近年、人口減少などの社会的要因もあり、放置されたままの空き家が社会問題になっています。空き家のままにしておくことのリスク、空き家になった実家をどうするか、空き家になる前にできることは何があるか、空き家となった場合の対策について解説します。
実家を空き家として管理・維持することは簡単ではなく、様々なリスクが考えられます。ここでは実家を空き家として管理、維持する時に考えられる代表的な次の3つのリスクをご紹介します。
空き家となっている場合でも、税金の支払いや空き家を維持管理していくための費用がかかるリスクがあります。
人が住んでおらず、空き家の状態であっても、固定資産税や都市計画税はかかり続けます。この場合に支払義務が課されるのは、不動産の所有者です。毎年1月1日時点の所有者に対して、固定資産税や都市計画税が課されます。
空き家から離れている場所に住んでいるなど、自分で空き家を管理することができない場合は、空き家管理サービスの利用も考えられます。空き家管理サービスにかかる費用は数千円~1万円程度と幅があり、提供されるサービスの内容によって異なります。空き家の状態を外から確認するだけのものから、室内に立ち入り、換気や通水、清掃を行うものまであります。
2015年より施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、倒壊等の恐れがある一定の空き家を行政が「特定空家」として指定し、助言や指導などを行えるようになりました。また、2023年の改正により放置すれば特定空家になるおそれのある空家は「管理不全空家」とされ、指導や勧告を行うことができるようになりました。これらに指定されると、税制優遇を受けられなくなる場合や、行政からの命令に従わない場合には、最大50万円の罰金が課せられる可能性もあります。
空き家のまま放置していると、室内は密閉された状態となり、家は劣化します。通水なども行われないため、配管や設備などが傷んでしまうのです。また、台風などによって古くなった建物の一部が破損して通行人に怪我をさせた場合、加害責任を問われることもあります。家に住んでいなくても所有者として、責任を問われますので注意が必要です。ほかにも、戸建の場合は雑草や庭木が伸びて景観を悪くしたり、害虫や害獣の発生、不法侵入や放火といった犯罪に繋がり、近隣にも迷惑をかけてしまいます。
空き家にしておくと前述したようなリスクがあり、倒壊など事故が起こった後では手間や費用も余計に掛かります。空き家のまま放置しないことで先々の不安も軽減され、近隣への迷惑や負担となるようなことも防ぐことができます。
ここでは、空き家にしないために次の3つの方法と判断基準を解説します。
売却が選択肢となる状況は、実家が不要な場合です。しかし、空き家になった実家が売れない理由として、築年数が古いことが多く挙げられています。
築20年以上の物件は、不動産市場的に売却の難易度が上がる傾向にあります。木造建物の場合、法定耐用年数が22年であることや住宅ローン控除の適用条件として築20年以内であることが、理由の1つです。時間の経過とともに空き家は劣化していきますので、売却を検討している場合は早めに着手しましょう。
売却の最も大きなメリットは、現金化できることです。用途の限られている不動産を使途が自由な現金に換えることで、将来に備えることもでき、金銭的なゆとりができます。
また、固定資産税などの費用負担から解放されるというメリットもあります。
売却によって、思い出の詰まった実家を手放すこととなります。基本的に買い戻すことは難しく、実家に戻ることはできません。
他人に住んでほしくないけれど、遠隔地に住んでいるので自分たちでは管理できないと考えている場合は、専門業者に委託するのがおすすめです。また仕事が忙しいなどの理由で、定期的な空き家の管理を行うことが難しい場合にも適しています。
自分で空き家管理を行う必要がないため、実家が遠い場合や仕事などで忙しい場合でも、定期的な管理を行うことができます。また、プロに管理を任せることができるので、適切な空き家管理を行えます。
自分で管理する手間を減らすことができるかわりに、費用がかかります。毎月の費用は数千円~1万円程度ですが、年間、数年単位で見れば大きな負担金額となるでしょう。
空き家管理サービスを専門に行っている業者を探すことをおすすめします。その中でも、各サービスの特徴を比較し強み弱みを理解し、必要としているサービス内容と費用のバランスを見ながら検討していくとよいでしょう。
「いつかは実家に住みたい」「有効活用して収入に変えたい」「思い出のある実家を残したい」「子供に譲りたい」と考えている場合は賃貸がおすすめです。また、汎用性が大きいのも特徴です。
賃貸のメリットは、空き家となっている実家を資産として有効活用し、利益を生み出すことができる点です。実家の維持管理を入居者に任せることができ、家賃収入は修繕費用や取壊し費用に充てることができます。
賃貸中は自由に実家に出入りすることはできなくなります。また、一般的な契約方法である普通借家契約の方が借り手は見つけやすくなりますが、貸主から解約することは難しくなります。
空き家となった実家を将来利用する予定がある場合は、契約方法に注意が必要です。一般的に用いられる普通借家契約では、基本的に借主が希望する限り契約を更新し続けることができ、貸主からの解約には正当事由と呼ばれる理由が必要となります。しかし、定期借家契約を用いることで、あらかじめ定めた期間のみを賃貸期間とすることができ、期間満了をもって賃貸契約は終了します。この定期借家契約は1年未満でも契約が可能なため、短期間の場合でも仮住まいといったニーズを見つけられる可能性があります。
以上、一般的に多くの方に選ばれる代表的なものを3つ挙げました。現在の状況や将来の利用予定を踏まえて検討しましょう。
空き家のまま放置しておくことのリスクが想像以上に大きいことは、お分かりいただけたと思います。また、空き家となった場合の対応についてもご紹介いたしました。ここでは「空き家になったらどうする?」と考えている方に、実家を空き家にしないための事前の対策や利用できる制度をご紹介します。
いずれ空き家となってしまう可能性のある実家をどうするかについて、親が元気なうちに家族で話し合っておきましょう。親が住まなくなったあとも実家を維持していきたい希望がある場合は、相続の手続きについて確認し、あらかじめ後見人や相続人を決めておくとよいでしょう。相続などの法的手続きにおいては、個人で対応することが難しい場合もあります。FPや税理士などの専門家にも相談してみましょう。
実家にある荷物についても、少しずつ整理を行っていきましょう。親が元気なうちに整理を行っておけば、亡くなったあとの遺品をどのように扱ってほしいのかなど、親の意向を聞きながら進められ、残された家族への負担も軽減できます。
空き家に関する制度については、以下の2種類があります。
国や地方自治体が空き家を有効活用してもらうために、税制優遇や補助金を設定していることがあります。自治体によって内容は異なりますが、空き家の耐震改修工事に対する助成金や地域活性化施設として活用するための改修工事費用の補助などがあります。
一方で、空き家をきちんと管理していない場合は、行政より指導等が行われ、状況によっては税制優遇を受けられなくなることがあります。
事業用または居住用として使用されている宅地については、固定資産税および都市計画税を減額する「小規模宅地等の特例」があります。この特例では、固定資産税は1/6、都市計画税は1/3まで減額される税制優遇が適用されています。しかし、適切な空き家の管理ができておらず、行政から勧告処分を受けた場合、この税制優遇が受けられません。
空き家についてどうするか迷った場合は「将来使うかどうか」「空き家の維持についてかかる費用」について考えてみましょう。実家を相続した場合、そこに住まずに空き家の状態であったとしても、家を管理していくためには費用がかかります。しばらく使う予定がない場合は使うときがくるまで貸し出して収入を得る、まったく使う予定がない場合は手放すことも考えられるでしょう。実家を処分する場合でも費用がかかりますので、それぞれ試算して最適な方法を選択してください。
実家を空き家にしないためには、親が元気なうちに実家をどうするかについて話し合ったり、実家の整理を行ったり、事前に準備しておくことが大切です。
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