家を貸すと「家賃収入」を得ることができますが、家賃収入が発生すると「所得」となり、納税の義務があります。 家を貸す場合、税金はどれくらいかかり、どのように納税すべきでしょうか?
ここでは、 「家を貸すと発生する税金の種類」 「課税額の計算方法」 「確定申告をしないとどうなるか」 について解説します。
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1. 家を貸すと発生する税金
会社員として働いていると、給与から所得税や住民税が天引きされています。 家を貸して得た家賃収入に対しても、 所得税や住民税は課税対象です。 家賃収入は給与所得と合算され、事業として黒字であれば所得税や住民税がその分増額します。
なお、固定資産税や都市計画税は、不動産の所有に対して課税されるので、家を貸している場合も支払いが必要です。
1-1. 所得税・復興特別所得税
家を貸すと得られる家賃収入は「不動産所得」とされ、 給与所得などと合算した総所得額に対して所得税が課されます。 これに加えて、2037年12月31日までは、東日本大震災復興基本法に基づき復興特別所得税も課されます。
所得税の計算方法については、「4. 家を貸すときの所得税の計算方法とは」で解説します。
1-2. 住民税
住民税は地方税であり、教育や福祉など行政サービスをまかなうための資金に充てられる税金です。 「均等割」と「所得割」があり、均等割りは5,000円(都道府県民税1,500円・市区町村民税3,500円)、所得割は前年度の所得に応じて税額が決定します。
1-3. 固定資産税
1月1日時点の不動産所有者に対して課される税金です。賃貸中であっても所有者は変わらないため、支払い義務は継続します。標準税率は1.4%で、固定資産評価額をもとに算出します。
1-4. 都市計画税
1月1日時点における市街化区域内の不動産所有者に対して課税されます。標準税率は0.3%で、固定資産評価額をもとに算出します。、固定資産税と合わせて納税します。
1-5. 事業税
事業税とは、個人・法人問わず、事業を行う際に利用する各種行政サービスの経費に充てるために課される地方税です。10戸以上の賃貸経営を行っているなど一定規模以上の方は事業税を納めなければいけません。マンションや一戸建てを貸す場合は「不動産貸付業」に分類され、所得に対し5%が個人事業税として、事務所又は事業所が所在する都道府県への納税が必要となります。
2. 家を貸すと発生する不動産所得とは
不動産所得とは次の所得のうち、事業所得または譲渡所得に該当しないものをいいます。
(1) 土地や建物などの不動産の貸付け
(2) 地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け
(3) 船舶や航空機の貸付け
一般的な投資用不動産の家賃収入だけでなく、駐車場の運営なども該当します。一時的な賃貸で収入を得た場合も、不動産所得の扱いです。
2-1. 不動産所得の計算方法
「収入」から「収入を得るためにかかった経費」を差し引いた金額が「所得」です。 所得税や住民税はこの所得に対して課税されます。不動産所得においても、必要経費を差し引いて計算することができます。
不動産所得 = 収入金額 - 必要経費
2-2. 収入金額に含まれる費用
- 家賃収入
- 駐車場料金
- 礼金(敷金は含まれない)
- 更新手数料
- 管理費、共益費
2-3. 必要経費に含まれる費用
- 管理費・町内会費
- 修繕修理費・リフォーム代
- 賃貸管理会社への管理手数料
- 入居者募集にかかる広告宣伝費
- 物件運営のために使用した交通費
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険や地震保険料などの損害保険料
- 借入金の利息
- 減価償却費
- 司法書士や税理士に税管理を依頼した場合の専門家報酬
以上が必要経費にあたります。
減価償却費とは?
減価償却費とは、不動産の取得費用から、経年による建物の価値の減少を費用として計上するための会計上の費用です。実際の支出は伴いませんが、不動産所得に対しての費用として計上できるため、不動産所得を小さくすることができます。
なお、土地については経年による価値の減少はないと考えられているため、減価償却の考え方は適用されません。
2-4. 現在の建物の価値は?
減価償却費を算出するためには、建物の購入代金などの合計額から前年までの減価償却費相当額を差し引いて、現時点での価値を求める必要があります。 ここでは、事業用として使われていなかった場合の減価償却費相当額の求め方をお伝えします。 取得価格から減価償却費相当額を差し引いた金額が現在の建物の価値であり、減価償却の基礎となる金額です。 取得時期によって計算方法が異なるので注意しましょう。
2007(平成19)年3月31日以前に取得
建物の取得価額 -(建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数)=現在の建物の価値
※経過年数は6か月以上の端数は切り上げ、6か月未満の端数は切り捨て
※建物取得費は建物取得価額の95%を限度とする
2007(平成19)年4月1日以降に取得
建物の取得価額 -(建物の取得価額×償却率×経過年数)=現在の建物の価値
区分 | 償却率 | 耐用年数 |
---|---|---|
木造 | 0.031 | 33年 |
木骨モルタル | 0.034 | 30年 |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 0.015 | 70年 |
金属造①(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚3mm以下) | 0.036 | 28年 |
金属造②(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚3mm超4mm以下) | 0.025 | 40年 |
2-5. 耐用年数とは?
不動産は建築後、年々価値が下がっていくと考えられており、価値が1円となる年数を定めた「法定耐用年数」という基準があります。 これは税法上の基準であり、建物の寿命ではありません。賃貸住宅(事業用建物)の場合、法定耐用年数は以下の通りです。
区分 | 耐用年数 |
---|---|
木造 | 22年 |
木骨モルタル | 20年 |
(鉄骨)鉄筋コンクリート | 47年 |
金属造①(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚3mm以下) | 19年 |
金属造②(軽量鉄骨造のうち骨格材肉厚3mm超4mm以下) | 27年 |
なお、中古住宅を購入した場合は、法定耐用年数ではなく「中古建物の耐用年数」を用います。計算式は以下の通りです。
- 法定耐用年数の全部を経過した資産
法定耐用年数×20%=中古建物の耐用年数 - 法定耐用年数の一部を経過した資産
(法定耐用年数-経過した年数)+経過年数×20%=中古建物の耐用年数
2-6. 減価償却費のシミュレーション
ここでは、減価償却費の求め方について、実際のシミュレーションを用いて解説します。
要件 | 対象物件 |
---|---|
種別 | 中古住宅 |
取得年 | 2002年 |
築年数 | 20年 |
区分 | 木造 |
取得価格 | 2,000万円 |
建物の現在の価格
建物の取得価額 -(建物の取得価額×償却率×経過年数)=現在の建物の価値
2,000万円 -(2,000万円×0.031×20年)=760万円
償却率は耐用年数にごとに定められています。
参考:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却
中古建物の耐用年数
(法定耐用年数-経過した年数)+経過年数×20%=中古建物の耐用年数
(22年-20年)+20年×20%=6年
耐用年数6年の減価償却資産の償却率は0.166
参考:減価償却資産の償却率表
減価償却費
760万円×0.166=126万1600円
3. 家を貸した場合の税率
家を貸すことによって家賃収入を得ると所得金額が増えるため、所得税や住民税などが増えてしまう可能性があります。
3-1. 所得税・復興特別所得税の税率
<所得税の税率>
所得税は累進課税制度が用いられており、収入が増えるほど税率が上がります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
参考:所得税の税率[国税庁]
<復興所得税の税率>
復興所得税の税率は2.1%です。これは所得金額に対してではなく、所得税額に対しての税率です。
たとえば、所得金額が400万円の場合は、下記のような計算になります。
所得税
4,000,000円 × 20% - 427,500円 = 372,500円
復興所得税
372,500円 × 2.1% = 7,822円
合計納税額
372,500円 + 7,822円 = 380,322円
3-2. 住民税の税率
住民税は前年の所得をもとに課税額が決定され、市区町村民税と都道府県民税にわけられます。 また、均等割と所得割があり、均等割は定額の負担を課すもの、所得割は所得に対して一律10%の税率を課すものとなっており、内訳は以下の通りです。
住民税 | 均等割 | 所得割 |
---|---|---|
区市町村民税 | 3,500円 | 6% |
都道府県民税 | 1,500円 | 4% |
合計 | 5,000円 | 10% |
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4. 家を貸すときの所得税の計算方法とは
所得税の計算方法は「総合課税方式」と「分離課税方式」があり、家を貸した場合の家賃収入(不動産所得)は総合課税方式に該当します。
総合課税方式は、対象となる各種所得金額を合計して所得税額を計算し、これに累進課税率をかけて税額を算出する方法です。
4-1. 家を貸す場合は「総合課税方式」で計算する
総合課税方式における所得税の計算方法は次の通りです。
① 総合課税方式が適用される各所得を合算し、課税標準を算出します。
課税標準 = 総所得金額
= 給与所得 + 不動産所得 + 利子所得 + 配当所得 + 譲渡所得 + 一時所得 + 雑所得
② 課税標準の金額に応じて、税率と控除額を適用します。
所得税額 = 課税標準 × 税率
4-2. 給与など他に収入があるときの課税額
不動産所得とは別に所得がある場合、課税額については不動産所得以外もあわせて考える必要があります。
実際にシミュレーションしてみましょう。
収入 | 金額 |
---|---|
給与等の収入 | 700万円 |
家賃収入 | 80万円 |
【給与所得】
給与等の収入から給与所得控除を差し引いた金額が給与所得となります。
700万円の場合、給与所得控除額は、収入金額×10%+110万円です。
700万円-(700万円×10%+110万円)=520万円
不動産所得
家賃収入から必要経費を差し引いた金額が不動産所得となります。
収入 総額80万円
賃料10万円(賃貸期間8ヶ月)
必要経費 総額85万円
広告宣伝費 11万円
事務手数料 5万円
固定資産税、都市計画税 10万円
マンション管理費 12万円
管理費 4万円
減価償却費 55万円
火災保険料 5,000円
収支
80万円-97.5万円=▲17.5万円
帳簿上は赤字になりますが、この中で減価償却費については実際の支払いはなく、会計上の費用になります。
【課税所得】
給与所得と不動産所得を合算すると、不動産所得の赤字分がマイナスとなり、給与所得のみの場合よりも課税所得が低くなります。
520万円+▲17.5万円=502.5万円
4-3. 家を貸すかの判断基準
家を貸すかどうかは、賃料収入だけではなく、給与所得と合算した所得金額を考慮して検討しましょう。 所得税率は、所得が695万円になると20%→23%へ、900万円になると23%→33%へと段階的に上昇します。 不動産所得が増えることで適用される税率が変わってしまう場合は、家を貸してもメリットを享受できない場合があります。
一方、給与所得のみで900万円を超えている方は、大幅に所得金額が増えない限りは税率が上がらないため、 経費による所得金額の圧縮や損益通算により節税できる可能性が高いでしょう。
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5. 不動産所得の確定申告
年間20万円を超える家賃収入があった場合には、確定申告が必要です。 会社員で年末調整を行っている方も、不動産所得が発生した場合は確定申告を行わなければなりません。 申告には様々な書類が必要となり、申告期間も約1ヵ月程度と短くなっているので、事前に準備をしておきましょう。
5-1. 確定申告に必要な書類
最初に必要書類を揃えましょう。確定申告には次の3つの書類が必要です。
- 確定申告書B
- 不動産収支内訳書
- 所得税青色申告決算書
他に必要なものとして固定資産税の領収書、身分証明書、マイナンバー通知カード、会社員の方は、「源泉徴収票」も必要です。
5-2. 確定申告の流れ
会社員の場合、給与から所得税および住民税が源泉徴収され、会社が年末調整を行うため、確定申告は不要です。 しかし、不動産所得は確定申告が義務づけられており、年間20万円を超える収入がある場合は 自分で確定申告を行わなければなりません。 なお、20万円未満の場合でも、住民税に対する所得の申告は必要です。
確定申告の受付期間は、対象年度の翌年の2月16日から3月15日まで です。確定申告をWebで完結できるe-taxの場合は、受付開始日が早くなり1月4日から3月15日までとなります。
郵送での申告や税務署へ持ち込む場合は、国税庁のホームページもしくは税務署で申告書類を入手しましょう。 なお、提出先の税務署は、提出時の住所地の管轄税務署となります。 同じ市区町村内でも、町域によって異なる場合があるので注意が必要です。
参考:
所得税の確定申告[国税庁]
確定申告書等作成コーナー[国税庁]
5-3. 節税に繋がる青色申告特別控除とは
不動産所得には手続きが比較的簡単な「白色申告」と、 複雑な手続きをするために控除が受けられる「青色申告」があります。
青色申告では最大65万円の控除が受けられるメリットがあります。 65万円の控除を受けるための条件は以下の通りです。
- 事業的規模(おおむね5棟10室以上)の賃貸経営であること
- 複式簿記による帳簿を用いること
- 貸借対照表と損益計算書を添付すること
- 期限内に申告すること
- e-Taxでの申告、または電子帳簿保存を行うこと
これらの条件を満たしていない場合は、10万円の控除です。
e-Taxでの申告、または電子帳簿保存を行うことのみが難しい場合は、55万円の控除が受けられます。
なお、これらの特別控除は黒字の範囲内でしか控除ができません。 しかし、赤字の場合は3年繰り越すことができるため、いずれの場合においてもメリットがあります。
参考:青色申告制度[国税庁]
5-4. 家を貸す場合に節税となる場合
不動産投資が節税になるといわれる理由の一つが、不動産投資で出た赤字を、 会社からもらう給与所得と相殺(損益通算)できることです。
給与の場合、毎月源泉徴収という形で給与から税金が天引きされています。 不動産投資が赤字の場合はマイナスとなっている金額を所得から差し引くことができるため、総所得を減らして納税額を減らすことができます。 確定申告によって、払い過ぎた所得税が戻ってくることもあります。
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5-5. 確定申告をせず発覚した場合
不動産所得である家賃収入は、原則として確定申告が義務づけられています。 納税義務があるにも関わらず、故意に納税しないことは脱税であり、税法違反の犯罪です。
期限内に確定申告を行っていない場合、過去に遡って納税義務が発生します。 この場合は納めるべき税額に対して、無申告加算税・重加算税・延滞税などが科され、行政処分がなされます。 また、脱税は犯罪行為ですので、「10年以下の懲役」もしくは「1,000万円以下の罰金」、 またはこれらを併科とする刑罰が課される可能性もあるでしょう。刑罰がつくと「前科」になりますので、必ず申告してください。
リロの留守宅管理では忙しいオーナー様の為に、確定申告を代理で行うオプションもご用意しております。
6. まとめ
家を貸すと発生する税金の種類、経費として控除できるものの種類、税額の算出方法から確定申告の手順までご紹介しました。
家を貸して得られる家賃収入は不動産所得となり、給与所得などと合算した所得に対して課税されます。 不動産所得を得るためにかかった費用は所得から差し引くことができ、実際の支出はないものの減価償却費も対象費用となります。 不動産所得がマイナスとなった場合は、給与所得などから差し引くことができ、総所得額を抑えられるため、節税が可能です。 不動産所得が発生した場合は確定申告を行う必要があり、確定申告をせずに納めるべき税金を納めなかった場合は、 脱税として刑事罰が科されることもあります。不動産収入がある場合は、必ず期日までに確定申告を行いましょう。
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