放置されたままの空き家が増えると、さまざまなトラブルが起きる可能性があります。空き家によるトラブルを回避するために、自治体が空き家の所有者に対して罰則を科す内容も含めた法律ができました。これが「空家対策特別措置法」です。空家対策特別措置法の施行により、空き家の所有者は建物の管理を無視できなくなりました。2023年には一部が改正され、これまでよりも厳しい措置が取られるようになりました。
空き家を放置しておくと、固定資産税が現状の6倍になるリスクもあります。既に自治体から何かしらの通知が届いた人、これから届いてしまうかも知れない人も、持ち家があれば「空家対策特別措置法」についての理解を深めておいた方がよいでしょう。
管理されずに放置された空き家は、老朽化によって倒壊のリスクが高くなります。また、放火されるリスクも高くなり、害虫や野生生物の住処となってしまう可能性もあるなど、周囲を巻き込んでトラブルを引き起こします。それらを抑止するために「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)」が2015年5月に施行され、2023年12月13日には一部が改正されました。
トラブルに繋がりそうな空き家の持ち主には、自治体からの指導や勧告といった対応が段階的に行われます。そして、それらに応じない場合は罰則が科されたり、建物が強制的に取り壊されたりする可能性が生じるようになりました。
空家対策特別措置法では、自治体の長に以下のような権限を認めています。
これまで、自治体は空き家があっても、所有者の許可なく中に入ることはできませんでした。しかし、空家対策特別措置法の施行によって、自治体は対策の対象となる空き家に所有者の許可なく立ち入り、調査を行えるようになったのです。そして調査の結果、特定空家に指定されると、次のような措置が取られます。
特定空家とは、次の状態にあると認められる空家のことを指します。
2023年の改正によって、特定空家に加えて、放置すれば特定空家になるおそれのある空家を「管理不全空家」とし、市区町村が指導や勧告を行うことができるようになりました。
1.調査
近隣住民からの苦情や通報を受けると自治体は空き家の調査を開始します。
2.特定空家に指定
調査の結果、著しく倒壊などのリスクが高い、著しく衛生上有害となる恐れがあるなど、特定空家の定義に該当した空き家を特定空家に指定します。放置すれば特定空家になるおそれのある空家は「管理不全空家」とされ、特定空家と同様に、空き家を適切に管理させるための措置を行います。
3.助言または指導
まず、所有者に対し行政から助言や指導が行われます。法的拘束力は持たないものの助言や指導に対応しない場合は、勧告を受けることとなります。
4.勧告
助言や指導によって改善が見られない場合、相当の猶予期間を設けたうえで必要な措置を取るよう所有者に勧告が行われます。勧告を受けた場合、固定資産税の優遇措置が受けられなくなります。「管理不全空家」であっても適用されます。
5.命令
勧告に従わない場合は、相当の猶予期間を設けたうえで改善命令が出されます。
6.行政代執行
猶予期間の期限までに命令に従わず、建物に倒壊の恐れが高く、対応が急務である場合には行政が所有者に変わって解体などの必要な対策を講じます。解体等にかかった費用は所有者に請求されます。
※猶予期間は、特定空家の規模や措置の内容に応じて自治体が決定するものです。住んでいる市区町村によって設定される猶予期間は異なります。
・固定資産税が6倍になる可能性がある
住宅地は、住宅用地の特例により固定資産税・都市計画税の優遇措置を受けています。
小規模住宅用地の特例が適用されていると、土地部分の固定資産税評価額は以下のように軽減されます。
しかし、助言・指導に従わず、勧告を受けた場合は固定資産税・都市計画税の優遇措置が受けられなくなり、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍になります。(200㎡を超える部分に関しては、固定資産税は3倍、都市計画税は2倍になります。)
・罰金が科せられる
行政からの命令に従わなかった場合は、50万円以下の罰金が科せられます。
・空き家を解体され、費用を請求される
行政代執行が行われると所有者の意思に関わらず、自治体は強制的に空き家を解体し、その費用を全額所有者に請求します。支払いが行われない場合は所有者の自宅や車などを差し押さえ、公売によって費用が回収されます。
このように空家対策特別措置法の施行により、空き家を所有し、適切な管理をせずに放置している人は多大なリスクを背負うこととなります。空き家を所有している人は、特定空家に指定される前に所有している空き家の取り扱いについて考えた方がよいでしょう。
また、既に特定空家に指定されている場合、助言・指導、勧告、命令、行政代執行がなされる前には猶予期間が設けられています。猶予期間内に適切な対応を取れば、罰則を回避できる可能性もあります。できるだけ速やかに今後の空き家の取り扱いについて検討し、状況を改善するようにしましょう。
特定空き家に指定されると固定資産税が高くなったり、罰金を科せられたりするリスクがあります。空き家を所有している場合は、次のような対策を取るようにしましょう。
家や土地を利用する予定がない場合は、売却を検討するとよいでしょう。使用予定のない空き家を持っていても、景観の悪化や犯罪の発生など、周囲への悪影響を与える可能性があります。その間、管理費や税金の支払いも発生するので無駄な出費になります。使用できる状態の建物であればそのまま売却し、建物の傷みがひどいようであれば更地にして売却する方法があります。
建物の状態がそれほど悪くなく、家や土地を資産として所有しておきたい場合は、賃貸に出す方法もあります。賃貸に出すと人が生活するため、空き家ではなくなります。また、生活することで通気や換気、通水などが日常的に行われるため、建物や設備の老朽化が抑えられるほか、賃料収入も得られます。需要のあるエリアに空き家がある場合は、リフォームして賃貸物件として資産活用したらいかがでしょう。思わぬ利益をもたらす場合もあります。
今は誰も住んでいない空き家であっても、いずれ誰かが住む可能性がある場合には、あえて空き家のままで維持しておきたいケースもあるでしょう。その場合は、こまめに空き家を訪問して通気や換気を行ったり、庭の手入れを行ったりして、適切な管理が必要です。遠方に住んでいる場合で、自分での管理が難しい場合は空き家管理サービスなどを利用することも検討してみるとよいでしょう。
家は、時間の経過とともに古くなっていきます。特に人が住まない空き家は、老朽化のスピードが速くなると言われています。これまで特に何もする必要がなかったとしても、古くなるにつれて近隣への悪影響などが生じるリスクも高くなっていきます。
空家対策特別措置法の施行に伴い、空き家を所有している方は、売却をするか、賃貸に出すか、空き家を適切な状態で維持管理するかの選択を検討する必要があるでしょう。いずれの場合も、まずは専門の不動産会社に査定や見積もり、サービス説明の相談をするなどし、どの方法が最適なのかを検討してみることをおすすめします。
今回は、空家対策特別措置法の概要をご紹介しましたが、空家対策特別措置法のより詳しい内容はこちら。
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