賃貸管理会社の変更は可能ですが、契約解除の難易度は管理方式によって異なります。
管理委託方式であれば簡単に解約できますが、サブリースでは合意解除に向けての協議が必要です。
賃貸管理会社を変更する前にチェックしたいことは、管理委託かサブリースかの「管理方式の契約の種類」により異なります。詳しくは、2.管理会社の変更方法をご覧ください。
賃貸管理会社の変更はどのようにやればいいのか。
この記事では賃貸管理会社を変更する理由から管理会社変更時に期待できる効果や注意点、管理会社を変更する流れなど「賃貸管理会社の変更」について解説します。
最初に、貸主が賃貸管理会社を変更する理由と変更後の効果について解説します。
賃貸管理会社の変更は、現状の物件に空室が多く、入居状況を改善したいというのが大きな理由です。
空室物件の入居者募集は管理会社によって行われますが、賃貸仲介の実力は管理会社によって異なります。
そのため、同じ物件であっても賃貸管理会社を変更するだけで借主が決まることも多くあります。
管理費用が高いという点も、賃貸管理会社を変更する理由となります。
管理費用は、管理委託形式であれば家賃の5%程度、家賃保証型のサブリースであれば満室想定賃料の15%程度が相場です。
管理費用が相場よりも高い場合には、賃貸管理会社を変更することで下がる可能性が高いといえます。
また、物件によっては相場よりも低い管理費用で受託している会社もあります。
例えば、都市部で戸数の多い大型賃貸物件では、管理委託料を家賃の1~3%としている会社も存在します。
入居審査が甘く、悪質な借主を入居させられた場合も賃貸管理会社を変える理由になります。
悪質な借主とは、例えば部屋を汚部屋にする、ゴミ出しマナーが悪い、ほかの住人に迷惑をかける、家賃を払わない等のトラブルを発生させる入居者のことです。
入居審査の基準は、賃貸管理会社によって異なります。
入居審査のうち、人物審査に関しては賃貸管理会社の経験値も必要となることから、入居審査は賃貸管理の実績が豊富な会社の方が適正になされる確率が高いです。
賃貸管理会社の変更後の効果を挙げると、以下の通りです。
【賃貸管理会社の変更後の効果】
この章では、管理方式別にみる賃貸管理会社の変更方法について解説します。賃貸管理会社の変更を検討する際には、まず管理委託契約書を確認することをおすすめします。
管理委託とは、管理会社と委託契約を締結して行う管理方式のことです。
管理委託では、建物所有者は賃貸管理会社と管理委託契約を締結、入居者と賃貸借契約を締結しています。
管理委託方式であれば、賃貸管理会社との解約は簡単です。
管理委託契約書の中には、通常、「解約の申入れ」という条項が定められています。
解約の申入れでは、貸主と賃貸管理会社の双方から解約を申し入れることができるようになっており、解約の申入れは3ヶ月前に行うと定められていることが一般的です。
また、契約によっては貸主側から3ヶ月分の管理報酬相当額を賃貸管理会社に支払えば、即時解約ができるとしているケースもあります。
サブリースとは、賃貸管理会社と賃貸借契約を締結して行う管理方式のことです。
サブリースは転貸という意味であり、建物所有者は賃貸管理会社と賃貸借契約を締結し、入居者は賃貸管理会社と転貸借契約を締結しています。
サブリースには、家賃保証型サブリースとパススルー型サブリースの2種類があります。
家賃保証型サブリースとは、空室状況に関わらず、賃貸管理会社から支払われる家賃が固定となるサブリースのことです。
パススルー型サブリースとは、空室状況に応じて、賃貸管理会社から支払われる家賃が変動するサブリースになります。
家賃保証型サブリースやパススルー型サブリースでも、建物所有者は賃貸管理会社と賃貸借契約を締結している点は同じです。
つまり、いずれのサブリースも、建物所有者と賃貸管理会社は貸主と借主の関係になります。
サブリースは、管理委託とは異なり、貸主側からの解約が困難になるという点が特徴です。
サブリース契約の中には、通常、「期間内の解約」という条項が定められています。
期間内の解約条項では、借主(サブリース会社)から解約できる条項は定められていますが、貸主(建物所有者)からの解約は定められていないことが一般的です。
サブリース会社から解約する場合は、通常、6ヶ月前に解約を申し入れると定められています。
一方で、サブリース契約の中に貸主側から解約できることが定められていないため、契約書上、貸主側からは原則として解約できないということです。
ただし、貸主側からサブリース契約を解除する場合は、サブリース会社と協議(話し合い)を行った結果、合意解除となれば契約解除をすることはできます。
賃貸管理会社に解約したい旨を打診し、協議が整えば解約できるということです。
逆に、管理会社に反対され、協議が整わなければ解約はできないというになります。
貸主側のメリットとしては、「1-4.変更後の効果」で示したように以下のものが挙げられます。
借主向けのサービスが充実した賃貸管理会社に変更すると、入居者がより良いサービスを受けられるという点がメリットです。
例えば、家賃の振り込みをクレジットカード可能な会社に変更すれば、借主は家賃をクレジットカードで支払うことでカードポイントを溜められるようになります。
借主向けサービスが充実した賃貸管理会社を選べば、入居期間も長くなり、借主の入れ替え頻度が下がって結果的に貸主側に入居者募集費用の削減効果も生まれます。
この章では、賃貸管理会社変更時の注意点について解説します。
賃貸管理会社の解約には、時間がかかるという点が注意点です。
管理委託であれば、3ヶ月分の管理報酬相当額を支払うことで即時解約できます。
しかしながら、管理報酬相当額を支払いたくない場合には、3ヶ月前の解約予告を要するため、少なくとも3ヶ月の時間が必要です。
また、サブリースの場合は、協議によって合意解除を勝ち取る必要があるため、妥結までにどの程度の時間がかかるかわかりません。
交渉が長期化する可能性もありますので、解約は時間に余裕をもって行うことが適切です。
サブリースでは、賃貸管理会社から立ち退き料を要求されることもあります。
サブリースは建物所有者と賃貸管理会社は貸主と借主の関係であるため、契約解除はいわゆる立ち退きに相当します。
貸主から借主を立ち退かせるためには、正当事由と立ち退き料が必要です。
正当事由とは借主を立ち退かせるために正当な理由のことであり、立ち退き料とは弱い正当事由を補完する金銭のことを指します。
具体的な正当事由は次の通りです。
一般的に単に賃貸管理会社を変更したいという理由は正当事由として不十分であるため、弱い正当事由を補完するために立ち退き料が必要となります。
立ち退き料は借地借家法にも定められている内容であり、借主が要求できる正当な金銭です。
賃貸管理会社は、法律上は借主である以上、立ち退き料を要求してくることは当然にあり得ます。違約金の相場は賃料の数か月といわれています。
賃貸管理会社の変更では、メンテナンス会社を引き継げないことがあります。
例えば、大手ハウスメーカーが建てたアパートでは、賃貸管理会社とメンテナンス会社がハウスメーカーの関連会社となっていることが多いです。
賃貸管理会社とメンテナンス会社がセットになっている場合は、賃貸管理会社とメンテナンス会社を切り離すことができず、管理会社だけを切り替えられないことがあります。
引き継ぐ側の賃貸管理会社は、メンテナンス会社を引き継げないと困ることが多いです。
そのため、既存の賃貸管理会社との契約を解約すると既存のメンテナンス会社まで解約されてしまうケースでは、実質的に賃貸管理会社を変更できないこともあります。
この章では、賃貸管理会社を変更する流れについて解説します。
まずは興味のある賃貸管理会社に賃料査定を依頼することが管理会社変更への第一歩です。
賃料査定によって新しい賃貸管理会社からの提案を聞き、切り替えるとどのようなメリットがあるかを十分に確認しておきます。
既存の賃貸管理会社の解約方法に関しても、新しい賃貸管理会社にアドバイスを受けながら進めていくと安全です。この際のポイントは2~3社の複数の賃貸管理会社から話を聞くようにしましょう。
適切な賃貸管理会社を選ぶポイントについては、「6. 新たな賃貸管理会社を選ぶポイント」にて詳しく解説します。
新しい賃貸管理会社の目星を付けたら、既存の賃貸管理会社と解約手続きを進めていきます。
解約手続きに際しては、まずは既存の賃貸管理会社との契約書を確認することが必要です。
管理委託契約であれば、「解約の申入れ」の条項があるはずですので、条項に基づき解約手続きを進めていきます。
管理委託契約の場合、仮に解約の申入れの条項がなくても、申入れをすれば立ち退き料等は発生せずに解約できることが通常です。
一方で、サブリースの場合は、賃貸管理会社との話し合いを行って、合意解除を目指します。
合意が得られなければ、解除することはできなくなります。
万が一裁判になってしまうと、長期化してしまいますので、話し合いは穏便に決着させることが望ましいです。
既存の賃貸管理会社との解約が決まったら、新たな賃貸管理会社との間で引き継ぎを行ってもらいます。
引継ぎに関しては賃貸管理会社同士で行うため、貸主は特に何かを行うわけではありません。
ただし、既存の賃貸管理会社に関しては、入居者トラブルの引継ぎをしっかり行うように伝えておくとより良い対応となります。
賃貸管理会社の変更が終わったら、賃貸管理会社から入居者に対して賃貸管理会社の変更を通知します。
賃貸管理会社を変更すると家賃の振込先も変更されることが一般的ですので、通知書には新たな家賃の振込先が記載されることが通常です。そのため、入居者は新たに口座引き落としの書類などを記入する手間が発生します。そのため、入居者には変更するメリット(3-2.入居者側のメリット)を伝え納得してもらいましょう。
この章では、新たな賃貸管理会社を選ぶポイントについて解説します。
新しい賃貸管理会社は、実績豊富な賃貸管理会社を選ぶことがポイントです。
実績豊富な賃貸管理会社は、多くの貸主の期待に応え続けてきたことから、結果的に実績が豊富になっています。
実績豊富な賃貸管理会社は貸主からの信頼が厚く、賃貸仲介の実力が高く、入居審査の経験値も高いことが一般的です。
スタッフが多い賃貸管理会社を選ぶこともポイントです。
スタッフが多い賃貸管理会社は、各スタッフの業務負荷が緩和されているため、忙し過ぎて手が回らないというリスクを避けることができます。
貸主の要望に対して、丁寧に対応してもらえることが期待できます。
サービスが充実した賃貸管理会社を選ぶこともポイントです。
賃貸管理会社のサービスの中には、例えば貸主が負担すべき修繕費用を一定額まで負担する、または借主に家賃の不払いがあっても賃料を保証する等があります。
管理費用が多少高くても、サービスが充実している会社の方が結果としてリーズナブルとなる場合もあります。
以上、賃貸管理会社の変更について解説してきました。
貸主が賃貸管理会社を変更する理由としては、「空室が多い」や「管理費用が高い」等があります。
賃貸管理会社の変更方法は、管理委託の場合には契約書に従って解約手続きを行い、サブリースの場合には協議により合意解除を目指すのが手順です。
賃貸管理会社変更時の注意点としては、「解約には時間がかかることを念頭に置く」や「設備メンテナンス事業者を引き継げないことがある」等が挙げられます。
賃貸管理会社を変更するには、興味のある会社に賃料査定を依頼することが最初のステップです。
新たな管理会社を選ぶポイントとしては、「実績豊富な管理会社を選ぶ」や「スタッフが多い管理会社を選ぶ」、「サービスが充実した管理会社を選ぶ」の3点が挙げられます。
賃貸管理会社の切り替えを検討するうえで、参考にしていただけると幸いです。
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