仲介手数料は、マンション売却の費用の中で最も高い支出となります。
マンション売却で必要な費用は、まずは仲介手数料から把握することが望ましいです。
マンション売却に必要な手数料やその他の費用は、どれくらいかかるのでしょうか。
この記事では「マンション売却の手数料」について解説します。
最初にマンション売却の仲介手数料について解説します。
不動産会社(宅地建物取引業者)には、売買の仲介において依頼者から受領できる仲介手数料の上限額が定められています。
仲介手数料の上限額は、取引額によって計算方法が異なります。
取引額と仲介手数料の計算式は、以下の通りです。
取引額 | 仲介手数料(別途消費税) |
---|---|
200万円以下 | 取引額 × 5% |
200万円超から400万円以下 | 取引額 × 4% + 2万円 |
400万円超 | 取引額 × 3% + 6万円 |
仲介手数料には、別途消費税が発生します。
例えば、中古マンションの価格が4,500万円の場合、取引額は400万円超となるため、仲介手数料は以下のように計算されます。
仲介手数料 = 4,500万円 × 3% + 6万円
= 135万円 + 6万円
= 141万円
税込仲介手数料 = 141万円 × (1 + 消費税率10%)
= 155.1万円
仲介手数料の相場は、上限額がそのまま相場となっていることが一般的です。
仲介手数料は、マンションの価格に連動します。
首都圏における中古マンションの相場を元に仲介手数料の上限額を示すと、下表の通りです。
都道府県 | 中古マンション価格 | 仲介手数料(別途消費税) |
---|---|---|
東京都 | 5,892万円 | 182.76万円 |
埼玉県 | 3,052万円 | 97.56万円 |
千葉県 | 2,667万円 | 86.01万円 |
神奈川県 | 3,950万円 | 124.5万円 |
中古マンションの価格は「Market Watch 2023(令和5)年12月度」[公益財団法人東日本不動産流通機構]より2023年12月の平均価格を採用
仲介手数料の支払いのタイミングは、売買契約時に50%、引渡時に50%を支払うことが通常です。
不動産会社が受領する仲介手数料は、成功報酬となっています。
そのため、単に不動産会社と仲介の契約(媒介契約という)を締結しただけでは仲介手数料は発生しません。
買主が決まり、売買契約が成立した時点ではじめて不動産会社に仲介手数料の請求権が生じます。
不動産の売買では、売買契約日と引渡日を1ヶ月程度空けることが一般的です。
売買契約後も、引渡までは不動産会社に取引を進めるために尽力してもらう必要があります。
そのため、売買契約が成立したとしても仲介手数料を100%支払うことは少なく、売買契約時点では50%を支払い、残りの50%は引渡時まで留保することが商習慣となっています。
この章では、マンション売却の税金と費用について解説します。
マンションの売却では、売買契約書が印紙を貼らなければならない課税文書であるため、印紙税が生じます。
印紙税は、売買契約書に記載する売買代金によって異なり、その金額は下表の通りです。
売買契約書に記載する売買代金 | 本則 | 軽減税率※ |
---|---|---|
1万円未満 | 200円 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
金額の記載のないもの | 200円 | 200円 |
※2014年4月1日~2027年3月31日まで
なお、不動産取引において2022年5月から電子取引が解禁されています。
電子取引を採用した場合には、印紙税は不要です。
住宅ローンが残っているマンションを売却する場合は、抵当権抹消費用が発生します。
抵当権とは、銀行等の債権者がその担保目的物から優先的に弁済を受けられる権利のことです。
抵当権の抹消には、抵当権抹消の登録免許税と司法書士手数料の2つが発生します。
抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
マンションは通常、土地1個、建物1個の不動産で構成されているため、抵当権抹消の登録免許税は2,000円となるケースが一般的となります。
司法書士手数料は、依頼する司法書士や地域によっても異なります。
抵当権抹消のための司法書士手数料は、1~3万円程度が相場です。
マンション売却では、譲渡所得が生じると所得税および住民税、復興特別所得税の税金が発生します。
譲渡所得とは売却益のことであり、以下の式でします。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
譲渡価額は、基本的には売却価額になります。
取得費は、土地は購入額、建物は購入額から減価償却費を控除したものです。
譲渡費用は、仲介手数料や印紙税が該当します。
税金は、譲渡所得に税率を乗じて求めます。
税金 = 譲渡所得 × 税率
税率には、長期譲渡所得と短期譲渡所得の2種類があります。
長期譲渡所得とは売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超、短期譲渡所得とは売却する年の1月1日時点において所有期間が5年以下のときの税率です。
それぞれの税率は下表のようになります。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% |
復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。
所得税と住民税、復興特別所得税の税率を合算し、単純に譲渡所得に乗じて税額を計算できるようにした税率は、下表の通りです。
所得の種類 | 合計税率 |
---|---|
短期譲渡所得 | 39.63% |
長期譲渡所得 | 20.315% |
住宅ローンが残っているマンションを売却する場合は、ローン残債は引渡時に一括返済します。
ローンを一括返済する際は、金融機関へ一括返済手数料を支払うことが必要です。
一括返済手数料は、金融機関の窓口申込で税込3.3~5.5万円程度が相場となります。
引渡では、印鑑証明書や住民票、固定資産評価証明書といった市区町村から取得する証明書類が必要となります。
自治体にもよりますが、各種証明書類の取得費用は以下のような金額が一般的です。
証明書類 | 相場 |
---|---|
印鑑証明書 | 300円 |
住民票 | 300円 |
固定資産評価証明書 | 1個あたり300~400円 |
現在住んでいるマンションを売却する場合、引っ越し代も発生します。
引っ越し代は、人数や距離、トラックの台数、繁忙期か否か、大手か否か等によって異なります。
例えば、3人家族であれば通常で50km未満の引越しであれば10万円前後が相場です。
3月~4月にかけては2倍程度、春休みや年度の切り替わりと重なる3月後半~4月前半では3倍程度の値段になってしまう場合もあります。
この章では、以下の条件を元にマンション売却の費用のシミュレーションを解説します。
【条件】
売却金額:4,500万円(譲渡価額も4,500万円とする)
取得費:4,000万円
譲渡費用:142万円
所有期間:8年(長期譲渡所得の税率20.315%を適用)
【費用のシミュレーション】※簡略化のため消費税は考慮外とします。
・仲介手数料
4,500万円 × 3% + 6万円
= 135万円 + 6万円
= 141万円
・印紙税は、売却金額が1,000万円超5,000万円以下なので1万円
・抵当権抹消の登録免許税は0.2万円。
・抵当権抹消の司法書士手数料は2万円。
・ローン事務手数料は3万円。
・各種証明書類の取得費用は0.1万円。
・引っ越し代は20万円。
・税金は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
= 4,500万円 - 4,000万円 - 142万円
= 358万円
譲渡所得にかかる税金 = 358万円 × 20.315%
≒ 72.7万円
全ての費用を示すと、下表のようになります。
項目 | 金額 |
---|---|
仲介手数料 | 141万円 |
印紙税 | 1万円 |
抵当権抹消費用 | 2.2万円 |
ローン事務手数料 | 3万円 |
各種証明書類の取得費用 | 0.1万円 |
引っ越し代 | 20万円 |
譲渡所得にかかる税金 | 72.7万円 |
合計 | 240万円 |
ハウスクリーニングを行う場合は、部屋の広さに応じて費用が異なります。
譲渡所得にかかる税金に関しては、発生しないこともよくあります。
購入時よりもマンション価格が下がっており、譲渡所得がマイナスと計算される場合には、売却時に税金は生じません。
また、マイホームの売却であれば3,000万円特別控除と呼ばれる節税特例も利用できます。
3,000万円特別控除とは、以下の式のように譲渡所得から3,000万円を控除できる特例のことです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円
3,000万円特別控除を適用した結果、譲渡所得がゼロ円(マイナスの場合もゼロ円となる)となれば、税金は生じません。
なお、買い替えをする場合において、購入物件で住宅ローン控除を利用する場合には、売却物件では同時に3,000万円特別控除を併用できないという決まりがあります。
購入物件で住宅ローン控除を使うか、売却物件で3,000万円特別控除を使うかについては、いずれか有利な方を選択することになります。
不動産会社によっては、売主の仲介手数料を無料もしくは半額にしている会社も存在します。
仲介手数料を無料等とするサービスを提供している不動産会社が存在する理由は、戦略的に売主の顧客を獲得しやすくするためです。
仲介手数料を無料等にしている会社は、買主だけから仲介手数料を取ることで利益を得ています。
不動産の仲介には、両手仲介と片手仲介があります。
両手仲介とは、売主と買主の両方を仲介することです。
それに対して、片手仲介は売主もしくは買主の一方だけを仲介することを指します。
不動産会社にとって仲介のビジネスは、売主を顧客とすることで確実に手数料を得られるようになっています。
例えば、売主から売却を依頼され、両手仲介を行えば売主からも買主からも仲介手数料を受領することが可能です。
片手仲介になったとしても、売主が顧客となっていれば少なくとも売主からは仲介手数料を得ることができます。
このように売主を顧客にすれば、不動産会社は仲介手数料を両方もしくは片方から得ることができるのです。
一方で、買主から購入を依頼された場合、不動産会社にとって顧客は買主だけとなります。
不動産会社は買主の希望に合った物件を探すことになりますが、売主側に別の不動産会社が付いていれば片手仲介となってしまいます。
さらに、買主の希望に合った物件を探すことができなければ、仲介手数料はもらえません。
このように買主を顧客にすることは、不動産会社は良くて片手仲介しかできませんし、あるいは仲介手数料を全くもらえないこともあるのです。
このように不動産会社にとっては、買主を顧客とするよりも売主を顧客としたほうが価値は高く、売主を顧客にすることで収益を得られるようになります。
そのため、営業戦略として売主の仲介手数料を無料にしてでも、売主を獲得する不動産会社が存在するのです。
ただし、売主に対して仲介手数料を無料等にする会社は創業したての会社や実績の少ない会社が多い傾向にあります。
新規に売買仲介ビジネスに参入してきた不動産会社が多く、実績を増やすために仲介手数料を無料にすることで売主を獲得する戦略を取っています。
マンション売却は、実績が豊富な不動産会社に依頼した方がトラブルも少なく、スムーズに売れる可能性が高くなります。
そのため、仲介手数料を無料と謳っている会社に依頼する場合には、その会社の社歴や実績を確認した上で依頼することが望ましいです。
しかしながら、実際には仲介手数料の値引きは難しい傾向があります。
不動産会社は手数料を取り損なうリスクを抱えながら商売を行っているため、値引きには応じないスタンスを取っている会社が多いです。
買主が決まった後に仲介手数料の値引き交渉をしても、成功することはほとんどないと思われます。
一方で、不動産会社の中にははじめから仲介手数料を無料や半額にしている会社もあります。
難しい値引き交渉をするくらいであれば、最初から無料や半額を謳っている会社に依頼した方が仲介手数料は削減しやすいといえます。
以上、マンション売却の手数料について解説してきました。
マンション売却では、取引額が400万円超になると仲介手数料の上限額は「取引額×3%+6万円」(別途消費税)で計算されます。
仲介手数料の相場は、上限額となることが一般的です。
マンション売却では、仲介手数料の他に、印紙税や抵当権抹消費用、ローン事務手数料等の費用も生じます。
仲介手数料はマンション売却の中で最大の費用となるため、あらかじめ見込んでおくことをおすすめします。
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