築古の家は築浅に比べて不人気というのは事実としてあります。そのため、あえて更地にしてから売ったり貸したりするのがおすすめ、という声も聞かれます。
ただし、これはあくまで条件付きの話であることを意識しなくてはなりません。今回は、空き家を解体することのメリット・デメリット、空き家を貸す場合の注意点といったことをご紹介します。
建物を解体し更地にすることは、空き家が持つデメリットのいくつかを軽減や解消できるということにつながります。
放置された空き家には、景観・治安の悪化や犯罪リスクの増加といったデメリットがあります。これを回避するためには、ご自身や親族が定期的に空き家へ訪れて手入れをしたり、有料の空き家管理サービスなどを利用したりしなくてはなりません。
しかし、自ら行う空き家管理にかかる労力は小さくはなく、有料のサービスを利用する場合も、多少なり継続的なコストがかかってしまうものです。
特に利用の予定がない建物を解体して更地にすることは、これらのデメリットを払拭し、管理にかかる労力・コストを軽減するには有効な手段となり得ます。
「更地は建物がない分、資産としての価値が低下する」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実際には、空き家の状態が続いて人が住めないような築古の建物であれば、ほとんど資産としての価値が残っていないことも多く、売却時の査定で値段が付いているのは、土地の部分がほとんどと言えます。
賃貸で活用する場合も基本的な考え方は同じです。古くて住みづらい家は、入居者を見つけることが難しいです。
住居として貸し出すつもりであれば、一度解体してしまうと建て替えにはさらに高額な費用がかかりますが、家の状態や賃料への期待、資金の状況といったことによっては、解体も選択肢の一つとなります。
また、建物を解体することで住居以外の用途としての可能性が生まれ、もともとの建物に様々に手をかけて復旧によって借り手を募るよりも小さな手間や費用によって、残った土地の借り手を見つけられる可能性があります。
建物にあまり価値が残っておらず、将来の価値への期待などから、土地の方は手放したくないといった意向がある場合、更地になった土地は、整備して駐車場などに変えることもできますが、それ以外にも、そのままの状態で家を建てて住みたい人に借りてもらえるような可能性があります。
更地には収益を生み出すためのさまざまな活用法があります。たとえば以下のような用途が挙げられます。
需要に合った整備を行うことで、そのための土地探しをしている人が借り手となってくれます。活用方法を選ぶときは、準備がどれくらい大変か、管理がどれくらい大変か、それと特に重要なこととして、立地と相性が良いか、需要のこともよく考えなければなりません。
例えば、コインパーキング業者などに運営を一任して土地だけを貸すという場合は、初期費用も比較的少なく、手間もあまりかからなくて済むようなことが多いです。その代わりに、あまり高額な利益も期待できません。また、そもそもとして、駐車場としての需要がある場所でなければ高額どころか全く収益を見込めないといったこともあり得ます。
また、詳細は後述しますが、住居が建っていない土地は、固定資産税が居住用地(住居が建っている土地)に比べて高くなってしまいます。
税金の変化も含めた総合的な想定収支を概算し、どれくらいまでの手間なら対応できそうかについても検討して決めましょう。
住居が建っている土地から建物を解体して更地にする場合の代表的なデメリットとして、固定資産税が高くなってしまうことが挙げられます。
固定資産税がいくら課せられるかについては、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」というものが定められており、細かなことはここでは省きますが、住宅が建てられている敷地―住宅用地は、駐車場だけがある状態や更地などの状態で住宅が建てられていない敷地に比べて、課される固定資産税の額が最大で1/6まで抑えられています。住宅用地だった土地が住宅用地ではなくなってしまうと、固定資産税は6倍まで大きくなってしまうことがあるということです。
土地を更地などにしないで住宅を残す(あるいは建て替える)べきかどうかは、現在の固定資産税の額や、それが特例措置によってどの程度抑えられているのかを把握した上で判断した方が良いでしょう。解体費用だけでなく、税金の支払いが年間いくら増えるかを考慮に入れておかないと、オーナーは気づかないうちに損をしてしまう恐れがあります。
更地にせず古い家をそのまま貸したい場合は、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。「費用に関する注意点」と「契約に関する注意点」の2つにわけて説明します。
築古の物件だと、設備の寿命が近づいているようなことが多いかも知れません。設備ごとの耐用年数を把握し、ある程度賃貸中に発生し得るメンテナンスのコストを見込んでおくと安心です。賃貸管理会社に委託するような場合は、そうした不具合発生時のサポートや保証サービスについても業者選定の参考とするのが良さそうです。
また築古の物件では、賃貸募集に向けてどこにどれだけリフォームやハウスクリーニングの手を加えるかといった判断を要するポイントが多くなります。できるだけ予算が無駄にならないようにできないか、賃貸管理会社など知識や経験を持った業者に相談してみることをおすすめします。
普通借家契約という契約を結んで貸してしまうと、同様に用途変更のコントロールは難しくなってしまいます。売ったり、住んだり、取り壊したりといったことを再検討する機会を何年かおきといった間隔で設けたい場合は、定期借家契約という契約を用いることでそれが可能になります。
建物を取り壊して更地にして貸し出す場合も同様に注意が必要です。建物を建てる目的で土地を借りる借地人には30年間などの長期間で契約が有効となる借地権という権利が有効になるため、自身が住みたい場合など、土地のオーナーの都合で用途を変えることが難しくなってしまいます。
築古物件だと、貸せる状態を整えるための費用負担が大変といったことがあります。
当社(リロケーション・ジャパン)では「リロの空き家再生」という賃貸管理サービス提供しています。保証賃料3年分を一括前払いで受け取ることができ、賃貸のための初期投資費用を賄うことができます。また、最大5年間の賃貸期間の定期借家契約なので、将来使う予定の空き家の賃貸も可能です。
また、自治体によっては管理が行き届いていない空き家が増加しているという問題を解決するために、一定の基準と予算を設け、解体や撤去だけでなく、改修についても補助を行っている場合があります。もし検討中の内容に合った補助が見つかったなら活用しない手はありません。それによって空き家の賃貸運営にも新たな選択肢が見つかるかも知れません。物件がある自治体のWEBサイトを確認して、試しに問い合わせてみるなど、検討の際には少し調べておきましょう。
空き家を所有者が管理できていないのには、何らかの事情が考えられます。たとえば両親から受け継いだ実家に住んでいたものの、転勤などによってその地を離れなくてはならなくなってしまった場合などです。
もしもその家に戻る必要性がないのであれば、解体や売却を行ってしまうことも有力な選択肢でしょう。しかし、数年後には実家に戻りたい、受け継いできた実家を資産として残したいということであれば、古いからと言って、賃貸をあきらめるには早いかも知れません。
「築古の家を借りてくれる人なんているだろうか?」と思われる方も多いかも知れません。冒頭で述べた通り、一般論として新しい家の方が人気です。しかし、実際に貸せるか貸せないかを決めるのは、築年数だけではありません。一戸建ては未だに人気の居住形態であり、賃貸ニーズは決して少ないとは言えません。
マンションの場合も含め、エリアの需要をしっかりと把握し、需要に合わせたリフォームやリノベーションを行い、適正な賃料で募集することで、古めの物件でも賃貸を行えることは多々あります。
空き家の放置は勿体ないだけでなく大きなリスクです。そうしたときに建物を取り壊してしまうことで、問題を解決するための様々な選択肢が生まれます。
住宅用地ではなくなると固定資産税が上がってしまうことや、更地にするには解体費用がかかってしまうといったことも念頭に入れた上で収支を検討すると良いでしょう。
古くなった空き家を貸す場合、売却をしてしまった場合などと異なり、自己居住用などへ用途を後から変えられる可能性が残ります。改修(あるいは建て替え)工事には費用がかかるものの、予算が無駄にならないようにうまく行うことができれば、賃貸期間中の賃料について期待が持てるだけでなく、最終的には自分たちが帰ってくる家としての期待も持つことができ、単なる出費というよりは、“住まいへの投資”としても捉えることができます。
所有する不動産を将来的にどう活用したいかを十分に考えたうえで、解体なのかリフォーム・リノベーションなのかを検討しましょう。選択肢が多く難しい部分は、賃貸管理や売買を行う不動産会社に相談してみるのが答えへの近道かも知れません。
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