日本で組織に所属して働いているときは、国民年金に加えて厚生年金にも加入し、毎月の保険料を納めていることが多いでしょう。しかし、海外赴任が決定し、日本から離れるときは年金の取り扱いはどうなるのでしょうか。このまま厚生年金に加入しつづけることができるのでしょうか。それとも海外赴任期間中は、赴任した国の年金制度に加入する必要があるのでしょうか。
気になる海外赴任中の年金制度についてご紹介します。
海外で働く場合は、原則として就労する国の社会保障制度に加入することになります。しかし、日本で働いていた企業との雇用関係が継続していれば、日本の社会保障制度にも継続して加入しなければなりません。
そのため、日本と赴任国の社会保障制度に二重で加入することになり、保険料を二重に負担しなければならない事態が発生します。さらに、年金を受け取るためには一定期間その国の年金制度に加入しなければならないケースが多く、赴任国での就業期間によっては年金を受け取ることができずに保険料を掛け捨てしている状態になってしまうこともあります。
そこで、保険料の二重負担を防止するために加入するべき年金制度を二国間で調整する「二重加入の防止」と、保険料が掛け捨てにならないように両国の年金制度の加入期間を通算して年金受給のために必要な加入要件を満たしやすくする「年金加入期間の通算」を目的に、日本と一部の国との間に「社会保障協定」が締結されています。
2019年10月現在、日本は23か国と社会保障協定を署名済みで、そのうち20か国は協定発効済みとなっています。
社会保障協定発効状況
協定の発効が済んでいる20か国に赴任する場合は、一定の要件を満たせば赴任国の年金制度の加入が免除されます。ただし、イギリス、韓国、中国との協定は保険料の二重負担防止のみ有効で、年金加入期間の通算は適用されません。一方、イギリス、韓国、中国を除く17か国では、保険料を二重に負担することはなくなり、年金加入期間を通算して給付金を受け取ることができるようになります。
日本の年金制度から年金を受け取るためには10年以上の資格期間が必要となりますが、社会保障協定の発効が済んでいる国への赴任であれば、赴任国の年金制度加入期間も日本の年金加入期間とみなして取り扱われるようになります。
協定署名済未発効の3か国(イタリア・スウェーデン・フィンランド)を含め、社会保障協定が発効されていない国の場合は、赴任期間の長さに関わらず原則として勤務する国の社会保障制度に加入することとなります。日本企業との雇用契約が継続している場合は、日本の社会保障制度にも継続して加入することとなります。現地法人での新規採用となった場合も、日本企業との雇用契約が継続している場合は同様に日本の社会保障制度にも継続して加入することとなります。
日本と赴任国での年金制度への加入
海外に居住することとなれば、日本の国民年金の強制加入被保険者ではなくなります。しかし、社会保障協定が発効済みの国で5年を超えて就業する場合など、日本の社会保障制度に加入する必要がない場合でも、日本国籍を有する20歳から65歳までの人であれば、国民年金に任意加入することができます。
国民年金の任意加入には手続きが必要で、海外赴任前の場合は住んでいる市区町村の窓口で手続きができます。すでに日本を離れて海外に居住している場合は、日本で最後の住所地を管轄する年金事務所または市区町村の窓口において手続きをすることができ、本人不在の場合も日本国内の親族などの協力者に手続きの代行を依頼することもできます。
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