住宅ローンがあるけど引っ越したい人の4つの選択肢!方法と注意点
住宅ローンを組んで家を購入したあとでも、転勤や家族構成の変化などで引っ越しを検討することがあるでしょう。しかし「そもそも住宅ローンを残したまま引っ越せるのだろうか?」と悩んでいる方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
住宅ローンは、基本的に「自分が住む」ことが契約条件となるため、引っ越し自体ができないと思われがちです。ただし、状況によっては住宅ローンが残ったままでも引っ越しが可能なケースがあります。
本記事では、住宅ローンがある状態で引っ越したい場合の選択肢や残債を抱えたまま賃貸できるケース、注意点について詳しく解説します。
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目次
1. 結論:住宅ローンがあっても引っ越しは可能

住宅ローンが残っていても、引っ越しは可能です。一般的に考えられるのは、住宅を売却して住宅ローンの残債を一括返済する方法です。売却代金で住宅ローンを完済できれば、抵当権が抹消されて家を手放せます。
また、転勤や親の介護などのやむを得ない事情がある場合には、住宅ローン借入先の金融機関の承諾が得られれば、一時的に引っ越して、賃貸を行うことが可能なケースもあります。そのため、このような場合では金融機関への事前相談が必須です。状況に応じた選択肢を検討して必要な手続きを踏むことで、住宅ローンが残っていても引っ越しができます。
以下の表は、住宅ローンが残っている場合の引っ越しパターン別の可否と条件をまとめたものです。状況に応じた対応方法を参考にしてください。
状況 | 引っ越しの可否 | 条件・対応方法 | 備考 |
---|---|---|---|
住宅ローンを払いながら新しい家に引っ越す | 可能 | ・現住居の住宅ローンの支払いを継続する | ・二重の居住費用が必要になる ・週末だけ戻るなど、一部利用が該当する |
契約の更新 | 可 | 不可 | 不可 |
家族の一部のみが引っ越す | 可能 | ・ローン契約者の家族が住み続ける ・ローン支払いを継続する |
・「自ら居住する」要件が満たされる ・二拠点生活によって出費が増加する ・金融機関への事前相談が必要になる |
現在の家を売却して引っ越す | 可能 | ・売却代金で住宅ローンの残債を一括返済する ・抵当権の抹消が必要になる |
・売却額がローン残債より多い場合は返済して引っ越せる ・売却額が残債より少ない場合は差額を用意する必要ある |
やむを得ない事情で賃貸に出す(転勤や親の介護など) | 条件付きで可能 | ・金融機関への事前相談と承認が必要になる | ・辞令または勤務先が発行する証明書など、金融機関が指定する書類が必要な場合がある |
投資目的で賃貸に出す | 不可能 | ・住宅ローンの契約違反となる可能性が大きい | ・「自己居住用」の条件で融資されているため、投資目的での住宅ローンの使用が禁止されている ・住宅ローンの借り換えや事業用ローンへの切替が必要になる |
ここでは、住宅ローンがある場合の「原則」について詳しく解説します。
1-1. 住宅ローンが残っている家は基本的に売れない
原則、住宅ローンが残ったままでの売却はできません。これは、住宅ローンを借りる際に、金融機関が住宅に対して抵当権を設定するためです。抵当権とは、債権者(銀行)がその抵当物件から優先的に弁済を受けられる権利(担保権)のことです。
厳密にいえば、抵当権がついていても法的には所有権の移転や売買自体は可能ですが、実務上はほとんど行われません。抵当権付きの物件を売買した場合、所有権は買主(現所有者)に移りますが、ローンの支払いは売主(元所有者)のままです。
万が一、元所有者によるローンの返済が滞ると、現所有者は不動産を差し押さえられて住居を失うリスクがあります。このようなリスクを避けるため、買主は物件を購入する際に抵当権が抹消されていることを条件とするのが基本です。住宅ローンを完済して抵当権を抹消しない限り、実質的に売却は難しいと考えるべきでしょう。
1-2. 住宅ローンが残っている家は基本的に貸し出せない
住宅ローン返済中の家は、原則的に他人に貸すことはできません。これは、住宅ローンが「自ら居住すること」を条件に金融機関が融資を許可しているためです。他人に貸し出すと、自分自身が住んでいないことになるため、住宅ローン融資の基本条件を満たさなくなります。
居住用と事業用のローンでは融資条件が異なるため、契約違反となる可能性が高いです。ただし、転勤や介護など「やむを得ない事情」がある場合には、金融機関との相談により一時的な貸し出しが認められるケースもあります。いずれにせよ、住宅ローン返済中の物件を金融機関の許可なしに貸し出すことは、トラブルの元となるため避けるべきです。
2. 住宅ローンがあっても引っ越したい場合の4つの選択肢

住宅ローンがあっても引っ越したい場合の選択肢は、以下の4つです。
- 住宅ローンを払いながら新しい家に引っ越す
- ローン契約者のみが引っ越す
- 現在の家を売却して引っ越す
- 賃貸に出して引っ越す
それぞれ詳しく解説します。
2-1. 住宅ローンを払いながら新しい家に引っ越す
数ヶ月で元の家に戻ってくる予定がある場合は、現在の家をそのままにしておくことも選択肢の1つです。この方法のメリットは、家具の移動や元住居の売却・賃貸の手続きをする必要がないため、引っ越し準備の手間や費用を大幅に抑えられる点です。
また、いつでも元の家に戻れるため、心理的な安心感もあります。ただし、金融機関によって居住実態がないと判断された場合、住宅ローンの契約違反となる可能性があるため、事前に相談しておきましょう。
デメリットは、人が住まない期間が続くと通風や通水ができないため、老朽化が進みやすくなる点です。
また、引っ越し先での家賃と住宅ローンの二重負担が発生します。特に二重ローン(住宅ローンを二つ抱える状態)になる場合は、収入に対する返済額の比率によってそもそもローンが組めない可能性もあります。居住費の二重負担を回避するには、引っ越し先を比較的家賃の安い物件や、マンスリーマンションのような短期契約が可能な賃貸物件を選ぶなどの工夫が必要でしょう。
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2-2. ローン契約者のみが引っ越す
単身赴任で家族を残して1人だけで引っ越す場合は、ローンがあっても認められることが多いです。この場合、住宅ローンの契約者の家族が住み続けていれば、住宅ローンの基本条件である「自ら居住する」という要件が満たされるとして、問題なく引っ越せる可能性が高いです。ただし、住宅ローンを組んだ金融機関には、事前に状況を説明しておくことが望ましいでしょう。
単身赴任の場合、家族は住み慣れた環境で生活を続けられるのがメリットです。子どもの学校や親の通院など、生活基盤を変えずに済むため、家族への負担が少なくて済みます。
一方、家族が離れて暮らすことによる精神的な負担や、二拠点生活による出費増加というデメリットもあります。将来的な家族のライフスタイルや子どもの教育環境、通勤・通学の利便性なども考慮して判断することが大切です。
2-3. 現在の家を売却して引っ越す
売却代金で住宅ローン残債を一括返済できれば、抵当権を抹消でき、家を手放せます。住宅ローンを繰上返済する際には、金融機関から手数料の支払いを求められるのが一般的です。そのため、住宅ローンの残債と売却額の目安を把握することが大切です。
住宅ローンの残債は、最新の返済予定表で確認できます。返済予定表が手元にない場合は、金融機関に直接確認してみましょう。売却額の目安は不動産会社の査定で把握できます。これらの情報をもとに、売却が現実的な選択肢かどうかを判断しましょう。
売却額が残債よりも多い「アンダーローン」であれば問題ありませんが、売却額よりも残債が多い「オーバーローン」になってしまうと、手元資金から残りの借入を返済しなければなりません。オーバーローンの場合は、しばらく返済を続けてアンダーローンになるまで待つか、別の選択肢を検討する必要があるでしょう。
2-4. 賃貸に出して引っ越す
住宅ローンが残っている状態では基本的に家を貸し出せませんが、金融機関と相談して事業用ローンに借り換えられると、賃貸物件にすることが可能です。
ただし、事業用ローンに借り換えると金利が上がり、総返済額が増える傾向にあります。そのため長期間家を空ける予定がある場合には、金利上昇による月々の返済額の増加分と得られる賃貸収入を比較したうえで検討することが重要です。賃貸収入がローンの増加分を上回れば、経済的にメリットがあるといえるでしょう。
また物件を賃貸に出せば、入居者が日常的に生活することで通風や通水が行われるため老朽化のスピードが抑えられたり、防犯対策になったりするという利点もあります。家族の状況によっては、将来的に元の家に戻る可能性がある場合や、資産として物件を保有し続けたい場合などは、賃貸として活用する選択肢が適しているでしょう。
なお賃貸する理由によっては、住宅ローンのまま貸せるケースもあるので、次章の内容をぜひ確認してください。
関連記事:【25年最新】戸建てを賃貸に出すか売却か迷った時の判断ポイントを解説
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3. 住宅ローンを残したままで賃貸に出せるケース

住宅ローンを残したままで賃貸に出せるケースは、以下の2つです。
- 転勤で一時的に引っ越す場合
- 親の介護や出産、育児などで実家に引っ越す場合
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 転勤で一時的に引っ越す場合
一時的な転勤で引っ越しを余儀なくされる場合には、金融機関に相談することで、住宅ローン契約のまま賃貸に出せるケースがあります。金融機関への相談の際は、会社から転勤の時期や期間について正確な情報を確認しておきましょう。
転勤などの理由で一定期間だけ家を離れ、その間に物件を一時的に貸し出す仕組みを「リロケーション」と呼びます。リロケーションでは、自分が戻ってきたときに、確実に借主を退去させる必要があるため「定期借家契約」という賃貸借契約を締結することがポイントです。
「普通借家契約」で貸してしまうと、借地借家法によって借主の立場が優先されるため、契約解除を申し出ても断られる可能性があります。定期借家契約であれば、立ち退き料なしで契約期間満了時に確実に賃貸借契約を終了させられるため、リロケーションに適しています。
なお、リロケーションは通常の賃貸とは異なる特性があるため、この形態の取り扱いに精通した不動産会社に依頼するのがおすすめです。専門知識を持った業者に任せることで、潜在的なトラブルを防ぎ、転勤中の物件活用を円滑に進められるでしょう。
「リロの留守宅管理」を運営するリロケーション・ジャパンは、1984年から転勤期間中の留守宅を賃貸管理するサービスを開始しています。40年以上の賃貸管理実績による豊富な経験とノウハウにより、ニーズに合わせた賃貸管理プランや保証サービスを用意しています。転勤による一時的な賃貸を検討している方は、まずは無料の賃料査定を行ってみてください。
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3-2. 親の介護や出産、育児などで実家に引っ越す場合
転勤と同様に、親の介護も「やむを得ない事情」の1つです。一時的に実家に移り住んで介護する必要がある場合は、金融機関に状況を説明し、賃貸転用の許可を得られるケースがあります。
そのほかに、夫婦での里帰り出産や育児のために数年間実家で暮らす場合も、認められるケースにあげられるでしょう。こうした家族の事情による一時的な転居は、金融機関に丁寧に説明することで理解を得られることが多いです。
なお住宅金融支援機構では、一時的に住宅を離れる方向けに「留守管理」という制度を提供しています。留守管理とは、転勤や療養などやむを得ない理由で一時的に住宅に居住できない場合に、管理人を選任することでローンの返済を継続できるものです。ローンを提供する側がこのような制度を設けているケースもあるため、契約した金融機関に相談してみることをおすすめします。
4. 住宅ローン返済中に引っ越しを検討する際の注意点

住宅ローン返済中に引っ越しを検討する際の注意点は、以下のとおりです。
- 住宅ローン控除の適用条件を確認する
- 残債を把握する
- 金融機関に無断で貸し出さない
- 住民票を移す
それぞれ詳しく解説します。
4-1. 住宅ローン控除の適用条件を確認する
住宅ローンを残したまま引っ越しが認められた場合でも、家族全員で転居すると住宅ローン控除の適用対象外となります。これは、住宅ローン控除の条件に「自ら居住すること」が含まれているためです。
ただし、ローン契約者が単身赴任しても家族が残る場合は、世帯としての居住実態があると判断され、控除を継続して受けられる可能性があります。また、家族全員で一時的に転居しても、のちに元の住宅に戻った時点で控除の残存期間があれば、住宅ローン控除の適用が再開できます。居住の実態に応じて、適用状況が変わる点に注意しましょう。
なお、新たな住宅を購入して住宅ローンを組んだ場合、その物件についても住宅ローン控除を受けられる可能性があります。ただし、税法上、複数の住宅に対して同時に控除を適用することはできないため、どちらの物件で税制優遇を受けるか選択する必要があります。
参考:国税庁|No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
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住宅ローン控除は住んでいなくても適用可能?転勤や単身赴任など事例別に解説

4-2. 残債を把握する
住宅ローンが残っている物件の売却を検討する場合、まずは現在の借入残高を正確に確認することが重要です。残債額によっては、売却が適切な選択でない状況もあるためです。残債と不動産会社による査定額を比較することで、売却価格が残債を上回る「アンダーローン」か、残債が売却価格を上回る「オーバーローン」かの見通しが立てられます。
査定の段階でオーバーローンの可能性が高いと判断された場合は、以下のような代替え案を早めに検討できます。
- 単身赴任
- 物件を賃貸に出す
- 金融機関との返済計画の見直し など
残債額の確認方法は、最新の返済予定表を参照するのが一般的です。金融機関のWebサイトや窓口で照会でき、返済予定表を紛失した場合は契約先の金融機関に直接問い合わせることも可能です。住宅ローンの残債を性格に把握することが、その後の適切な意思決定につながります。
4-3. 金融機関に無断で貸し出さない
一時的な転勤や親の介護などの理由で住宅を貸し出す場合でも、住宅ローン契約中は必ず融資元の金融機関に事前相談しましょう。無断で賃貸転用したことが判明した場合、以下のような措置を講じられる可能性があります。
- 住宅ローンの一括返済
- 高金利の事業者ローンへの借り換え
- 法的措置
特に一括返済を求められた際の最悪のケースは、住宅を売却しても残債が残ってしまい、自己破産に追い込まれるケースです。実際に住宅ローンの不正利用により、数千万円の一括返済を求められてトラブルに発展している事例も報告されています。
無断貸出が金融機関に発見される経路としては、受け取り手不在により郵便物が返送されたり、金融機関による実態調査で発覚したりするケースがあります。こうしたリスクを避けるためにも、引っ越しや賃貸転用を検討している段階で、早めに金融機関に相談するのがおすすめです。
参考:MBS NEWS|住宅ローン4000万円の『一括返済』を求められ絶望…「投資用物件とフラット35」で相次ぐトラブル 勧めた不動産会社Xに取材を申し込むと
4-4. 住民票を移す
引っ越し後に住民票の異動手続きを行わないと「新居住地での子育て支援や健康診断などの公共サービスが受けられない」「選挙権が行使できない」などの不利益が生じます。さらに、住民基本台帳法では転居後14日以内の届出が義務付けられており、無届けの場合は5万円以下の過料が科される可能性があります。
特に注意が必要なのは、住宅ローン控除を受け続けたいがために、住民票を移さないというケースです。実際の居住実態がないにもかかわらず控除を受け続けることは、税法上の虚偽申告に該当し、脱税として刑事告発される恐れがあります。引っ越しの際は、実際の生活拠点に合わせて、適切に住民票を移動させることが法令遵守の観点から不可欠です。
住民票の異動は、新しい住所地の市区町村窓口に転入届を提出します。正しい手続きを踏むことで、余計なトラブルを避けることが可能です。住民票の移動手続きは、新住所地の市区町村役所または出張所の窓口で転入届を提出します。
転入届の手続きには、本人確認書類と前住所地で発行された転出証明書が必要になります。オンライン申請が可能な自治体も増えているので、各自治体のWebサイトで確認してみましょう。
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5. まとめ
住宅ローンが残っていても、状況に応じた適切な方法を選べば引っ越しは可能です。住宅ローンの残債を一括返済できるなら売却という選択肢があり、転勤や親の介護などのやむを得ない事情があれば、一時的な賃貸運用も検討しましょう。
なお引っ越しを検討する際には、自己判断は避けて金融機関に相談することが大切です。無断で貸し出しを行うと、一括返済を求められたり法的措置を取られたりするなどのトラブルにつながる恐れがあるため注意しましょう。
また、住宅ローン控除の適用条件や住民票の異動についても正しく理解しておくことが重要です。家族のライフスタイルや将来の計画を考慮しながら、最適な方法を選びましょう。
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