勤務先で急な転勤を言い渡された場合、今まで住んでいたマンションをどのように処理しようか悩むケースも多いでしょう。そのまま放っておくと空き家になってしまうため、売却しようと考える人も多いかもしれません。しかし、売却してしまうと、転勤が終わってから戻ってくる場所がなくなるだけでなく、趣味などに使う、家族や親戚を住まわせる、荷物を置くスペースにする、といった個別の用途で用いる選択肢も失ってしまいます。
将来的に再び住む可能性がある場合は、賃貸に出すことも検討するとよいでしょう。賃貸に出すことで、家賃収入を得ながらマンションという大きな資産を保有し続けることが可能です。ただし、住んでいたマンションを賃貸に出す際には、いくつかのポイントに注意しなければなりません。この記事では、6つのポイントについて解説しますので、後悔しないようしっかりとチェックしておきましょう。
住宅ローンの返済が残っている場合は、マンションを賃貸に出す前に、金融機関に相談することが大切です。住宅ローンは基本的に自分が住む家を取得することを目的としたローンであるため、契約内容を変更しなければマンションを賃貸に出すことはできません。無断でマンションを貸し出すと契約違反となり、罪に問われる可能性もあるため注意しましょう。ここでは、住宅ローンが残っている場合の対応方法について解説しますので、参考にしてください。
銀行などの金融機関の住宅ローンを利用している場合、「やむを得ない事情である」と判断されれば、現在の住宅ローンの契約内容を少し修正してもらうことで、マンションを貸し出せる可能性もあります。金融機関や住宅ローンによっても異なりますが、突然の転勤や家族の病気などであれば「やむを得ない事情」として理解してもらえることも多いです。
どの金融機関でも契約内容を修正できるわけではありませんが、まずは相談してみることが大切です。事情を理解してもらえれば、条件付き、または無条件でマンションの貸し出しを許可してもらえるでしょう。勝手に住宅の用途を変更すると、後々一括返済を求められる可能性もあるため注意が必要です。
現在の住宅ローンのままでは賃貸に出せない場合、賃貸住宅向けローンへの変更を検討しましょう。賃貸住宅向けローンとは、主に投資用の不動産を購入するためのローンです。賃貸住宅向けローンは、自分が住む家を購入するためのローンではないため、自由にマンションを貸し出せます。
ただし、一般的な住宅ローンと比較して金利が高いという点に注意しなければなりません。住宅ローンの金利は、ここ数年は変動金利で1%以下、最近では0.5%程度というものが多くなっていますが、賃貸住宅向けローンは、金利が低めの都市銀行で1%ほど、地方銀行など銀行によっては4%以上の場合もあります。同じ住宅を購入するローンですが、目的が違うことで金利には大きな差があるのです。ローンの返済費用や返済期間も大きく変わってしまうため、賃貸住宅向けローンに変更する際は、金融機関と相談しながら慎重に返済プランを立てましょう。
銀行などの民間による住宅ローンに限らず、公的融資と呼ばれる「財形住宅融資」を利用している方も、マンションを賃貸に出す際には融資を受けている住宅金融支援機構に相談するようにしましょう。財形住宅融資もまた、住宅の購入者本人がそこに住んでいることが利用にあたっての原則です。
居住しながらの返済が難しくなるような転勤や長期療養といった特別な事情があるときには「留守管理」という手続きを経ることで、そのまま返済を認めてもらえる場合があります。「留守管理」の手続きによって居住を中断できる期間は3年以内です。3年が経過して状況が継続するような場合には、改めて相談しなければなりません。[注1]
「留守管理」を認めてもらうためには、転勤や入院を証明する書類を提出するなど、特別な事情であることを証明する必要があります。「留守管理」を認めてもらえなかった場合は、賃貸住宅向けの民間融資も選択肢に加え、ローンの変更を検討しましょう。
住宅金融支援機構と民間金融機関の連携によって提供されている「フラット35」も、基本的には購入者自身が住む家を買うためのローンです。転勤などによって一時的に住めなくなるため賃貸に出したい場合は、金融機関へ相談する必要があります。やむを得ない事情による賃貸であると認めてもらえたときには、住所変更などの手続きを行うことで融資を継続してもらえます。
[注1]
住宅金融支援機構「(財形住宅融資のみ)転勤などで一時的に住めなくなったとき」
住宅ローンを変更する際にはさまざまな手数料がかかります。事務手数料や印紙税、繰り上げ返済手数料などがかかるケースも多いでしょう。手数料はローン金額によっても異なりますが、数万円から数十万円程度は必要となることが多いため、事前に確認しておくことが大切です。
賃貸住宅向けローンに変更する場合は、住宅ローン控除の適用条件に注意しましょう。住宅ローン控除は、住宅ローン等を組み自分の生活の拠点を確保するための優遇措置です。その適用条件として、住宅の取得日から6ヵ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで住んでいることが設けられています。そのため、対象の住宅を賃貸に出していると控除は受けられなくなってしまいます。
空き家となるマンションを貸し出すときは、賃貸借契約の形態もしっかりと検討しなければなりません。とくに、転勤などで一時的に家を貸し出したい場合は注意が必要です。賃貸借契約の内容によっては、転勤が終わってから自宅に戻れなくなる可能性もあります。ここでは、賃貸借契約の形態を決める際のポイントについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
マンションを貸す際の代表的な契約方法としては、普通借家契約と定期借家契約の2つが挙げられます。ただ、転勤などで一時的に家を貸し出したい、将来的には自分で再び住む可能性が高い、といった場合には、普通借家契約はあまりおすすめできません。
普通借家契約を締結する際は、一般的に1~2年の契約期間を設定しますが、その期間中は、建物を使う必要性が入居者側よりも高いと判断されるような所有者側の特別な理由(正当事由)がない限り、所有者側から契約を解除することはできません。契約更新時にも入居者側の意向が優先されます。入居者に継続して住みたいという意向があれば、基本的には契約が更新されます。特別な理由があれば契約を解除できるのですが、「転勤が終わったので再び自分で住みたい」といった理由だけでは、基本的に契約を解除できません。
何らかの事情で空き家になるマンションを一時的に貸し出すなら、普通借家契約よりも定期借家契約のほうが向いているでしょう。定期借家契約を締結する場合は、契約期間を自由に設定でき、契約期間の終了後に必ずしも契約を更新する必要はありません。
契約を更新しない旨を入居者に対して事前に通知することは求められますが、契約期間が終わったタイミングで確実に退去してもらえます。帰任までの期間が分かっているならば、それよりも短い期間で契約を行うことで、転勤から帰ってきたときに住む場所がなくて困ることは少ないでしょう。転勤が長引きそうな場合、新しく設定した期間で入居者から合意を得ることで、再契約することで引き続き住んでもらうことが可能です。延長にあたって同意を得るのに十分な期間がさらに確保できそうであれば、再交渉を検討しましょう。また、この判断は契約時に設定した期間を満了する6ヵ月前に行う必要があります。
マンションを一時的に貸し出すのに、定期借家契約は一つの方法ですが、特に転勤で貸し出すのならば、一時使用賃貸借契約についても検討したほうがよいでしょう。一時使用賃貸借契約とは、名前のとおり一時的な貸し出しを必要とするような目的があるときに、その目的を果たすまで有効な賃貸借契約で、目的が無事果たされたときには、入居者よりも家の所有者のほうが解約するのに有利であることが大きな特徴です。予め定められた目的を果たすことによって、入居者への事前の通知は要るものの、通知から3ヵ月後には所有者側の意思で契約を解除できます。
いつでも所有者側から解約できてしまうような条件だと賃貸を希望する入居者を得ることは難しいので、転勤などを理由として一時的にマンションを貸し出す場合は、「2年以降帰任まで」といった契約期間を設定するケースが多いです。この場合、2年経った後であれば、転勤が終わったタイミングで契約を解除して家を明け渡してもらえます。定期借家契約の場合、契約時に定めた期間を急に縮めたり、伸ばしたりといったことは、改めて合意を得て契約を結び直す必要があるためうまくいかないこともあります。転勤のように任期が伸び縮みしやすい状況でそれに合わせて賃貸をしたい場合に、一時使用賃貸借契約を利用すれば、定期借家契約のように予め期間を定めていなくても、転勤終了後に住む家がなくなってしまうというリスクを避けることができ、具体的な契約期間の満了日が事前に定められないことで、入居者に「限られた期間で再契約を行って住み続けるか」、「契約を終えて出ていくか」という選択を迫る機会も「転勤」という目的を果たすまではなくなるので、結果的に丁度良い時期まで住んでもらいやすくなります。
賃貸管理サービスを利用する場合、一時使用賃貸借契約は取り扱っている賃貸管理会社(サービス)とそうでない会社(サービス)があるため、方法の一つとして検討する場合は、事前に調べたり問い合わせたりして確認しておくことをおすすめします。
リロケーション・ジャパンでは、転勤などで一時的に空き家になるマンションを貸し出すサポートをしています。急な帰任への対応、入居者とのトラブル対応なども含め、丁寧にサポートしますのでお気軽にご相談ください。
マンションを貸し出すときは、入居者にも火災保険に加入してもらうことが大切です。火災保険は火事だけでなく、漏水や落雷などの被害も幅広くカバーしてくれるため、入居者にとって大きなメリットがあります。また、火災が発生した場合の修繕費用は高額であるため、入居者自身が支払える範囲を超えてしまうケースもあります。火災保険に加入してもらっておけば、そうした場合でも修繕費用を支払ってもらえます。
入居者が加入する火災保険の特約には、借家人賠償責任保険や個人賠償責任保険といったものがあります。ここで注意すべきなのは、個人賠償責任保険は、家の所有者に対する賠償責任を負った場合、保険金の支払い対象としていないという点です。
個人賠償責任保険は、日常生活のなかで自分が他人に危害を加えてしまった場合、他人が所有している物を壊してしまった場合などは補償してくれるのですが、他人から借りているものを破損してしまった場合などは補償してくれません。所有者への賠償責任を補償してもらうためには、借家人賠償責任保険が付いている火災保険を選択してもらうことが重要です。契約時に、借家人賠償責任保険の特約が付いた火災保険への加入を義務付けることも多いです。
入居者だけではなく、所有者側も火災保険に加入しておくことが大切です。入居者がいない空室期間中に、火災などが発生する可能性もあるからです。また、入居者が加入する火災保険だけで、すべてのケースに対応できるわけではありません。
入居者の火災保険が適用されるのは、あくまでも入居者の過失による事故のみです。隣の家からの延焼や上階からの水漏れなど、入居者に責任がない場合は、所有者の火災保険で対応する必要があります。入居者が加入するからといって安心せず、所有者側もしっかりと火災保険に加入しておきましょう。
使っていない家をうまく活用して家賃収入が得られることは、マンションを貸し出す大きなメリットです。ただし、マンションを貸し出す際には支出が発生することも知っておくべきでしょう。ここでは、マンションの貸し出しにかかる主な費用について解説しますので、参考にしてください。
キッチンやトイレなどの室内設備が老朽化している場合や、壁や床に大きな傷がある場合は、貸す前に修繕費用がかかってしまいます。そのままで使えるケースもありますが、あまりにも古かったり傷みがひどかったりすると、入居者が集まらない可能性もあるため注意が必要です。修繕の必要はなくても、ハウスクリーニングの費用はかかります。貸している最中に設備の不具合が発生した際にも修繕が必要になります。また、マンションの修繕積立金は貸さなくても発生する費用ですが、貸している間も所有者が負担することになります。
マンションを貸し出す場合は、賃貸管理会社に委託するのが一般的です。もちろん自分で管理することもできますが、知識も必要で手間もかなりかかるので、特に転勤などで離れた場所へ行ってしまうと難しいでしょう。家賃滞納リスクを回避するためにも、家賃の集金まで行ってくれる管理会社を利用することは重要です。サービスに家賃滞納保証が付いている管理会社であれば、万が一、入居者が家賃を滞納した場合は、管理会社が代わりに家賃を支払ってくれます。管理会社を選ぶ際には、滞納時には賃料の支払いがどのように行われるかといったことも事前に確認しておきましょう。
入居者が退去する際、壁紙を貼り替える、設備機器を更新する、といった対応が必要となる場合もあります。入居者の生活によってできた傷や汚れは、敷金を利用したり入居者に負担してもらったりして改修できますが、通常の使用で想定される経年劣化の場合は、所有者が改修費用を負担しなければなりません。次の入居者を募る場合もそうですが、転勤から帰ってきた後に自分が快適に住めるよう、ある程度の改修費用を準備しておくことが大切です。
ここで紹介した以外にも、固定資産税や火災保険などの費用がかかることも覚えておきましょう。
マンションを貸すと入居者から家賃収入を得ることになるため、不動産所得が発生します。サラリーマンなどで給与所得がある場合は、給与所得と合算して確定申告をしなければなりません。不動産所得があるにも関わらず申告しないと、脱税と見なされ罰則を受ける可能性もあります。
不動産収入に該当するのは、家賃収入だけではありません。駐車場を一緒に貸す場合の賃料や、契約を更新する際の更新料も不動産収入に含まれます。その他、マンションの共用部分の設備を管理するための共益費や管理費、マンションを貸したことに対して入居者から受け取る謝礼金といった名目の収入も、賃貸経営によって得られた収入は不動産収入に含まれるため、忘れずに計上しましょう。
マンションを貸すことで収入を得ると所得金額が増えるため、所得税や住民税が増えてしまう可能性があります。支払うべき税金を減らすためには、かかった費用をできるだけ経費として計上することが重要です。所得税や住民税は、収入から必要経費や各種の控除を差し引いた金額を基に算出されるからです。
固定資産税や減価償却費、火災保険料やリフォーム費用などは、忘れずに経費に含めましょう。ただし、経費として計上してよいのは、マンションの賃貸に関わる費用だけです。当然ですが、プライベートの食費や交通費などは経費として計上できないので注意しましょう。
常に入居者がいるとは限らないことも、マンションを貸すときに知っておくべきポイントのひとつです。入居者を効率的に集めるためには、家賃や入居条件をうまく設定しましょう。
入居者を募集するうえでは、適切な家賃を設定することが重要です。家賃が高すぎると入居者が見つかりにくいというリスクがある一方で、安すぎると収入が減ってしまいます。管理会社の担当者などとも相談しながら、適切な金額を決めましょう。家賃を決める際は、間取りや築年数、駅からの距離や周辺の家賃相場などを考慮します。住宅ローンの返済額や、今後に生じるその他の出費を考えて、所有者にとって家賃収入として少なくとも必要な金額なども踏まえた上で、入居者にとっての妥当な金額の範囲での、高すぎず安すぎない賃料を検討することがポイントです。
今回は、転勤などで一時的に空き家となるマンションを貸し出す際のポイントについて解説しました。マンションを売却せずに貸し出すことで、転勤から帰ってきたときの住居を確保できるだけでなく、資産を有効活用して家賃収入を得ることも可能です。ただし、マンションを貸すときには、必要に応じて住宅ローンを変更したり、賃貸借契約の形態を検討したりしましょう。信頼できる管理会社を見つけ、家賃設定や入居者募集について相談することも大切です。
リロケーション・ジャパンは、転勤などで一時的に空き家となるマンションを貸し出すサポートをしています。入居者との賃貸借契約やトラブル対応など、丁寧にサポートしますのでお気軽にご相談ください。
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