転勤の間だけマンションを貸すにはどうする?ローンの有無、転勤だからこそおすすめの契約方法を紹介

執筆者│平田 翔

平田 翔

【資格】

宅地建物取引士

転勤の間だけマンションを貸すにはどうする?ローンの有無、転勤だからこそおすすめの契約方法を紹介

マンションを購入したのに、転勤を告げられたら、自宅マンションをどうすればよいのか悩む方も多いでしょう。

転勤時に空き家となってしまうマンションの扱い方には「貸す」「空き家のまま維持する」「売却する」の3パターンがあります。

この中の「貸す」を選択して転勤の間だけマンションを貸すと、家賃収入を得ることができ、帰任後にまた住めるというメリットがあります。

今回は、転勤の間だけマンションを貸す場合の流れや転勤時の賃貸におすすめの契約方法を解説します。また、転勤中の自宅マンションを貸した方がよいか、空き家のまま維持した方がよいか、売却した方がよいか、迷った際の判断のポイントについてもご説明しますので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

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目次

1. 転勤の間だけマンションを貸すために確認すべき3つのポイント

転勤期間中だけマンションを貸すときには、マンションを貸すことで得られるメリットを最大限にしたいものです。そのためには、ローンの借入先金融機関からの承認や転勤期間中の賃貸が得意な管理会社選びがカギになります。詳しくご説明します。

1-1. ローン借入先の金融機関の承認を得る

マンションの購入に際して、ほとんどの方が金融機関からローンを借りるでしょう。住宅ローンは、ローンの契約者やその家族が居住するための不動産を購入する際の資金を対象とした金融機関が行う融資です。ローンの担保には、購入する不動産が設定されます。そのため、契約者が居住しない物件は住宅ローンの対象外となります。

転勤が決まった方のなかには、自宅のマンションにはまだ住宅ローンの返済が残っているというケースもあるでしょう。ローンを利用していない物件の場合は問題なく賃貸に出せますが、返済中の物件は原則として、賃貸に出すことはできません。通常は住宅ローンから、金利の高い事業用ローンへの借り換えが必要です。

しかし、転勤という、やむを得ない事情の場合は、住宅ローンを継続したまま賃貸に出せる可能性があります転勤期間中だけ自宅マンションを貸し出したい場合は、「転勤による一時的な貸し出しであり、帰任後はまた居住する予定である」ということを金融機関に伝え、住宅ローンの継続が可能であるかを相談してみましょう。

1-1-1. マンションを無断で貸したことがバレたらどうなる?

住宅ローンを返済中のマンションを賃貸することは契約違反です。金融機関に無断でマンションを貸し出し、あとから発覚した場合、事業用ローンへの借り換えや、最悪の場合には残債の一括返済を求められる可能性があります。

  • 金利の高い事業用ローンへの借り換え
  • 残債の一括返済
  • 法的措置を取られる

賃貸に出すにあたり金利の高い事業用ローンに借り換えることで、家を手放すことなく所有し続けられます。しかし、毎月の返済額が増加するため、家計が圧迫されるリスクが生まれるでしょう。住宅ローンの一括返済を求められると、多くの方は物件を売却することになります。売却金額でローンを完済できない場合は、自己資金を用意する必要があり、支払えない場合には自己破産となる可能性も考えられます。

最悪のケースは、悪質と判断され、法的措置として刑事告訴されることです。事情によっては認められる場合もあるので、必ず金融機関の承諾を得てから賃貸を行うようにしましょう。

1-2. 転勤期間中の賃貸が得意な管理会社を見つける

転勤の期間中だけマンションを貸す場合には、一時使用賃貸借契約の利用がおすすめです。しかし、一時使用賃貸借契約は、特殊な契約方法であるためすべての賃貸管理会社がこの契約方法を扱っているわけではありません。

また、一時使用賃貸借契約で貸し出す際には、一般の賃貸契約とは家賃の相場も異なるため、家賃の設定を見誤るとなかなか入居者を獲得できずに空室期間が長くなり、家賃を低く設定しすぎると入居者を獲得できても収益を上げられません。

家賃の設定一つとっても、一時使用賃貸借契約の場合は実績がものを言います。転勤の期間中だけ大切な自宅マンションを貸す場合には、一時使用賃貸借契約についてのノウハウを豊富に持っている管理会社、すなわち転勤時の自宅の貸し出し(リロケーション)を専門に扱っている会社を選びましょう。リロケーションの取り扱いに慣れた会社であれば、賃料査定はもちろん、一時使用賃貸借契約を使った契約方式などにも慣れているため、スムーズな手続きが可能になるでしょう。

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1-3. 貸す前の状態を記録しておく

貸し出す前の自宅の状態を写真や映像で必ず記録しておきましょう。入居前と退去時の状況を比較できれば、貸出期間中に生じた損傷などにも気が付きやすく、修繕費用をどちらが負担するかという点についても判断がしやすくなるでしょう

貸し出す前の自宅の状態を写真や映像で必ず記録しておきましょう。入居前と退去時の状況を比較できれば、貸出期間中に生じた損傷などにも気がつきやすく、修繕費用をどちらが負担するかという点についても判断がしやすくなります。

賃貸借契約を締結すると、借主には原状回復義務が生じます。原状回復義務とは、賃貸借契約が終了した際に、借主が借りていた物件を契約開始時の状態に戻して返却する法的な義務です。貸主と借主それぞれに、以下のような適用範囲が定められています。

貸主の適用範囲 借主の適用範囲
・建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)
・賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)
賃借人の故意・過失や善管注意義務違反など、通常の使用を超えるような使用による損耗等

出典:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン

経年変化や通常損耗、賃借人が故意や過失によりつけた傷や汚れは、お互いの認識や主張がズレることも多くあります。そのため、原状回復が原因で借主とのトラブルに発展することも珍しくありません。

原状回復のトラブルを避けるには、貸した時点の「原状」をお互いにしっかりと把握できるようにしておくのが大切です。貸し出す前に記録を残しておけば、借主の過失なのか以前かるあるものなのかが明確にできます。具体的なチェックリストとしては、国土交通省の「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」がおすすめです。

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2. 転勤時にマンションを貸す3つのメリット

転勤時にマンションを貸す3つのメリット

転勤時にマンションを貸すメリットは、以下の3つです。

  • 経済的なメリット
  • 物件の維持管理面でのメリット
  • 将来的な住居確保のメリット

それぞれ詳しく解説します。

2-1. 経済的なメリット

マンションを貸し出すことで得られる賃料収入は、住宅ローンの返済や管理費、修繕積立金、固定資産税などの継続的に発生する費用に充当できます。空室のまま管理する場合でも、ローンの返済や固定資産税はかかりますので、物件を所有し続けるうえで賃貸収入は大きな支えになるでしょう。

また、不動産会社への管理委託費用や修繕費、入居者の募集にかかる広告費などは、確定申告の際に必要経費として計上できる可能性があります。経費計上することで課税対象額の圧縮につながり、節税効果を得ることも可能です。マンションを貸すことで得られる収益に関して、具体的な数字を用いた計算を「6. 収支のシミュレーションをしておく」で紹介していますので、こちらも確認してみてください。

2-2. 物件の維持管理面でのメリット

人が使わない状態で長期間放置すると、物件の維持管理面でさまざまな問題が発生する原因になります。日常的に人が生活していない空間では、換気が行われず湿気がこもることで、設備の劣化や故障につながったり、カビやダニの発生につながったりします。このような問題は、後になって大規模な修繕や設備の交換が必要となり、予想外の出費を強いられる原因となりかねません。

また、建物や設備の劣化・故障だけではなく、犯罪行為に悪用されるケースも起きています。近年では実際に、空き家・空き室の住人になりすまして、特殊詐欺の被害金や密輸された不正薬物などの受け取り場所として使われていた例もありました。(※)

一方で、入居者がいることで定期的な換気や清掃が行われて、室内のカビやホコリの蓄積を防止でき、マンションの室内環境の劣化を最小限に抑えることが可能です。また、入居者によって設備の不具合が早期に発見され、小さな問題のうちに対処できる可能性が高まるでしょう。人が生活していると、犯罪行為に使われるリスクの軽減にもなります。結果として、マンションの資産価値を維持することにつながります。

(※)公益社団法人 全国賃貸住宅経営者協会連合会|空き家・空き室不正利用への注意喚起

2-3. 将来的な住居確保のメリット

転勤時にマンションを賃貸しておくことで、将来的な住居を確保できるというメリットがあります。マンションを売却してしまうと、転勤期間終了後に元の地域に戻りたいと考えた場合、再び住居を探す必要が生じます。

不動産市場は常に変動しており、数年後に同等の物件を同じ価格で購入できる保証はありません。特に人気エリアでは数年の間に不動産価格が上昇していることも珍しくなく、以前と同じ条件の住まいを確保するのは困難です。

転勤期間中はマンションを賃貸しておくことで、帰任が決まった際に、賃貸契約を終了させて自分が再び住むことも可能です。転勤終了後の住居探しというストレスから解放され、スムーズに元の生活に戻れます。自分の物件を保有し続けることで、将来の生活設計に対する不安を軽減できるでしょう。

関連記事:マンションを賃貸に出すメリット・デメリット|費用や成功させるコツをわかりやすく解説

3. 転勤時にマンションを貸す流れ

転勤中にマンションを貸すための手順は、一般的なマンションの貸し出しの時と大きく変わることはありません。マンションを貸すときの手順は次のようになります。

  1. 賃貸管理会社を選ぶ
  2. 募集条件を決定する
  3. 入居者の募集を開始する
  4. 賃貸借契約を締結する

各手順を詳しく解説します。

3-1. ①賃貸管理会社を選ぶ

まず初めに、マンションの入居者募集と賃貸中の管理を委託する賃貸管理会社を選びます。転勤の間だけマンションを貸す場合は貸主自身で賃貸管理を行うことは難しいため、転勤中の留守宅の賃貸管理に特化したリロケーションサービスを専門的に扱っている会社を選ぶと安心です。

管理会社を選ぶ際には、以下のようなポイントに注目します。

  • 管理会社の実績や評判
  • 管理手数料
  • 提供するサービス内容 など

実績を判断する明確な基準はありませんが、賃貸管理会社として活動している年数やマンションの管理戸数を複数社で比較してみましょう。また管理手数料はサービス内容によってかわりますが、家賃収入の5〜12%ほどが相場です。手数料が高くなるほどオーナーの負担が減り、保証が充実する傾向にあります。
以下は、提供するサービス内容の一例です。

  • 24時間対応のサポート体制
  • 家賃の滞納保証サービス
  • 転勤先からでも状況確認ができるオンラインの物件管理システム など

管理会社の実績や手数料、サービス内容を確認するには、ホームページをチェックしたり実際に資料請求してみたりするのがおすすめです。実際に電話をしてみて、応対態度を確認するのも、会社選びにおいて有効な手段です。

3-2. ②募集条件を決定する

募集条件の設定は、入居者確保の成否を左右する重要な要素です。家賃や敷金、礼金などの金銭的な条件や賃貸借契約の方法、賃貸期間など、入居者を募集するにあたっての条件を決定します。賃料設定する際には、周辺相場の調査だけでなく物件の築年数や設備の状態、立地条件などを総合的に考慮する必要があります。また、金額面だけではなく、以下のような条件面の決定も必要です。

  • 契約期間
  • 更新料の有無
  • 中途解約の条件
  • ペットの可否
  • 楽器演奏の制限 など

このような募集条件は賃貸管理会社と相談のうえ、設定するとよいでしょう。

3-3. ③入居者の募集を開始する

募集条件が決まったら不動産情報サイトや不動産会社の専門サイトなどに情報が掲載され、入居者募集の活動がスタートします。

入居者募集では、物件の魅力を最大限にアピールすることが重要です。例えば、室内の清掃や簡単な修繕を行ったり、募集広告では部屋の特徴や設備情報、周辺環境などを詳しく掲載したりします。

入居希望者が内見をして入居申し込みが行われたら、入居審査を行います。

内見時にはすでに転勤していて立ち会いできない可能性もあるので、内見をすべて任せられるように物件のアピールポイントを伝えておくことが大切です。

3-4. ④賃貸借契約を締結する

入居審査を行い、目立った問題がなければ、賃貸借契約に進みます。契約内容については賃貸管理会社と相談しながら決定し、マンション独自のルールなどについても入居者に伝えておきましょう。

賃貸借契約には、以下の3つがあります。

  • 普通借家契約
  • 定期借家契約
  • 一時使用賃貸借契約

転勤で一時的に貸し出す場合には、柔軟に対応できる「一時使用賃貸借契約」がおすすめです。

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マンションを貸す流れ

マンションを貸すためにやること

初めてマンションを貸すときには分からないことも多く、マンションのオーナーとして何をするべきなのか、家賃はどのくらいに設定できるものなのか、入居者は見つかるのかなど、自宅マンションを貸すことに不安を感じる方も多いはずです。

賃貸管理会社を選ぶときには、複数の会社から話を聞き、提供している賃貸管理プランの内容はもちろん、疑問や質問に対しても丁寧に回答をしてもらえるかも確認したうえで、信頼できる賃貸管理会社に管理を委託することが大切です。

また、無料の賃料査定を行っている会社も多いので、まずは自宅マンションの価値を確認してもらいましょう。なお、リロケーション・ジャパンでは、およそ90秒で入力完了できる無料の賃料査定を行っています。転勤者向けの特別な契約方法も取り扱っているので、ぜひお気軽にご相談ください。

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4. 転勤時にマンションを賃貸に出す時の3つの注意点

転勤時にマンションを貸す際には、以下の注意点があります。

  • マンションを貸した年は住宅ローン控除を適用できない
  • 管理規約は入居者にも適用される
  • マンションを貸すと確定申告が必要になる

4-1. 管理規約は入居者にも適用される

マンションでは、ペットの飼育や喫煙の可否、共有部の使い方が管理規約で定められています。これらはマンションを利用する人すべてに適用されます。

入居者が管理規約を守らない場合、貸主として責任が問われる可能性があるので、マンションの規約で定められている禁止事項等は、入居者募集の条件に必ず設定し、入居者に伝えておきましょう。

マンション購入時に不動産会社から配布されています。もし手元にない場合は購入時の不動産会社に確認してみましょう。

4-2. マンションを貸すと確定申告が必要になる

マンションを貸すと家賃収入を得られ、家賃収入は不動産所得に該当します。不動産所得とは、家賃や礼金などの賃料収入から賃貸のためにかかった経費を差し引いた額であり、次の式で求められます。

不動産所得=不動産賃貸による収入-必要経費

マンションを貸すときに必要経費として計上できるものには、次のようなものがあります。

・固定資産税、都市計画税
・管理手数料、仲介手数料
・マンション管理組合に支払う修繕積立金、管理費
・修繕費
・減価償却費
・火災保険料などの損害保険料

マンションを貸して家賃収入を得た場合、給与所得以外の年間所得が20万円を超えたら、確定申告を忘れないようにしましょう。

なお、給与所得以外の年間所得が20万円以下や赤字の場合でも、確定申告するメリットがあります。不動産所得で得た赤字は、給与所得と相殺する損益通算を活用できます。給与収入が多く高い税率がかけられる人にとっては、累進課税によって高い税率をかけられている部分の所得を、効果的に減らすことが可能です。

なお、1年以上の海外転勤の場合、確定申告を行うために納税管理人を設定しなければなりません。出国前に手続きが必要になりますので、忘れずに行いましょう。

転勤時のリロケーションを専門に扱っている会社であれば、確定申告のサポートサービスも提供している可能性があります。確定申告の経験がない方や忙しい方、そして海外赴任で納税管理人を設定する必要がある方は、確定申告サポートサービスのある管理会社を選ぶと安心です。

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4-3. マンションを貸した年は住宅ローン控除を適用できない

転勤などの理由で住宅ローンを利用しながら賃貸を行った場合、賃貸を行っていた年については、住宅ローン控除を適用することができません。

通常、自宅マンションに住まなくなっても、転勤等の理由であれば、再入居した年から住宅ローン控除を再適用できます。しかし、6月まで自宅マンションを賃貸しており、8月から再入居したという場合は、この年の住宅ローン控除は適用できず、次年度からの適用となります。

1日でも賃貸されていれば適用外となってしまうため、定期借家契約を締結する際は契約終了日を設定する際に気をつけましょう。

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5. 転勤でマンションを貸すときにおすすめな「一時使用賃貸借契約」のメリット・デメリット

転勤でマンションを貸すときにおススメしたい契約方法

転勤のためマンションを貸すときには、賃貸借契約を結びます。賃貸借契約には3つの種類がありますが、おすすめは「一時使用賃貸借契約」です。一時使用賃貸借契約は転勤時に利用すべき最適な契約方法ですので、マンションの貸し出しを検討しているようであれば、ぜひ参考にしてください。

5-1. 一時使用賃貸借契約のメリット

一時使用賃貸借契約の最大のメリットは、転勤の終了という理由によってスムーズに物件の明け渡しを求められる点にあります。借地借家法では、正当な事由がない限り、貸主から入居者に解約の申し出をすることができません。しかし、一時使用賃貸借契約では借地借家法が適用されないため、最低限の賃貸期間を定めて入居者を募集し、最初に定めた賃貸期間が終了すれば3か月前の解約予告をすることで、借地借家法で定められた正当な事由がなくとも契約を解除できるのです。

また、企業によっては転勤時の赴任期間を3年から5年といったように、幅を持たせた期間に設定するケースもあるでしょう。そのような場合は契約期間をいつまでにするか悩ましいところですが、一時使用賃貸借契約の場合は賃貸期間の延長も簡単にできます。そのため、当初は賃貸期間を3年とし、帰任に合わせて賃貸期間を延長していけば、転勤期間いっぱいまでマンションを貸すことが可能です。

5-2. 一時使用賃貸借契約のデメリット

一時使用賃貸借契約は、転勤する方が期間限定でマンションを貸し出す際に適した契約方法ですが、デメリットもあります。

その1つは、家賃が相場よりも安くなってしまう点です。一時使用賃貸借契約では、たとえ入居者が物件を気に入ったとしても、貸主から解約予告が届けば退去する必要があるなど、入居者側のメリットは大きくありません。そのため、入居者を獲得するためには、家賃を安く設定するなどの対策が必要になります。

もう一つは、転勤時には貸主は自宅マンションから離れたところで生活するため、賃貸中に何かトラブルが発生した場合にすぐにマンションに戻り、対応することはできません。そのため、転勤時に自宅を貸し出す場合は、賃貸管理に関わる業務のほとんどを管理会社に委託することになるでしょう。その分、管理会社が担当する業務が増えるため、一時使用賃貸借契約は管理手数料が少し高くなる可能性があります。

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6. 収支のシミュレーションをしておく

転勤でマンションを貸す場合には、マンションを貸すことでどのくらいの収益を得られるか事前にシミュレーションをしておくとよいでしょう。家賃収入を得られれば、住宅ローンの返済やマンションの管理費・修繕積立金などの支払いに充てることも可能です。収支を事前に把握できれば、転勤先でのライフプランも立てやすくなるでしょう。

例えば、次のような設定で収支のシミュレーションをしてみましょう。

  • 転勤期間:3年
  • マンション所在地:東京都練馬区、最寄り駅から徒歩10分
  • 築年数:10年
  • 購入価格:5,000万円
  • 間取り:3LDK
  • 年間維持費:90万円
  • 月々の住宅ローン返済額:11万円
  • 家賃設定:15万円

【収入】
・3年間の家賃収入:15万円×36ヶ月:540万円

【費用】
・3年間の住宅ローン返済額:11万円×36ヶ月:▲396万円
・3年間の維持費用:90万円(75,000円/月)×3年:▲270万円

【費用合計】
▲396万円+▲270万円=▲666万円(▲18万5,000円/月)

【差引】
▲666万円-540万円=▲126万円(▲3万5,000円/月)

このようにマンションを賃貸しない場合では、月々の支出は185,000円ですが、家賃収入が得られると月々35,000円の支出で済みます。転勤期間中に家賃収入を得ることで、毎月およそ15万円もの支出を圧縮できます。

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7. 転勤時にマンションを「貸す」か「空き家」にするか「売却」するか迷ったら

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転勤時に誰も住まなくなってしまうマンションをどのように扱うかを決める場合には、貸すという選択肢のほかに、空き家のまま維持する方法や売却してしまう方法もあります。

愛着のある我が家であり、どの方法を選択すべきか、その決断は簡単ではないでしょう。また、家族と一緒に赴任先に向かうか、家族と離れて単身赴任をするかという選択肢もあるでしょう。

貸すか、空き家にするか、売却するか、さらには単身赴任をすべきか迷った場合、それぞれの選択肢に適した状況をご紹介します。

7-1. 単身赴任するメリットが大きいとき

以下のような場合は、マンションで家族が暮らしながら、本人は単身赴任するのがおすすめです。

  • 転勤期間が1年以下
  • 子どもを転校させたくない
  • 住宅ローンの残債が多い場合やペアローンの利用など、住宅ローン控除額が大きい
  • 配偶者が引っ越すことが難しい

ただし、家族との時間が減少することや二重生活による経済的負担の増加も考えられるため、十分に相談して決めましょう。

7-2. 空き家にするメリットが大きいとき

比較的短期の転勤で、マンションの管理が可能な場合は、空き家として維持することも選択肢の一つです。定期的な換気や点検が必要になりますが、以下のような条件が揃っている場合には検討してみましょう。

  • 転勤期間が1~2年と短い
  • 空き家のマンションを管理してくれる親族がいる

管理してくれる親族や友人がいる場合、具体的な頻度ややるべきことをしっかり伝えておくことが重要です。ただし、相手にとって負担になりすぎると、関係性が悪化する可能性があるので注意しましょう。

7-3. 貸すメリットが大きいとき

以下のような条件に当てはまる場合は、マンションの貸し出しを積極的に検討しましょう。

  • 転勤期間が3年~5年程度
    (家賃収入による収益が期待できる)
  • 新築でマンションを購入した、若しくは築年数が10年未満
  • 貸して得られる家賃収入で住宅ローンの返済ができる
  • 子供の年齢を考え、帰任後に慣れた環境で通学させたい

3〜5年の中期的な転勤の場合、数年後には再び自宅に住む可能性があり、マンションを賃貸に出すことで家賃収入を得ながら住宅ローンの返済負担を軽減できます。特に物件の状態が良好な場合は賃貸需要も高く、安定した収入が期待できるでしょう。

7-4. 売却するメリットが大きいとき

以下のような状況では、売却も視野に入れましょう。

  • 帰任の時期が未定、または赴任期間が長期になると考えられる
  • 築年が20年程度
    (年数が経過するほど住宅ローンの条件が厳しくなるため、売れにくくなる)
  • 子供の年齢を考え、帰任後の通学に不便な環境であると考えられる
  • 人気エリアになっており、購入時より高く売れそう

特に長期間の転勤や将来的な居住予定が不透明な場合は、売却を選択するメリットが大きいといえます。所有するマンションにこだわらないのではあれば、再度持ち家が必要になる際に探すのがおすすめです。物件を所有し続ければ、固定資産税や管理費、修繕費などのコストが継続的にかかるため、負担に感じる可能性もあります。帰任後の生活まで考慮して、検討してみましょう。

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8. まとめ

転勤中にマンションを貸す場合の流れや注意点、おススメの契約方法である一時使用賃貸借契約の特徴、貸すか、空き家にするか、売却するかのポイントについてご紹介しました。

一時使用賃貸借契約は、転勤が終了するタイミングに合わせてマンションの明け渡しを求められるなど、転勤時のマンションの賃貸に適した契約方法です。しかしながら、一時使用賃貸借契約を扱っている賃貸管理会社は多くありません。転勤中にマンションを貸す場合は、一時使用賃貸借契約の取り扱いに慣れており、転勤時の自宅の賃貸を行うリロケーションサービスを専門にしている管理会社に管理を委託することが大切です

当社は、転勤中マンションの賃貸に最適な一時使用賃貸借契約の取引実績を豊富にもつリロケーションサービス会社です。転勤中のマンションの貸し出しをご検討中の方は、実績豊富な当社にぜひご相談ください。

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この記事の執筆者

執筆者│平田 翔

平田 翔

ハウスメーカーにて建売住宅販売と土地仕入れ・土地調査の業務を経験。現在は、SEOやコラムなど、不動産を中心に様々なジャンルのライターとして活動中。「宅地建物取引士」の資格と実務経験を活かして、不動産関連の記事は300記事以上を執筆。

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