転勤辞令を受けた際に気になるポイントとして、家計の負担増が挙げられます。とくに、現居を売却せず保持するといった場合には、二重の住居費を懸念される方も多いでしょう。そこで今回は、転勤時にどのような手当や福利厚生が会社から支給・付与されるのかをご紹介します。
まずは転勤時に会社から支給される手当のうち、転勤時の住まいに関するものについて、いくつか事例をご紹介します。なお、以下は代表例であり、必ずしもすべての会社が支給しているものではありません。どのような手当があるかは、事前に確認をしましょう。
赴任旅費は、現在の住まいから赴任先へ移動するための旅費交通費です。従業員はもちろん、一般的には家族の赴任旅費についても支給されます。片道交通費の場合もあるので、事前に就業規則を確認しておきましょう。
転宅費用は、引っ越しのための費用に対する補助です。会社によっては「引っ越し手当」や「荷造り運送費」と呼ばれることもあります。 引越し業者を会社が指定し、会社が直接支払いを行う場合もあります。確認しておきましょう。
転勤支度金は、転勤にあたり必要となる、赴任旅費と転宅費用以外の支出を補助するための手当です。家具・家電といった生活必需品の購入費や、退去に伴う敷金の損失補填などが挙げられます。転勤支度金は一時金として支給されるケースが多い傾向にあります。なお、会社によってこれらをまとめて転宅費用に含める場合もあります。
着後手当は、赴任先に着任後、すぐに新生活をスタートできるようにと支払われる支度金です。また、引っ越しの荷物が遅延した場合などに、ホテルへ宿泊した場合の費用などの補助としても使われます。
転勤によって子どもが転園・転学しなくてはならない場合にかかる費用の補助となる手当です。具体的には入学金や制服購入費、受験料、副教材購入費などが挙げられます。
地域手当は、赴任先の物価や生活様式といった地域差により、実質賃金が不均等になることを避ける意味で支給される手当です。名称はさまざまであり、「都市手当」や「僻地手当」、「寒冷地手当」などがあります。
家賃補助は、家賃負担の軽減を目的とした補助金です。「住宅手当」と呼ばれる場合もあります。転勤によって持ち家から賃貸に住み替えることで支給対象になるケースが考えられます。なお、一般的に家賃補助は賃貸物件・社宅に住む全従業員に対して一定額または全額が支給されますが、「家賃に対して○%」としている会社もあります。
単身赴任手当は、家族と別居して単身赴任先で一人暮らしをする従業員に支給される手当です。単身赴任では、生活拠点が複数となるため、世帯支出が増加します。このような生活費の一部を補填し、従業員や家族の負担を緩和する目的があります。
上記でご紹介した手当が、実際にどの程度の割合で支給されているかを見ていきましょう。産労総合研究所が2013年に行った「転勤者への福祉施策と赴任費用援助の実態調査」の結果は以下のとおりです。
このように、転宅費用、赴任旅費、赴任手当・支度料に関しては多くの企業が支給していることがわかります。一方で、転園・転学費用補助、着後手当については半数を下回る結果が出ています。
なお、同調査では荷造りなどの期間に充てる「赴任休暇」や赴任先を事前に確認するための「下見出張・下見休暇」の付与についてもアンケートが取られています。結果として、赴任休暇は85.9%と多数の企業が実施。一方で「下見出張・下見休暇」は34.5%と低い傾向にあります。
「転勤者への福祉施策と赴任費用援助の実態調査」では、住宅関連費用の福祉施策に関する調査も行われています。以下はそのアンケート結果です。
社宅・寮の提供や家賃補助を行っている会社は83.1%と最も多く、次いで家賃補助を支給している企業が全体の75.4%となっています。一方、留守宅の借上げや賃貸斡旋、留守宅管理サービスなどの施策を行っている会社は少ない割合でした。
上記の結果から、転勤先の住宅関連費用については積極的に補助を出そうとする会社側の姿勢が感じられます。一方で、現居を残す場合は転勤者自身の負担でという考え方が多い印象を受けます。
転勤手当の中でも家計に影響を及ぼしやすい家賃補助についてみてみましょう。民間企業約6,400社を対象とした厚生労働省の調査では、家賃補助に相当する住宅手当のの平均支給額は17.8千円となっています。
企業規模 | 金額(千円) |
---|---|
全体 | 17.8千円 |
1,000人以上 | 21.3千円 |
300~999人 | 17.0千円 |
100~299人 | 16.4千円 |
30~99人 | 14.2千円 |
参考:「令和2年就労条件総合調査」(第19表諸手当の種類別支給された労働者1人平均支給額(令和元年11月分)[住宅手当など])
家賃補助は「会社から自宅までの距離」や「年齢」などの条件で、転勤でなくても支給される場合があるので、本調査の「住宅手当など」も転勤に限ったものではありませんが、支給額は従業員が多い企業ほど高額化する傾向があり、相場としては約17,800円と思われます。
最後に、地域手当(勤務地手当)の相場についてもご紹介します。厚生労働省発表による「令和2年就労条件総合調査」の結果によると、全体の企業のうち、同手当の支給金額平均は22.8千円とそこまで高額ではありませんでした。なお、支給企業の割合としては企業規模が大きくなるにつれ増えています。一方、支給金額については100人以上の企業で見た場合、大きな差はありませんでした。
企業規模 | 金額(千円) |
---|---|
全体 | 22,8千円 |
1,000人以上 | 21.3千円 |
300~999人 | 23.0千円 |
100~299人 | 20.2千円 |
30~99人 | 22.3千円 |
参考:「令和2年就労条件総合調査」(第19表諸手当の種類別支給された労働者1人平均支給額(令和元年11月分)[地域手当、勤務地手当など])
全体的な傾向として、転勤による手当はある程度期待できるということが分かりました。一方、持ち家を保持しながら転勤先での住居費も賄うとなると、手当だけでは難しいと考えられます。リロケーションであれば、毎月の家賃収入を出費の補填に活用できます。手当の有無にかかわらず、ぜひご活用ください。
リロケーションの詳しい説明はこちらをご確認ください。
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