強いことが多く、空室が発生してもすぐに次の入居者を決めてくれる傾向があります。
賃料査定は無料です。貸し出す際の賃料が気になるようでしたら比較するためにも、賃料査定をしてみてはいかがでしょうか。
売却を依頼したい不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に対して依頼する仲介の契約のことです。
不動産会社には最終的に仲介手数料を支払うことになりますが、媒介契約を締結しただけでは仲介手数料は生じません。
理由としては、仲介手数料は成功報酬だからです。
媒介契約には、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
一般媒介契約とは、同時に複数の不動産会社に売却を依頼できる契約のことです。
専任媒介契約と専属専任媒介契約は、1社だけにしか依頼できない契約になります。
さらに専属専任媒介契約では、売主が自分で買主を見つけてくる行為が禁止されています。
どの媒介契約を選ぶかは、売主の自由になります。
都市部の条件の良い物件の場合、一般媒介契約で複数社に依頼すると、不動産会社間に競争原理が発生することから早く売れることが多いです。
一方で、買い替えを行う人は、専任媒介契約や専属専任媒介契約で1社に依頼した方が売却物件と購入物件のスケジュールを調整しやすいといえます。
媒介契約の締結と前後して、部屋の片づけも行います。
部屋の片づけが必要な理由は、写真を撮るためと購入希望者に家の中を見せるためです。
売却物件は、インターネットに広告写真を掲示します。
部屋の中の写真は、極力、全部屋を掲出することが望ましいです。
写真を撮っても良いように、部屋の中を片付けておきます。
また、販売活動を開始すると、購入希望者に家の中を見せる内覧も行うことになります。
いつでも内覧対応ができるように、一度、部屋の中を大掃除しておくことが良いといえます。
なお、売主によっては、掃除会社によるハウスクリーニングを利用する人も多いです。
ハウスクリーニングを行うのであれば、不動産会社と媒介契約締結後に行うことをおすすめします。
媒介契約締結後にハウスクリーニングを行えば、その支出を売却後の税金を計算する上で費用として計上することができます。
また、査定を依頼する前にハウスクリーニングを行っても、基本的に査定価格に影響することはありません。
不動産会社は掃除の有無によって価格を変えないことが一般的です。
そのため、ハウスクリーニングは、媒介契約締結後、かつ、写真撮影や内覧の前に行うことが効果的といえます。
売却活動を開始するにあたっては、売り出し価格を決定する必要があります。
売り出し価格をいくらにするかは、売主の自由です。
査定価格をそのまま売り出し価格にしても構いませんし、査定価格よりもやや高い金額を設定しても構いません。
ただし、査定価格よりも高い金額を設定すると、なかなか売れず売却期間が長期化する懸念があります。
そのため、時間に余裕がある人は、チャレンジ価格として高めの売り出し価格を設定してみるのも一つです。
高めの価格で売り出す場合には、売れない価格にならないように不動産会社と相談しながら価格を決定することをおすすめします。
媒介契約を締結すると、不動産会社から付帯設備表と告知書の記載を求められます。
付帯設備表とは、設備の有無や不具合について記載した書面のことです。
告知書とは、物件自体や周辺環境等の不具合について記載した書面になります。
売主は、付帯設備表と告知書に正直に記載する必要があります。
不具合を隠したまま売ると、売主は売却後に契約不適合責任を問われる恐れがあるからです。
契約不適合責任とは、契約の目的と異なるものを売った場合、買主から修補請求(修繕の請求のこと)や契約解除、損害賠償等の責任追及がなされる売主責任のことです。
契約不適合責任を回避するために、買主の了解を得た上で不具合を売買契約に記載し、契約不適合責任を免責しておく必要があります。
付帯設備表と告知書は、売主に契約不適合責任が及ばないようにする売買契約書を作成するために重要な資料です。
不明な点があれば、不動産会社と相談しながら記載することが望ましいといえます。
インターネットに広告を掲載すると、購入希望者からの反応が現れ、内覧の希望が出始めます。
住みながらマンションを売る場合には、売主も内覧対応を行うことが必要です。
空き家で売る場合には、内覧は不動産会社に任せることができます。
住みながらの売却では、内覧の日程調整が生じます。
日程調整自体は不動産会社が行いますが、売主としては極力、内覧に対応できるように予定を開けておくことが望ましいです。
内覧は土日に集中しやすいため、売却が決まるまでは土日に予定は入れないことをおすすめします。
内覧の結果、物件を購入したい人が現れると、その人から買付証明書を受領します。
買付証明書とは、購入希望者の購入の意思を正式に示す書面のことです。
買付証明書は購入希望者の一方的な意思表示を示しただけの書面ですので、買付証明書を受領しただけでは売買は成立しません。
売買が成立するには、あくまでも売主の承諾が必要です。
買付証明書には、購入希望価格が記載されています。
購入希望価格は、売り出し価格よりも低く記載されていることもあります。
購入希望価格が売り出し価格よりも低いということは、買主が値引き交渉をしているということです。
売主の許容範囲外であれば、申出を却下することもできます。
買付証明書が特に問題なければ、買主と売買契約を締結し、ようやく売買が成立します。
売買契約では、引渡時にいくらで売るということを書面で締結します。
引渡は売買契約から約1ヶ月後に行うことが一般的です。
マンションの所有権が買主へ移転するのは、引渡時です。
売買代金も、引渡時に受領することになります。
ただし、売買契約では、契約が成立した証として買主から手付金を受領します。
手付金は売買代金の10%程度が相場です。
手付金は、何も問題がなければ引渡に売買代金に充当されます。
不動産の売買では、売買契約から引渡まで1ヶ月程度の時間が空きますので、その間にお互いキャンセルをする可能性もあります。
そこで、手付金は契約解除時の違約金の役割も果たしています。
買主から契約を解除するには手付金を放棄し、売主から契約を解除するには手付金の倍額を買主に返還することで契約を解除できるようになっているのです。
また、売主は売買契約時に不動産会社に対して仲介手数料の支払いも発生します。
売買契約時に不動産会社へ支払う仲介手数料は、仲介手数料の50%です。
残りの50%は、引渡時に支払うことになります。
住みながらマンションを売却する場合は、引渡の前に引っ越しをすることが原則です。
引渡は、空き家の状態で行うことになります。
売買契約後、特に何も問題が発生しなければ、無事、引渡を行うことになります。
お金に関しては、引渡当日に大きく動きます。
引渡日は、買主が手付金を除く残代金を売主へ支払います。
住宅ローンが残っているマンションを売る場合、抵当権を抹消することが必要です。
抵当権とは、銀行等の債権者がその担保目的物から優先的に弁済を受けられる権利のことを指します。
抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済することが必要です。
引渡日には、買主から入金された残代金のうち、住宅ローンの残債をそのまま銀行に返済することで住宅ローンの完済も行います。
住宅ローンの完済が確認できたら、抵当権の抹消手続きも行います。
また、引渡日は、精算行為も行われます。
精算行為とは、引渡日以降に生じる継続的な金銭の負担を買主に移転する行為のことです。
マンションの売却では、固定資産税と都市計画税、管理費および修繕積立金の精算が行われることが一般的となっています。
固定資産税と都市計画税については、当該年の引渡日以降に生じる固定資産税等の金額が買主から売主へ支払われます。
管理費および修繕積立金については、売主が前払いした当月分の引渡日以降に生じる管理費と修繕積立金が買主から売主へ支払われることになります。
さらに、売主は残りの仲介手数料を不動産会社に支払うことが必要です。
買主の代金支払いや売主のローンの完済、精算行為、書類と鍵の引渡等が終了したら、引渡は完了します。
マンションの売却後、必要があれば確定申告を行います。
確定申告の時期は、売却の翌年の2月16日から3月15日までの間です。
確定申告は、以下のような場合に必要となります。
【確定申告が必要なケース】
税金が発生するケースとは、売却によって原則として譲渡所得と呼ばれる売却益が生じた場合です。
譲渡所得が発生しても、税金の特例を利用すると税金が発生しない場合もあります。
ただし、税金が発生しなくても、税金の特例を利用する場合には、確定申告は必要です。
また、マンションの売却では譲渡損失と呼ばれる売却損が発生したときも利用できる税金の特例ありますが、譲渡損失のための税金の特例を利用する場合も確定申告は必要となります。
一方で、マンションを売却しても、税金が発生せず、かつ、特例も利用しない場合には、確定申告は不要です。
以上、マンション売却の流れについて解説してきました。
全体の流れとしては、「売却に必要な書類の有無の確認」から始まり、「必要があれば確定申告を行う」までの12の手順がありました。
マンションを賃貸に出すことも検討したい方は、査定時に賃料査定も依頼することをおすすめします。
売却後の確定申告は必要な場合と不要な場合がありますので、必要となる場合には忘れずに行っていただければと思います。
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